6話 起きて
「起きて」
キナコの手がウルトの肩を揺すり、冷たい汗がウルトの額を伝っている。目を開けると、彼女の焦った表情が真っ先に目に飛び込んできた。
「キナコ……」
どうやらまた頭痛によって倒れてしまっていらしい。どのくらい寝ていたんだろう?その間、キナコは心配そうに自分を見守っていたのだろうか。
そんなことを考えていると、キナコが寝ていた時間を教えてくれた。
「30分ほどだよ。少しは楽になった?」
「少しは…まだ完全でないけど、仕事には戻れそうだ。ありがとう」
「私もついていく。次また倒れるようなことがあれば教会に見つかりかねないから」
そういって今日はウルトの仕事にキナコもついてきてくれることになった。
「一つ貸して」
「持ってくれるのはありがたいけどキナコは今日仕事大丈夫なのか?」
「私は今日休みだから大丈夫」
ウルトは少し驚いた表情を浮かべ、キナコの言葉を聞いた。
「休み?それなら今日は看病してくれただけで十分だよ。家に帰って休んだ方がいい」
それはとても大事なことだ。休まずに動き続けていると、それこそ体が動かなくなって仕事に支障をきたしてしまう。そのためにヒトには疲れるという当たり前の機能が備わっているんだ。
「私は大丈夫。それよりウルトに倒れられた方が困る」
キナコの気遣いに感謝しながらも、その言葉が心の奥で何度も響いていた。
「本当にありがとう、キナコ。」
ウルトは短く、そして少し照れくさそうに言った。その表情を見て、キナコは微笑みながら肩を軽く叩く。
「お互い様だよ。それに、君が倒れたら私も困るから、こうしてついていくのは当然のこと」
キナコはそう言って、ふらつくウルトの肩を支えるように歩き出す。
ウルトはその優しさに、少しだけ力が入った。自分が倒れたとき、すぐに駆けつけてくれる人がいるというのは、思っていた以上に心強い。
途中、ウルトの状態が少し安定してきたことに気づき、キナコはそっと声をかけた。
「少しでも楽になった?」
「うん、だいぶ良くなってきた。でも、まだ完全じゃないから、引き続き気をつける必要がありそうだ」
ウルトは微笑みながら答え、頭痛が和らいだことに安堵する。
「無理せずにね。君が倒れたら、私もその後が大変だから」
キナコは少し冗談めかして言ったが、その言葉の裏にはウルトを気遣う気持ちが強く込められているのが感じ取れる。
「ところで今日は後何往復しないといけないの?」
「今日は、後3往復はしておきたい」
「3往復か…結構な距離だね。」
キナコは少し気を使いながら言ったが、その目には決して心配だけではなく、ウルトが無理しすぎないように見守る気持ちが込められていた。
二人は歩き続け、ウルトの仕事を順調にこなしていった。最初の往復を終えた後、少し休憩を取るために近くのベンチに座った。ウルトはそこで水分を補給した。
しばらく目を閉じて深呼吸をした。まだ少し頭痛が残っているものの、休憩を取ったおかげで少し楽になった。キナコはウルトの隣に座っていて、何も言わずにウルトの方を見ていた。その優しさがウルトの心にじわりと染み渡る。
二人は少し静かな時間を過ごし、ウルトが体調を整えてから、再び立ち上がった。ウルトが無理せずに進めるよう、キナコがそっと手を差し伸べる。
「次、どうする?」
キナコが尋ねると、ウルトは少し考えてから答えた。
「次の往復を終わらせて、その後は少し休むつもりだよ。これで終わりにしたい。」
「分かった。じゃあ、ゆっくりやっていこう。」
キナコはそう言って、ウルトを支えるように歩き始めた。
ウルトはキナコの気遣いに心から感謝しながら、少しずつ歩を進める。頭痛が和らいだとはいえ、まだ完全ではない。それでも、仕事を終わらせるためにもう一踏ん張りが必要だった。
「これで2週目だけどあと1週はどうするの?」
「また元気があるときに多めにやっておくから今日はこれで大丈夫」
軽い雑談や休憩を繰り返しながら、二人は最後の往復を終わらせた。
「お疲れさま」
キナコが微笑んで言う。
「お疲れさま、キナコ。君がいてくれたおかげで、今日はなんとか乗り越えられたよ」
「まだ時間が少しあるね。私の家に来ない?話したいことがあるの」
と一瞬ためらう様子を見せるとキナコは多少強引にウルトの手を掴み連れられる。
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