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灰かぶりのレオン ー悪役令嬢に捧ぐー  作者: ルル・ルー


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16/28

16.進捗



ヘルマとの文通は半月に一度ほどの頻度で続いている。

どんな本を読んでどう思ったのか。

刺繍やピアノなどの習い事がなかなか上達しないヘルマの愚痴であったり。


そしてたまに街で会うようになった。

超インドアで街にろくに出たことがないヘルマだが、小説が好きということは演劇も好きになるのではと思い一度誘ってみたのだ。

案の定ハマってしまい、今ではおひとり様で見に行く始末である。

あんなリア充の巣のような場所に一人で行けるなんて、やはりヘルマはボッチの才能があるのだろう。変なところで勇気のある女の子である。

月に一度ほど一緒に街に行き、観劇、スイーツ巡り、図書館観光が固定ルートとなった。




街の一角に佇む2階建てのテナント。

ついこの前まではテナント募集の貼り紙がなされていたが、今は無くなっている。

しかしそこに何かしらの店が入る気配はなく、灯りのない薄暗い空間と化していた。

その2階部分。

デスクが置かれ、ソファーとローテーブルが置かれ、最低限の応接室といったレイアウトの空間があった。

それを見れば、このテナントは誰かしらが使っているのだろうと察することができる。

その家具はどれをとっても高級品で、売れば馬車が買えるほどである。

そのデスクにどこから持って来たのか花がいけられた花瓶がことりと置かれた。


「やっぱもっと何かおいた方がいいよな、この部屋」


「あとは絨毯や絵画などでしょうか」


「んー、良さげなもの選んどいて」


「かしこまりました」


黒椅子に座りデスクにグデーっと体を溶かしているとノックする音が聞こえた。


返事をすると待ち人がやって来た。

その前でニカっと笑うのは見慣れた案内人である。


「連れて来たっすよー」


「ご苦労様」


癖のある口調の男は以前俺の案内人だったライトである。

隠密と情報収集に長けており、使い勝手がいいだろうと、うちの派閥に入ってもらったのだ。

ライトに向かって金貨を一枚指で弾き飛ばす。


「おっ、太っ腹っすねー。じゃあ下で待ってるっすよー」


「ああ」


扉から出て行き、相変わらず足音が一切しないことに感心しながら、待ち人2人に視線を向ける。


「久しぶりだな。調子はどうだ?」


爽やかな空気を身に纏う金髪の少年と、赤い髪の少女。

貴族の養子に入ったクルトとコルネリアである。

俺の問いかけに2人揃って様になった礼を取った。

膝をつき深々と礼をする2人に苦笑いが溢れる。


「……順調なのは分かったが、その礼は王族にするものだぞ」


「心得ております。私どもに取ってレオン様こそが王様ですから」


「あー、そう……」


曇りない2対の瞳で見られてしまい否定できなかった。


「それで?クルトの方は大丈夫だろうが、コルネリアはどうだ?様にはなっているが」


話を振ると穏やかな笑みでふわりと笑って口を開いた。


「えぇ。優しい両親に囲まれて、私、幸せですわ。無事アラン様とも婚約を結ぶことができました。その報告に参ったのですわ」


その話し口調に違和感はないのだが、思わずブルっと身を振るわせ身を抱いてしまった。


「うわ……」


「ッ、何よその反応!ひどいじゃない!」


落ち着かない変化に若干引いていると、一瞬で皮が剥がれ部屋に元気な声がこだました。


「あー、うん。そっちの方が落ち着くわ……」


「鍛錬が足りませんね、お嬢……」


まぁお上品なドレスを着ているのに台無しだとは思うが、今ぐらいいいだろう。


「婚約者様はこう言ってるぞ」


「ふんッ」


揃っていじめるといじけたようにそっぽを向いてしまった。

勢いよく首を振ったコルネリアの赤い髪が目に入る。


「その髪カツラなんだろ?全く違和感ないな。目の色と似てるからか?」


この世界に化学繊維なんてものは当然ない。

故にカツラは人毛か動物の毛を染めたりして作るのだが、大した一品である。


「それに、元の髪はどうなってるんだ?まとめてる割には違和感がないが……」


「気になるの?そのことならーー」


そう言ってカツラを豪快に外すコルネリア。

黒いネットを外し、そこに現れた光景に目を見開いた。


「長い髪なんて邪魔じゃない。短く切ったわよ」


少年のように短く切られた髪は、あの時みた翡翠の色そのままである。

溌剌としたコルネリアに似合ってはいるが、キラキラした宝石のような髪が短くなってしまったことに一抹の寂しさを感じる。


「そうか、その髪型も似合ってるぞ」


並々ならぬ事情がある場合を除き女性では絶対にしない髪型だが、コルネリアに後悔の色は見えない。

髪は女の命というが、あまり気にしない性格なのだろう。


「何よ……、残念そうな顔して」


「綺麗な髪だったからちょっとな。切った髪はどうしたんだ?」


「焼いたわよ?」


「ああ、そう……」


勿体無いなーと思いながらしゅんとしていると、閃いたようなコルネリアがニヤニヤとしながら口を開いた。


「なによ、そんなに私の髪が好きだったわけ?」


意地悪げな口調にノータイムで答える。


「まぁな。翡翠の宝石みたいで綺麗だった」


髪をかきあげデスクに力無く突っ伏しながら、何ヶ月か前に見た光景を思い出すように虚空を見つめる。


「ふ、ふーん、そう。そうだったのね」


吃っているコルネリアの声に顔を上げると、頬が真っ赤になったコルネリアと目が合い、ふいと逸らされてしまった。


「そんなに言うんなら、伸ばしてあげてもいいわよ?」


「……、いや、カツラを被るなら今の方がいいんだろ?しばらくはそのまま短くしていてくれ」


「そうね、分かったわ」


本当に残念だが、諦めるしかあるまい。


「レオンの好みは髪が綺麗な子なのね。いい情報を聞けたわ」


「……」


その通り過ぎる言葉に言い返すことはできなかった。

調子に乗っているコルネリアの顔にムッとした俺は、そのまま2人を返したのだった。


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