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17話 反省会

アイは能力で、おなじみの机椅子を出しそこに座り話を始める。


「まずはウルトだ、攻撃が読みやすすぎる。未来予知の能力がなくてもその程度避けるのわけない。ラプラスの本質を理解していない。本来その能力は僕の能力と同等かそれ以上のポテンシャルを持っているという事を忘れるな」

「あぁ」


ウルトは唇をかみしめながら、黙ってうつむいたが、アイは話を続けた。


「そうだな、まずはラプラスの能力について、改めて整理しよう。ライザからも多少は聞いているかもしれないが、改めて言う。ラプラスには二つの主な効果がある。一つ目は、未来予知。二つ目は、体感速度を何十倍にも引き延ばす“加速視界”だ。その加速空間の中で、君は自由に動ける。つまり、高速移動としても応用できる。さっきの戦いを見る限り、見えている未来はせいぜい3秒ほど。そして重要なのは――この能力で見た未来は、“必ず”その通りになる。どんな行動を取ろうと、どれだけあがこうと、君が視たその未来からは逃れられない。たとえば、3秒後に銃で撃たれて死ぬ未来を視たとする。君がその結果を変えようと、身をかわしたり、遮蔽物に飛び込んだり、どんな行動を選ぼうとも――銃弾は必ず命中する。その未来は“君自身が取る行動”まで含めて、既に確定している。と言っても、ラプラスを使って銃弾を避けようとしている限り銃弾に打たれる未来なんて見ないから安心しろ。それこそがラプラスの真価だ」


アイの声は淡々としていた。だがその中には、どこか厳しさ以上の“重み”があった。

アイは少し間を置いてから、さらに続けた。


「ま、長々話したがウルト、ズバリ言うとウルト自身の火力不足と経験不足だ。今後は僕が直々に能力の活用法も含めて指導しよう」


「次にキナコ、は正直火力もあるし悪くない。がビーム打っている間防御の事意識してた?」


キナコは少し驚き、ビームを撃っている間のことを思い返してみた。戦闘中、確かに攻撃に集中していて、周りの状況や防御についてはあまり意識していなかった。


「してない。が今回は2対1で他に注意すべきものがなかった。今回に関しては防御を意識する必要はなかった」


少しいらだった様子でキナコが答えた。


「たしかに今回は2対1とわかっていた戦いだった。しかし完全に防御の事は失念してはいけない。僕が奥の手で攻撃するかもしれない。これが本当の戦闘だったら見えないところから攻撃が飛んでくるかもしれない。僕の防御ですら突破するやつもいるんだ。だから戦闘中は防御の事を常に考えなければならない。そこまでできて一人前だ」


キナコは少し口を噤んだ。確かに、攻撃に集中しすぎてその後のことを考えていなかった。だが、それがアイの言う通り、生死を分けるかもしれない。


「……わかった」


キナコの返事は不服そうだが、アイはそれを聞いて少しだけ満足げだ。


「終わったみたいだね。今日はもういい時間だから、ここらへんでお開きにしよう」

ライザ博士が、三人のいるところに歩み寄ってきた。白衣の裾が風に揺れる。


「初期段階の訓練としては十分に収穫があったよ。ウルトもキナコも、いま必要な“課題”が明確になった。これからが本番だね」


「……課題、ね。思ってたより、ずっと多いな」

「それが分かっただけでも、大きな進歩さ」


そういいながらライザ博士はここら辺にちりばめていた小さな機械を回収し始めた。

この小さな機械一つ一つがアイを投影させ実体化させていた機械だ。


「ちなみにこれがアイを投影していた機械だ。これで戦闘の正確なログを見れる。まぁ、アイは厳しかったと思うが嫌わないでやってくれ。“強くしたい”んだって。君たちのこと、ね。口ではなんだかんだ言っても、アイはわりと面倒見がいいから」


ウルトとキナコは、ほんの少しだけ顔を見合わせたそんな思いがあったのかと思うと、胸の奥が少しだけ温かくなる。


(おい、ライザ聞いているぞ。あんまりペラペラ話すな)


ライザが来たころくらいから姿を消していたアイが少しだけ起こったようにライザに言う。


(ウルトは明日水を運ぶ仕事があるからね。毎日は修行できない。次の訓練は三日後にしよう。回復と整理も訓練のうちだ。それまでしっかり身体を休めるんだ)


アイの話が終わった瞬間、ライザ博士の家の警報が鳴り響いた。

「ブブー! 警戒! 警戒! 施設内に不審者の侵入を確認! 緊急事態発生!」


読んでいただきありがとうございます。

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