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16話 アイの実力

アイは銃を構え、ウルトとキナコに向けて引き金を引いた。無制限に供給される銃弾が、二人に向けて容赦なく撃ち込まれる。


「アイに弾切れはない。いったん距離を取って、離れた位置からキナコのビームを放って様子を見よう」


と、ウルトが冷静に指示を出す。


アイは冷徹に引き金を引き続ける。銃弾は一瞬の隙も与えず、ウルトとキナコを追い詰めていく。その手元はまるで機械のように正確で、弾が全て的確に命中していく。


「くっ…! なんて正確さだ!」


ウルトはラプラスを発動し、弾をいくつかかわしながらも、8割ほどはキナコのシールドで防いでいる。キナコのシールドも銃弾を完全に防いでいるわけではなく何十にも張っているシールドにより威力が軽減して、その間に移動して避けている状態だ。それでも僅かな隙間から弾が切り込んでくる。


「キナコ!俺が時間を稼ぐからそのシールドを剣にして貸してくれ」


キナコは一瞬迷ったような表情を見せるが、すぐに頷く。彼女は素早くシールドを調整し、シールドを一本の剣に変形させる。シールドの構造は彼女の意思で自在に操れるのだ。しばらくその形を保つと、キナコは素早くウルトに渡す。


「助かる。行け!」


その合図とともに、キナコはすぐに走り出した。


「よう、アイ。」

「ウルト。君が相手でも僕は手加減しない。全力で来い」


ウルトは剣をしっかりと握りしめ、瞬時にラプラスを発動する。目の前のアイの動きが、まるでスローモーションのように遅く見える。ウルトはその動きからアイの銃弾の軌道を読み取り近づこうとするが、ウルトはその動きを止めた。


「正しい判断だ。そのまま僕に突っ込んでいたらカウンターを食らうことになってたよ」


ウルトが驚いた表情を浮かべていると、アイは冷徹に続けた。


「その能力は僕が作った能力だからね。当然それに対する対応策も考えている。それと未来予知が自分だけの能力だと思うな。そのヒトのわずかな動きや目線からでも能力がなくても次の動きくらいは予想できる。気を付けることだ」


アイの言葉は、ウルトの予測を揺さぶるものであった。ウルトのラプラスによる未来予測は確かに強力だが、アイの言う通り、能力に頼りきりではダメだという現実が突きつけられる。


「解説はここまでだ。避けてみろ。」


アイの言葉が戦場の空気を一層重くする。その瞬間、アイは再び銃を構え、ウルトに向けて引き金を引いた。


その瞬間ラプラスを使って銃弾の軌道をを読み、それに合わせて身をかわす。だが、予想外のことが起きた。弾丸がウルトの目の前で、空中でまるで曲がるように進路を変えたのだ。


「なっ…!?」

「どうした? 未来が見えるんだろう?」


アイは、挑発的に問いかける。


ウルトは一瞬動きを止め、驚きの表情を浮かべる。アイの弾丸は、彼女の予測を超えて軌道を変えていた。彼女の冷徹な笑みが一層深まる。

防戦になると不利になる。ここは銃弾を避けながら攻めるしかない。


アイが攻撃を続ける限り、絶対防御がないことをウルトは見逃さなかった。それこそが今、攻撃のチャンスだと判断する材料になった。そして、すぐにそのタイミングを見計らって、ウルトは合図を送った。


(今だ。キナコ。全力で俺ごとアイを打ち抜け)


その瞬間、木々の陰からキナコが姿を現し、光のビームが二人を襲った。ビームは、まるで弾丸のように鋭く、空気を切り裂く音を立ててアイに向かって放たれる。ウルトはそのビームが放たれたことを見逃さず、即座にキナコに作ってもらった剣をアイに振りかざす。


「絶対防御」


アイは絶対防御でキナコのビームを音も、光もなく消し去り、余裕を浮かべた笑みを浮かべる。


そしてウルトの剣もその絶対防御の中で消えてしまったがウルトは拳を強く握りしめ、アイに向かって飛び込んだ。剣を失っても、拳だけはアイに届かせると決意していた。

一瞬の隙をも見逃さずラプラスを発動させながら、アイに向けて全力で殴りかかる。


絶対防御があるからと言って、あらゆる手段を放棄するわけにはいかない。確かにキナコの魔法的攻撃は無にさせるかもしれないが、物理的攻撃は通るかもしれない。


「僕がウルトの隙だらけの攻撃で防御を外して攻撃に転じると思ったか?そもそも僕の絶対防御は半径3メートルの僕が攻撃と認識した攻撃が通らなくなる。それが魔法的攻撃でも物理的攻撃でもだ」


「っ……!」


渾身の一撃がからぶりした感覚に、ウルトの呼吸が乱れ、戦意が揺らぐ。拳に込めたはずの力が、何も打たずに霧散していく感覚――それは、ただ力を受け止められたよりもずっと心を削る。


(届かない……)


一歩、無意識に後ずさるウルト。その姿を見て、アイの表情にわずかな勝ち誇りの色が浮かぶ。


「今日はここまでだ。キナコも攻撃をやめてこっちまで来い。反省会だ」


アイがそう告げた瞬間、空気の張りつめた緊張感がふっと緩む。彼女の周囲に展開されていた絶対防御の光も、静かに消えていく。

ウルトはその場に立ち尽くしたまま、拳を握りしめていた。喉の奥が焼けるように乾き、悔しさが静かに胸の奥に沈んでいく。


読んでいただきありがとうございます。

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