25. 選抜の選手と応援団
東生徒会長の呼び出しを受け、その申し出を断った。相川からは凄く睨まれたがやる気の無いモノを受けるつもりは私には無い。悪徳勧誘業者かと思う引き止めにあったが、キッパリ断った。
午前の授業も終わり屋上でお昼をしていると取り巻きを連れた女リーダーに絡まれている時、二年の泉と名乗る女子生徒が現れた。
給水タンクから降り、泉という女子生徒の話しの内容を聞いた。
どうせ文句か何かだろうと察する。
「それで話しとは?」
「貴女が選手としてウチに入るって聞いて本当かどうか確かめに来たのよ」
東生徒会長、私に内緒で勝手に進めていたんだな!
「生徒会長からの推薦だそうだから、さぞ自信があるらしいけど貴女に務まるかどうか」
「そうよ! 泉さんは個人戦選手のエースなのよ! 貴女とは天と地、月とスッポンなのよ!」
女リーダーが自慢気に説明した。
「そもそも、不良達を相手にしているような人と一緒なんて私は嫌よ」
「そうよ! 身の程を知り、弁えなさい。野蛮な人が出ていモノではないわ」
まぁ、言わんとしているコトは分かるがちょいちょい出て来る女リーダーは、なんか鼻にくるな~
「・・・・・・えーと、色々言っている用だけど、その話しなら断ったけど」
私の口から断ったと聞いて一瞬の間、皆、沈黙した。
「「「・・・・・・え?」」」
「いやだから断ったって言ったの」
これには泉先輩も女リーダーや取り巻きの女子達も目が点になった。
「断ったって本当?」
確認するように泉先輩が聞き直した。
「本当だって、さっき断った。生徒会長に聞いてみたら?」
「貴女、名誉ある申し出を断ったの?」
女リーダーは信じられないという表情と態度で私を非難した。
何故断ったのに非難される? それを望んでいたんじゃないのか?
「何が名誉だ、くだらない・・・・・・」
タメ息をつきながや呟いたが、コレがいけなかった。またしても余計な争いの火種を作ってしまったようだ。
「くだらないですって!」
女リーダーの表情がみるみる怒りへと変貌していった。
「やっぱり貴女みたいな人に選手なんて務まらないわ!」
「うん、だから断ったって言ったじゃん」
ケロっとしなが言ったのが良くなかったようで益々、怒りの炎に油を注いだようだ。
野蛮人だのなんだのと思いつく限りの罵声という毒を私に吐く女リーダーと援護射撃する取り巻き達、まるでブレーキが壊れた暴走列車の様だ。
「ちょ、ちょっと、もうその辺で・・・・・・」
女リーダーと取り巻き達を止めようとする泉先輩だったが止まらなかった。なんかもう引くに引けない様な雰囲気になっている。
「泉さん貴女の実力を、あの野蛮人に教えてあげましょう!」
「そうですよ! エースの力を見せてあげましょう!」
女リーダーと取り巻き達に煽られ断わるにも多勢に無勢で結局、押しきられる形になってしまった。
私と泉先輩は両者向かい合った。
何でこうなるんだ?
「あのさぁ~、人の話し聞いてた? 断ったって言ったのに、こんなコトする必要無いでしょ?」
「何よその態度、自分は余裕だって言いたいの?」
いや、そんなコト一言も言ってませんよ。
取り巻き達のブーイングも、どんどんとヒートアップしていった。
「さぁ泉さん、やっちゃて下さい!」
やっちゃて下さいって泉先輩困っているし、オロオロしてるよ。
「え、えーと武藤さん・・・・・・」
困って私に助けを求めてるようだけど、私に振られても困るよ。どうしよう、この状況・・・・・・
「さぁ泉さん!」
あの女リーダー、めっちゃ煽ってるな~。
「あのさぁ~、お昼終わるから戻ってもいい?」
「あら、選抜のエース相手に尻尾を巻いて逃げるのかしら?」
自分は煽るだけ煽って何もしないクセに! 泉先輩の後ろに隠れて言いたい放題言いやがって! アホらしい、相手なんかしていられるか!
帰ろうとした私に女リーダーは泉先輩をけしかけた。
「逃げるなんて許さないわよ、泉さんに成敗されなさい野蛮人!」
女リーダーは泉先輩の背中を押して私と無理矢理闘わせようとした。
「うわっ、ちょっ!」
押された勢いで私の方に向かってくる泉先輩、それでも構えた拳を私に向けた。
「ご、ごめんなさいっ!」
謝りながらふるった拳を私はヒョイっと交わした。
「え?」
手応えの無い感触に泉先輩が驚いた。
「じゃあ、お疲れ~」
その場から逃げようと屋上の出入口に向かうも取り巻き達が出入口を通せんぼうするかの様に腕を組んで塞ぎ肉の壁となってバリケードを張った。
「おい、そこ退いてよ!」
「逃げるな卑怯者!!」
卑怯って何だよ!
「これで逃げられないわよ、さぁ泉さん、あの愚か者に鉄槌を!」
良く回る舌だ、野蛮だの卑怯だの言いたい放題言いやがって!
泉先輩は唇を噛み締め覚悟が決まったのか構えのポーズをとり再度私の方へ走り出した。
「ごめんね武藤さん!」
泉先輩も引くに引けなくなったんだろうな~可哀想に、少し同情しつつ仕方無く泉先輩に身体を向け迎え撃つ体勢を取った。
攻撃してくる泉先輩を右え左えと交わし逃げの一手に回った。選抜の選手を不良達の様に相手して、また変な悪評が広がったら嫌だし、飽きるか疲れが出るまで逃げ回るコトにした。
「な、何で一発も入らないの?!」
彼女は私の動きに合わせて避けているみたい。喧嘩が強い人って聞いていたけど話しと違うじゃない!
「あのぉー止めませんか?」
「やぁ!」
「危ないですって」
「このぉ!」
何か、維持になってないかい泉先輩?
「午後の授業が始まるんで、この辺で良いですか?」
汗一つかかず息も切れず平気な顔をしている私に等々、泉先輩が息を切らしながら挑発して来た。
「随分余裕ね、私じゃあ相手にならないってコトなの?!」
いや、そういう訳じゃあ~・・・・・・
「毎朝不良達の相手をしているだけあるわね、けど私だってエースとしての誇りがあるのよ、今さら止められないわ!」
えーーーっ! 何でそう~なるのぉ~?
「いいわ! そのまま、その野蛮人をやっつけちゃってーーー!!」
誰が野蛮人だぁ!!
穏便に事を済ませようと思ったけど、もう頭にきた、ソッチがその気ならコッチだってやってヤル!
泉先輩の攻撃を紙一重で交わし死角から身体の脇の部分に狙いを定めて体重を乗せた突進術をぶつけた。
「キャッ!!」
視界から消え横から強い力がぶつかり体勢が崩れた。泉先輩の身体は思いの外飛ばされた。
「あ、やばぁっ!!」
しまった、やり過ぎた!
飛ばされた泉先輩の身体は勢い良く屋上に張られたフェンスに叩きつけられた。
バキィィーーーッ!!
フェンスは衝撃に耐えられず音と共に壊れ、そのまま下に落下し、泉先輩も一緒に落ちていった。
「上から何か落ちて来るぞ、避けろ!!」
下から多くの悲鳴が聞こえて来た。
強い力で身体が飛ばされ泉先輩はフェンスに叩きつけられた後、支える物がなく抵抗も出来ずに下に落ちた。
「キャァァーーーッ!!!」
堪えられず悲鳴を上げたが一向に衝撃が来ない。
閉じた目を開けると自分の身体が落下せずに中に浮いているのに気づいた。
「む、武藤さん・・・・・・」
先輩の足を掴んで落下を防止したのだ。
私は深く深呼吸を二回、三回行い、勢いをつけ泉先輩の身体を引き上げた。
「どっせいやぁーーーっ!!!」
「キャーーー!!」
引き上げられ屋上の床に投られた形で泉先輩は無事、帰還した。
私は思った以上に力を使った生で床に膝を着いた。人、一人持ち上げるのは結構ハードなモノだ。
「泉さん大丈夫ですか?!」
女リーダーが近寄り無事を確認した。
キッと睨み、また罵声を浴びせに来た女リーダー。
「やっぱり野蛮な人だわ! 泉さんを屋上から落とそうなんて!」
取り巻き達もそーよ! そーよ! と女リーダーと一緒に声を上げた。
何なんだコイツ等は。あーもう、嫌だ!




