第13話 夜のLINE
家に帰ると、
部屋の中はいつも通り静かだった。
カバンを置き、
ベッドに座る。
今日のことを思い返す。
ゲームセンター。
ボーリング。
喫茶店。
そして帰り道。
楽しかったはずなのに、
どこか引っかかっている。
――ピロン。
スマートフォンが鳴る。
画面を見る。
彼女からだ。
『今日はありがとう』
短いメッセージ。
僕は返信する。
『こちらこそ。楽しかった』
送信。
――既読。
同時。
一瞬のズレもない。
『私も』
続けて来る。
『ゲームセンター、初めてだった』
『ぬいぐるみ取れたの、嬉しかった』
ここまでは普通。
でも、
違和感は消えない。
僕は打つ。
『なあ』
一拍。
『今日のボーリングさ』
送信。
既読。
即。
『2投目と3投目のこと?』
指が止まる。
まだ何も言っていない。
『……そう』
送る。
数秒。
既読はついたまま。
『軌道を少し変えただけ』
『角度と回転を揃えれば再現できる』
説明としては正しい。
でも、
それだけじゃない。
『毎回同じだったよな』
送る。
既読。
間。
『同じ結果にしただけ』
背筋が冷える。
結果を“作っている”。
そういう言い方だった。
『普通じゃない』
送る。
既読。
今度は少し長い沈黙。
『普通って、なに?』
画面を見たまま、止まる。
言葉が出ない。
彼女から続く。
『みんなと同じこと?』
『それとも、外れないこと?』
意味が分からない。
でも、
どちらも違う気がした。
僕は打つ。
『わからない』
送信。
すぐ既読。
『そっか』
短い返事。
それから、
少しだけ間があって、
『でもね』
『外れたら、消されることもあるよ』
指が止まる。
意味を考える前に、
次のメッセージ。
『冗談』
心臓が遅れて鳴る。
『おやすみ』
僕は少し迷ってから返す。
『おやすみ』
画面が暗くなる。
静かな部屋。
でも、
さっきの一文だけが残る。
――消される。
冗談にしては、
具体的すぎた。




