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10. 武藤蘭香の一日


 朝礼を終え一限目の授業が始まった。

 午前中は一般科目だったので油断していたのと今日は朝が早かったこともあって窓からさす暖かな日差しと心地良い風に当たり眠気が襲う。

 

 「ふぁ~~~・・・・・・」


 「武藤、珍しく一限目から入ると思ったら俺の授業は退屈か?」


 おっと、いかん。 欠伸(あくび)が・・・・・・


 「今日は早目に登校したのでつい、」


 「ふん、じゃあ黒板に書いた問題を解いてみろ」


 椅子から立ち上がり答えた。


 「すいません、解りません」


 椅子に座り直し、また欠伸が一つ出た。


 「くぅっ!」


 どうやら生徒だけじゃなく、教師の方にも反感を買ってしまったようだ。

 

 キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン・・・・・・


 一限目が終わり二限目に入るまで十分間の休憩時間となった。

 しかし、この機会を黙っておかなかった不良達は一年生の教室に仲間を引き連れて乗り込んできた。


 「武藤ってヤツはいるかーーー!!」


 大声に驚き教室にいた他の生徒達が凍りついた様に動かなくなった。ゾロゾロと引き連れた仲間は教室を物色するように入って行き机や椅子を蹴飛ばしていった。


 「武藤は何処だ! お前が武藤かぁ?!」


 一年生に向かってメンチを切る不良達。


 「隠すヤツはどうなるか教えてやろうか!」


 持っていた竹刀で机を叩き威嚇した。

 不良達は教室にいた一人の生徒に目を付け回りを囲った。

 ターゲットにされたのは、男子生徒だった。

 目を付けた男子生徒の胸ぐらを掴みドスの効いた声で喋った。


 「ひゃあっ!!」


 怯えた男子生徒が堪らず悲鳴を上げたが、それを聞いた不良達が笑い出し、取り巻き達は男子生徒をからかって遊んだ。


 「ひゃあっだってよ~」


 「女みたいに泣いてらぁ~」


 「タ○タ○付いてるか確認しますかぁ?」


 一年生の教室に不良達の下卑(げび)た笑い声が響いた。


 「武藤ってヤツがいないなら代わりにコイツに相手してもらうしかねーなぁ」


 ターゲットにされた男子生徒は胸ぐらを捕まれたまま何も出来なかった。只ただ震え、されるがままだった。助けを呼ぼうとしても不良達が入り口を塞いでいるので出る事が出来ない。携帯で助けを呼んで自分が目を付けられたらと思うと下手に動くコトも出来ないでいた。


 騒ぎを聞いて教室の入り口に近づいた一人の生徒がいた。

 入り口の処にいた一人の不良に話し掛けた。


 「ねぇ、何の騒ぎ?」


 「うっせーな! 邪魔すんじゃあ・・・お、お前っ!!」


 入り口にいた不良が吹き飛び背中から倒れこんだ。


 ドシャン!!


 「「「!!?」」」


 不良達が音のする方向を一斉に振り向いた。


 「お前か、武藤っうのは?」


 不良のリーダーが聞いた。


 「ここ一年の教室ですよ、上級生の教室は上の階ですよ」


 ムシャリムシャリと持参したお菓子を頬張り味わっている。

 学校に行く途中でお店に寄り道して衝動買いしてしまったお菓子を味わいながら入り口にいた不良に蹴りを入れた。

 今日に限って登校時間が早かったので小腹が空いてしまった。


 「そのムカつく態度は、お前が武藤ってヤツだな」


 ムシャリ、ムシャリ、モグモグ・・・・・・


 「女だったとはなぁ」


 ムシャリ、ムシャリ、ムシャリ、モグモグ・・・・・・


 「・・・・・・」


 不良のリーダーは顔を赤くしてプルプル震えていた。


 ムシャリ、モグモグ・・・・・・


 「食うのを止めろ! 俺をバカにしやがってーーー」


 取り巻きの不良達は笑った。


 「あの女、もう終わりだぜ! リーダーを怒らせちまったんだからよ~」


 ゲラゲラと汚い笑い声を上げ笑っている。

 持っていたお菓子を平らげ口元をペロッと一嘗(ひとな)めした。

 

 ターゲットにされた男子生徒は解放され、ズンズンと足音を立て私に不良達のリーダーは近寄り手を伸ばしてきたが、フワリとリーダーの身体は宙を舞い、そのまま床に倒れた。


 ドシン!!


 「な、はぁ?」


 教室の空気がザワついた。


 「り、リーダー!?」


 一番驚いたのは取り巻き達だった。自分が今見た光景に目を疑っていた。

 体格の大きな不良のリーダーが小柄な女子生徒に投げ飛ばされたという現実に驚き言葉が出なかった。

 教室の空気が、また一層冷たくなった。


 「てめぇー、何しやがった!」


 不良のリーダーは立ち上がり、また私に向かって行くと目の前にいた筈の私が消えた、その瞬間痛みと衝撃が下から襲って来た。


 「パフゥッ!!」


 私は逆立ちの体勢とその勢いを利用して一直線に不良リーダーの(あご)を蹴り上げ攻撃を当てた。

 顎に受けた衝撃で不良のリーダーは体勢を崩し床に倒れた。気を失ったのか、これ以上動くことはなかった。


 リーダーが倒され呆気に取られている取り巻き達はゴクリと生唾をのんだ。


 「り、リーダー?」


 「そ、そんな~・・・・・・」


 取り巻き達一同は動かなくなったリーダーを呼ぶが応答は無く、冷や汗をかきながら私を見つめた。


 「さて、次は誰だ?」


 ニタリと口角を吊り上げ悪魔の様に笑ってみせた。

 リーダーが倒されても勇敢に向かって来る人もいれば、その場を逃げ出す人もいた。

 だが、一人も逃がすつもりは私には無い!

 わざわざ、一年の教室にお越し頂いたんだ、全員無事で返す訳ないだろう! 一人残らず相手をしてやるよ。


 「このクソ野郎! ヘブッ!!」


 「よくもやりやがったーーーホバッ!!」


 「ま、待て待て、俺は誘われただけでーーーガバッ!!」


 「ひぃぃ、助けーーーゲヘッ!!」


 教室は一時、武藤蘭香による狂喜乱舞で二時限目の授業が少し遅くなってしまった。その場にいた一年の生徒全員恐怖で動けずにいた。

 騒ぎを聞きつけ二時限目の授業の教師と相川が割って入る頃には不良達は全て気を失って倒れていた。


 「武藤さんまた、やったのね!!」


 相川の声にハッとなり気がついたが手遅れだった。鬼の様な形相で、この後こってり(しぼ)られたのは言うまでもなかった。


 「ち、違うんだよ、この人達が教室に来て暴れてたから止めようとーーー・・・・・・」


 「言い訳は別の場所で聞くから、コッチへ来なさい!!」


 相川は圧力を掛けて有無を言わさなかった。


 「・・・・・・はい」



 これが私、武藤蘭香の一日の様子である。

 この後も奇襲などがあったが全て蹴散らしましたとさ。

 夢に見た青春や薔薇色の高校生活からどんどん離れていってしまっているのは何故だろう?

 


 

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