21. 報告の内容は一部カットでお願いします
相川と風間が人質にされ指定された時間と場所に行くと、大勢の男達が集まっていた。二人を助けようと乗って来たヘリから飛び降り屋根をぶち抜きそのまま落下、廃工場の中に入るコトに成功。向かって来る男達に大立ち回りを繰り広げたが、相川を盾に動きを封じられ袋叩きにされてしまった。
助けに来た筈がピンチに陥ってしまった。
そんな時、気配も音も無く現れた一人の人物に助けられ何故かキスをされ、その人物は去っていった。
帽子を被った人物は一体?
某病院で意識が無い風間をヘリで緊急搬送し、連絡を貰って待機していた医師と数人の看護師が急いで彼をICUへと運び治療に当たった。
ICUの扉の前で相川は風間の無事を祈った。
「有難うございました」
病院まで連れて来てくれた伊勢野に頭を下げた。
「いや、君は大丈夫なの?」
「はい、私の方はかすり傷だけです」
看護師さんから手当てして貰った手を撫でた。
「あのぉ~、武藤さんは?」
「ああ、彼女なら・・・・・・」
振り向くと未だに硬直中だった。
それを隣でつつくアンドロイドのアイ、という構図のままだった。
「大丈夫だろう・・・・・・多分」
自信無く、そう言った。
そう言う以外無かった。
相川が恐る恐る助けてくれた男性に聞いてみた。
「貴方達は一体?」
その質問に伊勢野は少し困った。
先程、アンドロイドのアイが言っていた様に自分達の存在は一般人には公表されていない。なので言える筈もない。
自分達は秘密裏に行動している組織ですなんて言える訳が無かった。
「自分達は~・・・・・・そのぉ~・・・・・・」
やはり、言葉が出なかった。
「ワタシタチハ、カノジョ二ヨバレテキマシタ」
「・・・・・・えっと、貴方は?」
「ハジメマシテ、ワタシハ、アイチャンデス」
ア、アイ?
「アイチャント、ヨンデクダサイ」
はぁ~っと呆気に取られているとアイは固まっている武藤 蘭香をまだつついていた。
「兎も角、彼女を起こさないと・・・・・・えっと、アイ、彼女を起こしてくれ」
「ワタシハ、アイチャンスデス」
瞼をパチリと動かし伊勢野を見る。
「もしかして、ロボット?」
「ワタシハ、アイチャンスデス」
「・・・・・・」
この状況が上手く呑み込めないでいる相川だった。
「すまないが、このロボッーーー・・・・・・」
「アイチャンスデス」
「このアイ・・・ちゃんと自分についつは口外しないで貰いたい」
「何故ですか?」
「ワレワレノソンザイヲ、クチニシタバアイ、アナタハショバツサレマス」
「しょ、処罰っ!?」
「だから今日の事は忘れて貰いたい」
「処罰って何、されるんですか?」
「ソレソウオウノ、バツガクダリマス」
アンドロイドのアイが淡々と話すコトに怯えた顔色になっていく相川に伊勢野はフォローした。
「口外しなければ大丈夫だから!」
ね、っとアイの方を見た。
「ダイジョウブデス」と言いながらつつく動作を続けるアンドロイドのアイだった。
相川は小さく「はい」と答えた。
「それより、武藤さん動かないけど大丈夫なんですか?」
「彼女も自分に起きた状況が呑み込めずにフリーズしたままの様だ」
「シンパク、ミャクハク、ヤヤジョウショウモンダイアリマセン」
大人数で袋叩きにされて出来た怪我も手当てを受け身体は包帯でグルグル巻きにされた姿で硬直して動かない。
余程キスされたコトが彼女の中で衝撃的だったんだろう、看護師に手当てされても微動だにするコトはなかった。
「自分は報告するから少し、この場を離れるから」
伊勢野が携帯を取り離れようとした時、武藤は動いた。
「ほうこく?」
「へ?」
「報告ダメ!! 報告しちゃダメ!!!」
伊勢野の胸ぐらを掴み詰め寄った。
「いやでも、副隊長には現状の報告するよう言われてーーー・・・・・・」
「尚更ダメだ! 義理兄にだけは、特にキスの件の辺りは!!」
義理兄に知られたら何を言われるか分からない、報告なんてされたら堪ったものではない。最悪、説教と言う名の雷が落ちるコトに成りかねない。
半泣きで伊勢野の胸ぐらを掴み揺さぶったり携帯を奪いに行った。
「報告は義務でしない訳には・・・・・・」
揺さぶりに抵抗しながら、尚も携帯は手離さなかった。
「その携帯よこせ~~~っ!」
「止めろって!」
「武藤さん止めて!」
そこへ相川が参戦した。三人が揉み合う光景を瞼をパチリと動かし見ているアンドロイドのアイだった。
先に観念したのは伊勢野だった。
「わ、分かったよ! 内容は一部カットする、それで良いだろう?」
カットとは? と疑いの眼差しを向けた。
「だ、だから、その~・・・・・・キ、キスの件の辺りとか・・・・・・」
「ソレデハ、ヤヤホウコクニ、ギモンガショウジマス」
アンドロイドのアイは瞼をパチリさせて提案した。
「成る程、アイちゃんナイスアイディア」
「アリガトウゴザイマス」
「それで報告して大丈夫なの?」
「大丈夫な訳ないだろ! 報告するの俺だぞ!!」
アンドロイドのアイの提案は以下のモノだった。
私の友人を人質に取り集まった不良達と衝突、騒ぎを聞きつけた警察が間に入り、不良達はそのまま御用となりお持ち帰りとなった・・・・・・という筋書きだった。
「コレナラフシンナトコロハ、アリマセン」
「いや、でも~・・・・・・」
伊勢野は難色を示した。
「上手く報告すれば問題無しよ」
「上手くって~・・・・・・」
私は伊勢野の肩にポンと手を置いた。
「貴方にセクハラされたって、私の方から報告するけど、どうする?」
笑顔で言ってやると伊勢野は青ざめ身体を小刻みに震わせ鯉の様に口をパクパクさせた。
「が、頑張って、報告、します」
「お願いね、伊勢野さん」
それは脅しよと相川が怒っていたが私の耳には入らず、ハハハっと笑ってやった。
伊勢野は生気が抜けヨロめき少し離れた場所で報告作業に入った。
私は深いタメ息をついて今後の事を考えた。
このまま学生生活を続けられるのかどうかを、義理兄を通じて彼等と関わってしまった。それがこの後の私の人生にどう影響を受けるのかを考えていた。
そしてあの時現れた、あの人物・・・・・・どう見ても素人の動きじゃなかった。
あの身のこなし方は武道か戦闘経験のある人間の動きだった。
まるで、義理父や義理兄の様な・・・・・・まさか、裏で義理兄が何かしていたんじゃあ?
一人悶々と悩んでいると心配そうに相川が側に来た。
「・・・・・・ねぇ武藤さん」
「何?」
「明日、学校に来るよね?」
「はぁ? いや行くよ、何言ってるの」
「そっか、そうよね・・・・・・」
相川は笑って答えた。
相川の中には不安の文字が残った。廃工場で大勢の不良達と戦っていた彼女の顔が瞳に焼き付き消えない。
武藤さん・・・・・・笑っていた・・・・・・
その光景が相川の中で少しの不安と恐怖が入り混じっていた。




