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2話 アイ

「ここはどこだ?」


周囲を見渡すが闇が広がるばかりで何も見えない。


「ようやく君とこっち側でリンクすることが出来たよ!僕の名前はアイ」


暗闇の中から、はっきりとアイという名前が響いた。その声は、どこからともなく聞こえてくるが、同時にどこか近くに感じる。まるで自分の内側から直接語りかけられているような気さえした。


「リンク…って、どういうことだ?」


戸惑いながら声を上げる。周りには何も見当たらず、ただ無限に広がる闇だけが広がっている。アイの声が少しだけ笑ったように聞こえた。


「まぁ、立ち話もなんだから座って話そうよ。」


アイはにっこりと微笑みながら、突然ウルトの目の前に現れる。驚く間もなく、彼女の姿が闇の中に浮かび上がった。まるでその場から突然現れたようだった。

ウルトは思わず後退りしそうになるが、アイの優しげな笑顔に少し安心して、そのまま立ち尽くしている。

アイの身長は160センチほどで、年齢は17、8歳くらいだろうか。どこか幼さを残しつつも、大人びた雰囲気を漂わせている。その顔立ちは非常に整っていている。長い黒髪が肩にかかり、目は深い青色で、鋭さと柔らかさを兼ね備えた不思議な輝きを放っている。

アイがそう言うと、その言葉が空気を震わせるかのように、突然、周囲に光がともり始めた。その明るさが急に視界に広がり、ウルトは驚きのあまり思わず目を細めた。

その光の中から、ふっと現れたのは、まるでどこかの庭に置かれているような、ガーデンテーブルとチェアのセットだった。木製のテーブルに、白いクッションがふわりと置かれた椅子が並んでいる。テーブルの上には、小さな花瓶があり、そこには色とりどりの花が生けられていた。


周囲には、草木が生い茂る柔らかな空間が広がり、どこか自然の中で過ごしているような、穏やかで落ち着いた雰囲気が漂っている。闇の中から突然、この温かい光景が現れたことで、ウルトは驚きを隠せなかった。


「あぁこれね。ここは僕の空間だから僕が好きなように物を出したり消したりできるのさ」


アイは少し誇らしげに、えっへんと胸を張った。彼女の顔には、自分の力をひけらかすような楽しげな表情が浮かんでいる。


「それも十分すごいが、君は一体何者なんだ?」


ウルトは驚きと興味を込めて尋ねた。目の前に広がる異世界のような空間、そしてアイの持っている不思議な力。すべてがウルトの理解を超えていて、質問せずにはいられなかった。


「僕は、まぁ君だった存在だ。正確に言うと前世の君だ。前世は女の子だったんだよ?」


と悪戯っぽく今ウルトに告げる。


「えっ、前世…? 女の子って、どういうことだ?」


ウルトは驚きのあまり、思わず立ち上がりかけた。心の中でその言葉がぐるぐると回り、理解しようとしても、どうしてもついていけない。


「う~ん、そうだね。例えば君はどうやってこの世界に生まれたんだろうって考えたことはあるかい?」


生まれる?確かに引っかかる言葉だ、確かこのことを考えようとして井戸に向かう途中に頭痛で倒れたんだ。


「あれ?いつからこの世界に……」

ウルトが疑問そうに質問について考えているとアイは話を始めた。


「この世界によってその思考はロックされているんだ。まぁもっとわかりやすく言うと君たちのコアは世界に不都合なことを考えられないように制限がかかっている。そして君も知っているようにその思考に陥ったものは正常な動きが出来なくなるんだ」


「じゃあどうしてアイは…………」


消されたはずのアイがどうやって今の自分にこういう風に接触できたのか、、


アイがウルトの疑問を理解したかのように話し始める。


「当然の疑問だ。教会内部に協力者がいて、その時に少し細工をしてもらったんだ。あの段階ではまだ時期が速かった。何もかもが足りなかった。そこでその計画を未来に託し、こうやって君とのリンクに成功させることが出来たってわけさ。面白くなってきただろ?」


「面白いかどうかはわからないけど、わかったこともある」


ウルトは静かに口を開いた。


「つまり、君は消されるべき存在だったけれど、協力者がいてその計画が未来に引き継がれて、今こうして僕に接触できたわけだ。」


アイは嬉しそうに頷いた。


「その通り。教会は君たちにとっては“安全”で完璧に見える存在だけど、実際には世界のゆがみを正すという名目で使えなくなったヒトを処理している機関ということになるね」


アイの言葉は静かだが、その重さはウルトの胸にずしりと響いた。ウルトはその言葉を理解しきれずにいたが、感じ取れるものがあった。教会は、ただの保護機関ではない。いや、保護どころか、利用され、消されていく存在を「正す」という名目で処理している。


アイは続ける。


「この世界は、君たちにとっては当たり前のように感じるかもしれないけれど、実際にはすべてが歪んでいる。その歪みを隠すために、君たちは教会のような存在を信じて、無理矢理正しいとされる価値観の中で生きているんだ」


「この世界は間違っている」


アイが声を上げたのと同時にウルトも同じセリフを呟いた。


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