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9話 記憶域『ロカールE』『ウィンC』

これに関する伏線とかはないんで言いますが名前の由来は

Core i シリーズ、 Core Ultraシリーズ、Ryzenシリーズ

アイ、ウルト、ライザ

となっております。

「まずは記憶域から、説明だねぇ、え!」


ライザ博士の話を要約すると、ヒトには主に二つの記憶領域があって、普通に生きていれば『ウィンC』という場所しか使わないようにできている、ただし、『ローカルE』という別の場所にも記憶を保存できるスペースがある。これは主にデータの保存をしておく場所らしい。ウィンCは世界によって監視されているけれど、ローカルEにはその監視がない。現在、ウルトのローカルEにはアイの人格が保存されており、それは隠しファイルとして保存されていて、記憶に定着はされない。だから、実際のファイルとしてそこに保存する必要があるとのことだ。

なぜ隠しファイルになっているかというと、ヒトが作られたときに、ローカルEも一度は確認されるからだ。そのため、ライザ博士が隠しファイルとしてローカルEの中にアイの記憶を保存したとのことだ。さらにローカルEの隠しファイルからウィンCの領域に干渉するのはとても難しいことらしく、もっと時間がかかると思っていたが予想以上に早く、アイが思っていた以上に優秀で、ウルトのコアもそれに耐えうるとてもいいものだったため、驚いていたらしい。


そして隠しファイルは、見えるファイルにするのは難しく一度別の媒体を通してデータを送った方が手っ取り早いからアイはこの方法を選んだとのことだ。さらに、この方法でローカルEにデータを送れば記憶の定着と世界の監視を免れるから非常に都合がいいという内容だった。


「と、言ってもいきなり、やるのは…難しいねぇ!まずは、キナコ、ウルト君の手をしっかり握って」


キナコは顔を赤くしながら、少し照れくさそうにウルト君の手を取った。その手は、思ったよりも硬くて温かい。

「えっと…これで、大丈夫かな?」

彼女は心の中で自分に問いかけながら、ウルト君の手をぎゅっと握った。手のひらが触れ合うと、ちょっとしたドキドキ感が伝わってしまいそうで、キナコは思わず目を逸らしてしまう。


「うん。それで……」


ライザ博士は少しニヤニヤとした表情を浮かべキナコの反応を楽しんでいるようだった。


キナコは自分の顔が赤くなっているのを感じて、ますます恥ずかしくなったが、なんとか平静を保とうとする。


「ウルト君…の二つ目の、記憶域を探す!こればっかりは口で説明するのは…難しいからね!感覚でそれをわかってもらうしかないね!集中して間違えないように、ね!」


しかし、そのアドバイスは、全く役に立つものではなかった。


「えっと…どういうこと?」

「うーん、だから、なんていうか…とにかく、気持ちを集中?させて、記憶を、探す感じ…かな?こういうのはアイ君の方が得意なんだ…けどな。うん、、気合いだ!」


10分ほどキナコが試していると徐々に感覚をつかみ始めていた。

さらに10分ほど試したところでついに成功した。


「あっ…これだ!」

彼女は目を開け、興奮気味に言った。


「アイ……思い出した。夢でアイと話したことを…」

「成功だ!よくやったキナコ。これで頭痛もなくなっただろう」


キナコとウルト君はその言葉に驚き、同時に顔を見合わせた。


「えっ…え?」


さっきまでのライザ博士ふざけた喋り方ではなく普通にしゃべりだしたからだ。


「なんでキナコも驚いてるんだ。ここで一緒に住んでるんだろ?」

「え、えぇ…そうだけど。今までずっとあんな調子だったから、私もまともなライザ博士初めて見た」


「まあ、気分によるんだよ。」

ライザ博士は軽く肩をすくめてみせる。


気分?一年間以上もずっとあんな感じで話していたのに……。

キナコは少し疑念を覚えた。


「しかしまだウルト君にはやることがある。今のままでは、また頭痛が起きてしまう。その前に常時記憶保存場所をローカルEに設定しておこう。さっきキナコがやっていたのを感じていたはずだ」

「やってみるよ」


ウルトはすぐに状況を理解してライザ博士の言ったことを実行する。

5分ほど試していたらすぐにそれはできた。


「すごい。ウルト」


キナコは思わずその言葉を口にした。

彼女の声には、心からの賞賛が込められていた。ウルト君が成し遂げたことを認め、喜びを共有するように微笑んだ。


「本当にすごい…!すぐにできるなんて」

「いや、たまたまだよ」


ライザ博士は時計の方に視線を向けた。時計の針は8時を指していた。


「今日はそろそろいい時間だ。明日ウルト君の仕事が終わったらまたここに集合だ。キナコ、ウルト君を森を抜けるまで送って行ってあげたほうがいい。暗いと迷うからね」


キナコはそれを快諾しウルトを森を抜けるまで案内した。


二人は部屋を出て、外へと向かった。すでに辺りは暗く、森の中を抜けるには少し不安な時間帯だった。

キナコはウルトに気を使いながら、ゆっくりと足を進めた。


「道も悪いし、慎重に行こう。」

「うん、気をつけるよ。でももう頭痛もないし僕に気を遣う必要はない」


ウルトがそういうとキナコが少し悲しそうに返事をした。


「そうだね…」


彼女の声には少し寂しさが滲んでいた。ウルトが元気を取り戻しているのは嬉しいけれど、その分自分の役目がなくなってしまったような気がして、どこか心に空虚な感じが残っていた。ウルトが自分のことを気遣わなくても大丈夫だと言うのは、確かに頼もしく感じるけれど、同時に少し寂しい気持ちも湧き上がってきた。


「キナコ…?」


キナコはすぐに顔を上げ、明るく笑おうとしたが、その笑顔は少しぎこちなく、すぐに元に戻った。


「ううん、なんでもないよ。」


ウルトは少し黙って歩きながら考え込み、やがて、優しく声をかけた。


「でも、ありがとう。僕がどれだけ助けられたか、感謝しきれない。もしキナコがいなかったら教会送りになっていたかもしれない。本当に感謝している」


キナコはその言葉に少しだけ元気を取り戻し、ふっと微笑んだ。


「ウルトにそんなふうに言われると…恥ずかしいな。でも、私もウルトが元気になってくれて本当に嬉しいよ」


彼女の言葉には、少し照れ隠しが混じっていたが、同時にその目には確かな安心感が宿っていた。


その後二人は少し歩き森を抜け町の方に少し明かりが見えるの確認し、


「じゃあ、また。明日、博士のところで」

「うん、またね。」


キナコは手を振り、ウルトがそのまま歩き出すのを見守った。彼の背中が徐々に小さくなり、やがて森の中に消えると、キナコはゆっくりとその場を後にした。


読んでいただきありがとうございます。

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