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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: Laica
第6章 恋を学習する体温

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第63話 怒り

挿絵(By みてみん)

観覧車を降りる。


音が戻る。


笑い声。


アナウンス。


遠くの振動。


「観覧車は有効な体験でした」


「また利用しますか」


「今日はいい」


「体調を優先します」


出口へ向かう。


夕方。


光が赤い。


「おい」


振り向く。


クラスメイトが二人。


「デートかよ」


「無表情だな」


「別にいいだろ」


流す。


そのまま歩こうとする。


「ロボットみたいだな」


足が止まる。


彼女が振り向く。


動きがわずかに遅い。


「訂正します」


声は同じ。


少しだけ低い。


「私は彼の彼女ではありません」


「じゃあ何だよ」


間。


ほんの一瞬。


「彼と行動を共にしています」


「意味わからん」


笑いが混じる。


「そんなのといて楽しいの?」


そこで。


彼女が一歩前に出る。


距離が変わる。


「訂正します」


繰り返す。


少しだけ早い。


「彼に対する評価が不正確です」


男子が顔をしかめる。


「は?」


彼女は続ける。


言葉を選んでいる。


わずかに。


「その発言は」


間。


「不適切です」


空気が張る。


僕は言う。


「もういい」


彼女は止まらない。


「対象に対する」


言いかけて、


止まる。


数秒。


「……訂正」


「発言の処理を中断します」


男子たちは顔を見合わせる。


「なんだよ」


小さく吐き捨てて離れる。


足音が遠ざかる。


静かになる。


彼女がこちらを見る。


「質問があります」


「なに」


「私は今」


少し間。


「通常と異なる状態でしたか」


「……怒ってたんだと思う」


彼女はうなずく。


「記録します」


「怒り」


短く。


それだけ。


さらに続ける。


「発生条件」


言葉が少し遅れる。


「あなたへの負の評価」


僕は歩き出す。


「気にしてないって」


彼女も並ぶ。


一歩遅れて。


「私は」


間。


「気にします」


※タイトルを変更しました。初見の方は第1話から読むと分かりやすいです。

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