部屋での会話
「神の御加護に皆の力で戦に勝利して騎士達も王国の民達も喜んでくれている」
「城下の街も、いつものように活気に満ちて安心したよ」
宮殿の窓辺から病の少年王が城下の街を眺めて呟く。
ほんの少し前まで戦争の勝利の熱狂に
エルサレムの少年王ボードワン四世は
その後の激務で病の中でも、休む事なく動き廻っていたのだが…。
医師や廻りの側近が心配して、今は部屋でまた一時の休息の時
「勝利して誉れ高き我らの王」シオンが敬々しく言葉を述べた。
「ありがとう
だが、勝利の宴では、また宮殿内の権力争いもあって騒ぎばかり、少し頭が痛いよシオン」
「良くある事でございます、陛下
側近の皆さま、トリポリ伯様、ギョー厶様方もそのように申しておりました」
「大勝利したモンジザールの戦いに、政務の激務が続いてます、御身体を休まないと…」
そっと薬湯を差し出すシオン
「大丈夫だよシオン、サラディンの脅威はまだある、それにイスラムの他の国々」
「今後の国の交易、国の財政」
「宮廷内の対立に権力争いだ」
「戻って来た母上達に気難しい所もある僕の姉妹、愛しくはあるのだけど…」
黙って病の少年王、ボードワン四世の言葉を静かに聞く吟遊詩人のシオン
「穏健派の側近達と対立する激しい気質の者達か」
軽くため息をつく少年王
「薬湯を陛下」「ああ、ありがとう」
魔物で吟遊詩人のシオンがリュートを爪弾きながら微笑して謳う。
エルサレム王国は賢王、名君を得た
更には強敵サラデインを
初戦で打ち破りし少年王 彼の栄光と誉れを讃えよう
神が生まれた地にある王国、地上の楽園へ
「くすくすっ、吟遊詩人のシオン、僕を褒めているけど、何が欲しいのかな?」
楽しそうにベッドで休む王が笑う。
「下々のか弱き、歌い手でございます、陛下
本日の細やかな報酬を…」
シオンがチラリと見ているのは…
焼きたての沢山のパン、蜂蜜、果実
何より、手の込んだ菓子類にワイン
「全く、わかっているよ、シオン」
「慈悲深い優しい王様に心よりの感謝を…」
「また、面白い本が読みたいものだ」
「近く、手に入れますが、書物は高価なので資金を頂けますか?」
王の言葉、問いかけに答えるシオン
「ああ、そうだね、欧州の本に
それとイスラムの本なら、側近のギョー厶が喜ぶ」
「他にも私が出来る事は?」束の間、魔物の目をするシオン
「イスラム、エジプトの英雄王」
「サラデインの動向、だが彼は強硬派ではないが…イスラムに取り囲まれた十字軍国家が生き延びる術を探らねば」




