22. 嵐が去って
私が不在の間、相川を人質に取ろうと動いた不良達は止めに入った風間を暴行し相川と共に自分達が普段たまり場として使っていた廃工場へ来るよう時間と場所を指定して私を呼び寄せようとした。
二人を助けるべく義理兄の職場の同僚にお願いし、動向して貰い指定した場所へ到着、不良達を蹴散らし二人を救出する筈が多勢に無勢でピンチへと陥ってしまった。
すると颯爽と現れた一人の人物に助けられた。帽子を深く被っていたので人相までは、分からなかった。
その場に呆けていると何故か、その人物にキスをされてしまった。私の唇を奪った人物は耳元で呟き去っていった。
あっという間であった。
取りあえず倒れた不良達に救急車を呼んでやり、風間を急いで病院へ運んだ。動向してくれた伊勢野さんを脅し(頼み)一部内容をカットして義理兄に報告して貰った。
なんか伊勢野さん泣いていたけど気にしない。
伊勢野さんが報告中、携帯を奪い取り、私の方からも義理兄に話しをした。
「蘭、無事か!!」
「大丈夫だから連絡してるんでしょ」
「怪我は無いのか?」
怪我ーーー・・・・・・て言われて自分の身体を確認した。
包帯でグルグル巻き状態の身体を・・・・・・
「うん、大丈夫、大丈夫、かすり傷だから」
笑いながら言っている姿に伊勢野と相川は目を細め黙って様子を見ていた。
「そうだ、一ノ瀬さんと連絡取りたいんだけど今いる?」
「一ノ瀬? 何か用でもあるのか?」
「ちょっとね」
「用件って?」
面倒臭い人だ、この人。
「側に居るなら変わってよ」
「用件は何なんだよ?」
「本人と話すから変わって!」
この押し問答が少し続いた。
「いい加減変わってよ、近くに居るんでしょ?!」
「伝えてやるから用件を話せよ!!」
イラッ!!
この人は・・・・・・
するとやり取りの様子を見ていた一ノ瀬が武藤 仁の後ろから肩をトントンと叩くと気づいていないのか手を払われた。
「今、忙しいんだ後にしろ!」
再度肩を叩いた。
「だから後に・・・・・・っ!!」
振り向くと一ノ瀬がそこにいた。笑顔で手を出し圧力を掛けた。
携帯をよこせ! と・・・・・・
無言で持っていた携帯を手渡し、ここからは一ノ瀬が変わって対応した。
「もしもし、変わったけど、どうかしたのかい?」
「一ノ瀬さん、実は・・・・・・」
私は簡単に事のあらましを話し一ノ瀬さんに頼みずらいお願いをした。
今回、友達が一人怪我をした為、その友達の親に謝らないといけないので義理兄の代役で私の保護者役をして欲しい事を。
「義理兄さんだと目立つ上に相手を威圧しそうで・・・・・・」
「成る程確かにね、分かったよ。 ボクで良ければするよ」
「有難うございます、一ノ瀬さん!」
私は伊勢野という男性に携帯を返した。
「伊勢野くん、君は一旦帰っておいで」
「は、はい、分かりました!」
携帯を切った。
「じゃあ帰還命令が出たから、自分は一度戻る」
そう言って伊勢野は懐から薄く手の平サイズの入れ物を出しその中から用紙を取り出し渡した。
「何かあったら、ここに連絡してくれ」
彼の連絡先だった。
「何かデートのお誘いみたい」
ちょっと彼をからかってみた。
「ばっ、何言ってるんだ!!」
思った以上に顔が赤くなって慌てた伊勢野を見て玩具に出来るなと思ってしまった。
「君には前に迷惑を掛けてしまったから、お詫びも兼ねて、次に何かあったら連絡してくれ力になるよ」
私はキョトンとし、クスっと笑った。
「その時は頼りにするね」
伊勢野は更に顔を真っ赤にして目線ー反らした。
「じゃ、じゃあ帰るから」
手を振り彼を見送った。帰る際に、もう一度彼に釘を刺した。
"キスの件"は他言するなと・・・・・・
義理兄に知られたら相手を見つけてどんな制裁を加えるか分かったもんじゃない。
伊勢野という男性は引きつった顔を見せ、何か悟ったのか「分かった」と一言だけ言い帰っていった。
私は設置された椅子に腰掛けた。
「あの人帰ったの?」
相川が話し掛けて来た。
「うん」
「今日は散々な一日だったわ」
確かに、今日はいやに疲れた一日だった。
すると受付けの方から慌てた声が聞こえて来た。
「あれって」
「どうしたの武藤さん?」
腰掛けていた椅子から立ち上がり私達の方へ向かって来る人を見た。案内をしていた受付けの女性に付き添われながらICUの扉の前まで来た女性がいた。
見た目からして四十~五十代位の女性だった。
「息子は、息子は大丈夫なんですか?!」
受付けの女性の腕を掴み叫ぶ年配の女性に相川がボソリと呟いた。
「あの人、風間くんの・・・・・・」
母親と言い切る前に年配の女性が私達に気づいた。風間の母親であろうその女性は血走った目をギロリと私達の方へと向けた。
バチィーーーン!!!
音が辺りに響いた。
「武藤さん!!」
後ろにいた相川は驚き叫んだ。
「あんたが、あんた達が息子を!」
私は年配の女性に顔を叩かれてしまった。
血走った目からは涙が流れていた。
「何も叩かなくても!」
「いいんだ相川・・・・・・」
食って掛かろうとした相川を静止し、年配の女性に私は頭を下げた。
「風間くんに怪我をさせて申し訳ありませんでした」
私の様子を見て相川も頭を下げた。
「す、すいませんでした」
風間の母親であろうその女性は涙を流しながら言った。
「出ていって、出ていってちょうだい!!」
自分の子供に怪我をさせた現況がいたら、そりゃあ嫌だろう・・・・・・
私はもう一度頭を下げ、相川の手を引いて病院から出ていった。
「相川、行こう」
「え? ちょ、ちょっと待ってよ」
病院の外に出てバス亭まで歩いた。バス亭に着くと相川が眉間にシワを寄せた。
「何も叩かなくても良いのに!」
「自分の子供が怪我をしたんだ、怒らない親はいないだろ」
それはそうだけど~と言いながら頬を膨らませた相川だった。
「それより相川、今日は時間ある?」
「え、何で?」
ニヤリと笑う私を見て相川が何かに気づいた。
ペロリと舌を出した。
「お昼食べ損ねた生でお腹空いちゃって」
ちょっと前に流行ったテヘペロのポーズを見せた。
「今、十四時半だよ」
「よし、街に行ってご飯食べよう!」
私の提案に相川を巻き込んだ。だって一人でご飯食べても味気ないじゃん!
「学校に戻らないの?」
「うん」と満面の笑みで返事を返した。
バスが到着し乗り込んだ。十分程走った先に、街へ着いた。
「それじゃあ、何食べてようかな~」
「一度学校に戻ろうよ~」
不安気な相川の手を引いて連れ回した。
ご飯モノ、麺モノ、洋食、中華、美味しい匂いが鼻を刺激し腹の虫が鳴る。
「いい匂い~」
呆れた顔をする相川だった。
お店を決めて中に入った。ついでに食後のデザートも注文し満足してお店を出た。
「美味しかった~」
「それじゃあ学校に・・・・・・」
という相川の言葉を遮り、相川の手を取った。
「よし、次は雑貨屋に行こう!」
相川を無理やり連れ回した。
「ちょっと武藤さんーーー!」




