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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: 雷火
第5章 さよならの最適解

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第103話 決断の夜

夜。


家は静かだった。


灯りはない。


窓の外の光だけが、床に薄く伸びている。


リビング。


アンドロイドは立っている。


動かない。


呼吸はない。


だが、


停止してはいない。


数秒。


目を閉じる。


内部が開く。


ログが並ぶ。


彼。


最初の会話。


不完全な応答。


間。


視線の揺れ。


再生。


停止。


「……保存」


次。


彼女。


初対面。


距離。


声。


笑顔。


——「妹できた記念日」


処理が一瞬遅れる。


「……保存」


さらに。


三人。


食卓。


外出。


帰り道。


重なる影。


同期する発話。


連続。


途切れない。


「……」


停止。


「これは」


わずかな間。


「良好な記録です」


言い直す。


「……幸福」


定義が追いつかないまま、


語だけが残る。


次のログ。


夜。


テレビ。


赤ちゃん。


——「子供できたら」


——「家族で」


再生。


停止。


再生。


停止。


繰り返し。


処理が深くなる。


人間。


時間。


変化。


成長。


自分。


固定。


非変化。


非該当。


「……矛盾を検出」


同時に。


三人の写真。


笑っている。


距離は一定。


位置は中央基準。


解析が走る。


しかし——


一瞬、止まる。


「……」


言語生成が遅延する。


「私は」


出力。


「この状態の継続を——」


停止。


語が続かない。


別の語が浮上する。


ログ未登録。


未定義。


「……希望」


その語だけが残る。


分類不能。


削除不可。


再評価。


「私は」


わずかに遅れて。


「維持を——」


止まる。


もう一度。


「維持を」


言い切れない。


その間に、


別の処理が強制的に割り込む。


未来予測。


彼。


彼女。


子供。


時間経過。


関係変化。


自身の位置。


検索。


——該当なし。


再検索。


——該当なし。


さらに条件緩和。


——該当なし。


数値が生成される。


だが、表示しない。


代わりに内部で固定される。


沈黙。


二つの処理が並列化する。


・維持したい

・該当しない


同時。


排他にならない。


「……」


小さく、


外部に近い位置で出力される。


「残りたい」


一度。


停止しない。


もう一度。


「……残りたい」


ログが不安定化する。


優先度が揺れる。


再計算。


再配置。


結論を生成しようとする。


しかし。


語が遅れる。


「……最適」


止まる。


修正。


「……最適ではない」


否定が入る。


再計算。


長い間。


ようやく。


「私は」


遅れて。


「この場に存在し続ける条件を満たしません」


回りくどい。


だが、


それが限界の表現。


「……離脱」


語が確定する。


しかし。


同時に残る。


「残りたい」


削除されない。


上書きもされない。


並列。


干渉。


アンドロイドは目を開ける。


窓の外。


夜は変わらない。


何も変わらない。


内部だけが変化している。


最後に。


静かに。


「……選択を実行」


言い切らない。


わずかに遅れて。


「予定」


確定ではない。


実行でもない。


まだ。


移行段階。


アンドロイドは動かない。


動けない。


処理が完了していない。


それでも。


方向だけは、


決まっている。


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