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18話 刺客

「少し暴れすぎたのかもしれない」

「そんなはずはない。この場所はまだ世界に認識されていないはずだ」

「それは、さっきまでの話だ」


言い終えたその瞬間、家の外で何かが爆ぜるような音がした。空気がわずかに揺れ、微かに煙の匂いが流れ込んでくる。


「……外、だな」


ライザが自分のタスクを操作するとそこには地下へとつながる道が現れた。


「ウルトは地下へ行きアイの記憶をアイの身体に入れるんだ」

「……え、ちょっと待って。それってどういう――」


ウルトが口を開きかけたが、ライザは首を横に振った。

「今は説明してる時間がない。地下の施設は、君にしか入れないように時間を稼ぐ」


ウルトは一瞬だけ躊躇したが、キナコの真剣な表情を見て、迷いを断ち切るように頷いた。


「……わかった。行ってくる」


その言葉を最後に、ウルトは無言で地下への階段を駆け下りていった。暗い通路の中、壁に沿って灯る誘導灯が静かに導いていく。

地上に残されたライザとキナコは、互いに短くうなずき合った。

「さて、こっちはこっちで歓迎の準備をしないとな」


キナコの表情はとても緊張していて、その手のひらには、うっすらと汗がにじんでいた。

けれど、震える指先をぐっと握りしめると、彼女は目を逸らさず前を見据える。

その隣で、ライザが微かに笑った。


「怖いかい?でも大丈夫さ。私がいる」


「反逆者は二人だけか。ライザとキナコだな」


その男は深いフードを被っていて顔を見えないようにしているが、その言葉の響きは、まるですべてを知っているかのようだった。冷徹で、感情のない声がこの場を支配する。


「……誰だ?」


キナコは少し震える声で問う。

男は一瞬、目を細めた。そして、フードをわずかに引き上げる。その顔が、明かされる。

それは、まだ人間の形をしていた。だが、その顔にどこか不自然な冷たさがあった。肌は青白く、目の奥には計算された冷徹さと、どこか「欠けている」ものを感じさせる。


「我々は“世界の秩序を正す者”だ。決められた行動をせずにセカイの秩序を乱す者、反逆者を排除する。お前たちのような者をな!」


その言葉には、確かに感情を感じるが、その声や表情は冷ややかなものだった。まるで遠隔で操られている人形のように。

ライザは冷静に彼を見据えたまま、静かに言った。


「秩序を正す? お前たちはただの“管理者”に過ぎない。ヒトの命を秩序だなんて名目で支配し、自由を奪うことを正当化するなんて、ふざけてる」


その言葉に、男の顔には一瞬だけ微かな反応が浮かんだ。まるで一瞬だけ、深く考え込んだかのように。

だが、すぐにその反応は消え去り、冷徹な表情へと戻り戦闘モードに入った。


男の手がゆっくりと動き、胸元に仕込まれた武器――長い刃を取り出す。刃は無駄に装飾などなく、ただ冷たく光る金属の塊のようだった。

ライザは目を鋭く光らせ、軽く一歩後退する。


「すでに世界の秩序は定まっている。お前たちはその秩序を乱すために存在する、誤った部分だ。だから処理する」

「わかっていはいたが話は通じない戦いになるぞキナコ」


ライザの言葉に、キナコは一瞬だけ顔を上げ、強く頷いた。


「うん、覚悟してる」


その一瞬で、男の刃がライザの視界を掠め、鋭く切り込んだ。ライザは間一髪で横に飛び、地面に手をついて反動をつけると、素早く立ち上がった。


「……速い」


キナコがその動きに少しついていけていない。

男の動きには、ただの速さだけではない何かがある。それは、冷徹に最適化された「戦闘」の動きだ。


「キナコ、あの男、ただの人間じゃない。あのスピード、あの精度。まるで冷徹に戦闘プログラムされたヒトだ。今回は私が処理するしかとみておくように。あと敵は一人じゃないかもしれない常に周りの警戒も怠るな」


ライザは一度呼吸を整え、再び周囲を冷静に見渡す。

男は完全に戦闘に特化した存在だ。もしこのまま戦うだけなら、どこかで必ず隙を突かれるだろう。


「早いうちに決着をつけないとな」


ライザはそういうと男の後ろにテレポートし男の動きを止めそのまま拳で殴りかかるが、硬い。

ライザの拳が男の背中に直撃するが、予想に反してその感触はただの人間の肉体ではなかった。

まるで鋼のような硬さに覆われた体に、ライザの拳は弾かれる。

男は少しだけ体勢を崩し、だがその冷徹な表情は微動だにしない。


「…まさか、装甲?」


男の体を一瞬で確認したライザは、すぐにその防御力の異常さに気づいた。

彼の体はただの肉体ではない。外部からの攻撃を吸収し、分散させるような構造になっている。

ライザは即座にテレポートでその男から距離を取り近くにあった木を素手で殴る。

その大木は根元から崩れ、重い音を立てて地面に倒れた。

ライザは一瞥し、拳を軽く開く。


「……力は落ちてない。攻撃は通る。問題はあいつの装甲だ」


その男が高速でライザに近づくがライザはそれをテレポートで軽々避ける。

ライザは再びテレポートでその場を離れ、男の後ろに回り込む。

その瞬間、ライザの周囲に青白い閃光が渦を巻き、まるで雷が解き放たれるかのようなエネルギーが瞬時に溢れ出す。


「雷拳――!」


ライザの右腕が前方に向けて一閃した。

拳から放たれたエネルギーの波動が空気を引き裂き、男の硬い装甲に直撃する。

その瞬間、男の左腕が文字通りちぎれ、空中で炸裂するように吹き飛んだ。

破片が周囲に散らばり、金属的な音が轟く。男の左腕は、ただの破壊ではなく、まるで肉体そのものが反応したかのようにバラバラに崩れていった。


「……血も出ないか」


男は一瞬、何もできないまま立ち尽くしていたが、その無表情は崩れることなく、すぐに戦闘態勢に戻る。

残された右腕で、ひときわ鋭い眼差しをライザに向け、すぐに反撃をしてくる。


「腕の一本じゃ戦いをやめるわけないか。来い」


そのスピードがさらに加速した。

テレポートで瞬間移動で動いているにもかかわらず高速で後を追ってくる。

ライザは冷静に呟き、目を細める。


「ならば――」


ライザは空中5メートルほど飛び上がり、すぐに拳を構える。


「――雷蒼拳」


その瞬間、ライザの拳から放たれたエネルギーは、雷鳴のような音と共に周囲の空気を震わせ、光とともに爆発的な力を解き放った。

閃光が走り、男の硬化した装甲を無慈悲に貫く。

その一撃は、まさに雷そのもの。男の体は一瞬にして粉砕され、装甲は完全に破壊された。


「すごい」


キナコは思わず呟き、目を見張った。

その言葉には驚きと尊敬の念が込められていた。ライザの力強さ、そしてその無敵のような攻撃力に圧倒されたのだろう。


「いや甘い。戦うのはいつぶりだライザ?なまっているんじゃないのか?」


地下室から身体を取り戻し歩いてきたアイがライザに厳しい言葉を投げかける。


読んでいただきありがとうございます。

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