20. 謎のお助けマン登場
ブロロロ~ブロロロ~・・・・・・
「モウジキ、モクテキノバショ二トウチャクシマス」
「良かった、これなら時間に間に合う。 有難うアイちゃん」
相川の携帯から連絡があった。
写メも送られ見てみたら、ボコボコにされた風間と一緒にいた相川だった。相川の携帯から知らない男が話し始め指定した時間と場所に来いとの事だった。
現在、義理の兄の職場にいたので義理兄の仕事仲間の一人だった伊勢野と名乗る若い男性とAIを搭載したアンドロイド改め、アイが運転手を勝手出た。
アイちゃんの提案で車よりヘリの方が速いとの事で、格納庫に保管していたヘリコプターで出発した。
「見えた、あそこは工場か?」
伊勢野は鉄筋剥き出しで所々穴が空いている建物を確認した。
「アイちゃん、出来るだけ屋根近くまで来たら止めて」
「はぁ? お前、まさか飛び降りる気かぁ!?」
伊勢野は驚き声を上げた。
廃工場の屋根の上でへりをホバーリングをし、機体を安定させると私は扉を開け飛び降りた。
「ちょっと待て!?」
伊勢野が絶句する間に私の身体は既に無かった。
ヘリの出す騒音に気づいた廃工場の中にいた男達は騒ぎ出した。
「お、おい、何だこの音!?」
ガシャーーーンッ!!!
「な、何だ!?」
ヘリから飛び降り廃工場の屋根をぶち抜き、そのまま下へ落下し工場内への侵入に成功した。
屋根をぶち抜いた騒音に工場内にいた男達は怯んだ。
「お、お前は!!」
身体を起こし男達に向き合った。
「友人が世話になったね」
ニヤリと口角を吊り上げ不適な笑みを浮かべた。
「武藤さん・・・・・・」
相川は安心感からか瞳から涙が流れ止まらなかった。
「相川無事か?」
相川は涙を流しウンウンと頷いた。
「あいつが武藤だ、皆やっちまえ!!」
それを合図に周りにいた男達が私に向かって来た。
ブロロロ~ブロロロ~・・・・・・
廃工場の頭上でホバーリング中のヘリの中で伊勢野は言葉を失っていた。まさか本当に飛び降りるとは思わなかったのだ。
「何てヤツだ・・・・・・」
彼女は確かに副隊長、武藤 仁、彼の兄妹だ。
ヘリの操作をしながら廃工場の中の様子をアンドロイドのアイは自分に搭載されている機能を使い記録した。
一方、廃工場の内では勇往萬進の如く、向かって来る男達を相手に一人で闘っていた。
人数が多いので速さ重視で当たった。
力では男に比べ女は非力である。だからと言って臆するコトはない。非力な者が自分よりも勝る者と対峙する術こそ"武道"なのだと私は教わった。
私の中には義理父の教えが詰まっている。義理父ならこんな時、こう言うだろう。
"恐れず進め!!"と・・・・・・
「グヘッ!」
「ガヘェッ!」
「な、何でだ?! たった一人なのに、コッチは沢山要るのに何で倒れねぇーんだよ!!」
「アイツ、本当に女かぁ?!!」
「誰か、ささっとアイツを倒せ!!」
少し離れた距離から怒号や罵声に混じって悲鳴や嘆きの様な声も聞こえてきた。
私が多人数でも男達と拳を交えるコトが出来るのも三年前に亡くなった養父、義理父のお陰である。その為同年代や上の年代の人に比べ、フィジカルが高いので喧嘩が出来るのだ。
「クソォ~ッ!!」
よろめいた拍子に近くに転がっていた鉄パイプを手に再度襲い掛かって来たが私はそれを交わして相手の顔にカウンターを入れた。そこを狙って物が投げつけられたが足で止め、体制を変えた勢いを載せて投げた相手に物を返してやった。
「ブヘッ!!」
殴る、蹴る、投げ飛ばす! 助けも無く私は一人、その場で勇猛果敢に闘った。
「・・・・・・武藤さん」
武藤蘭香を呼び寄せる人質として連れて来られた相川は助けに来てくれた武藤の姿を見て一抹の不安が溢れて来た。
相川には理解する事が出来なかった。
助けに来てくれた事には感謝しているが武藤 蘭香の大立ち回りをしているその姿に不安と安堵の入り交じった感情の波が心の中を侵食しザワついた。
武藤さん・・・・・・笑っているの?
相川には武藤が喜んでいる様に見えたのだ。
「クソォーっ、止まれ武藤!」
「!?」
「こいつがどうなってもいいのかぁ?!」
きゃぁっ、と悲鳴がする方向に目を向けるとボロボロの顔に鼻血を流しながら相川の髪を掴んでいる男がいた。
「痛い、離して!」
相川を人質に取った男が他の男達に指示を出した。
「今の内だ、そいつをぶっ◯せーっ!!!」
周りを囲んだ男達は思い思い私に攻撃してダメージを与えた。鉄パイプで何度も叩いたり拳大の石を投げて当てたりと遣りたい放題だった。
「止めて! 武藤さんが死んじゃう!!」
泣きながら辞めるように叫ぶが男達にその言葉は届かなかった。
「うるせぇー! アイツが終わったら次はお前だ!」
男の目は血走り相川は恐怖の中、この場を打開出来る方法を考えているが考えが纏まらない。このままでは助けに来た武藤が遣られてしまう。
廃工場内の様子を距離を取り伺う伊勢野とアンドロイドのアイは壊れた小窓からヒョッコリ様子を見ていた。
「流石にマズくないか、コレ? 助けにいった方が良いんじゃないか?」
「・・・・・・」
一緒に様子を見ていたアンドロイドに聞いてみたが返事は無かった。
「助けに行かないの?」
「ワレワレガデテイクト、セツメイヲモトメラレマス」
「説明?」
「ワレワレノソンザイハ、イッパンジンニハソンザイジタイコウヒョウサレテイマセン」
「じゃあ、このまま見てるか?」
「ソンザイヲショウメイハ、キテイイハン、ショバツサレマス」
アンドロイドのアイは淡々と言った。
「処罰される前に彼女に何かあったら副隊長から先に処罰されるって!!」
伊勢野はこの廃工場に来る前にいた飛行機の機内での光景がフラッシュバックした。
般若の様な顔をした武藤 仁の顔がありありと記憶から甦る。武藤 仁に殴られ動かなくなったルーサーと自分を重ねてしまった。
「俺は行く!」
伊勢野は飛び出し武藤蘭香を助けに行こうとした瞬間、武藤蘭香を取り囲む男達の中に歩いて向かって行く一人の人物に目の端から表れた。
だ、誰だ?!
「だ、誰だお前?!」
男か女か分からないその人物は目深に被った帽子で顔はハッキリと分からなかった。
掴んでは投げ掴んでは投げを繰り返し、背中に背負っている布で覆われた長物を手に一人で男達と立ち向かっていった。
完全に出遅れた伊勢野は呆気に取られ直ぐに我に返った。
「いや、誰だアレ?」
突然表れた人物に男達はパニックに陥った。
「な、何だお前、武藤の仲間か?」
帽子を被った人物はクスっと笑い、その場にいた全員を倒し武藤蘭香の側まで歩み寄った。
「誰?」
突然表れた帽子を被った人物は見下ろす形で武藤 蘭香を見ると腰を下ろし膝を着く形で目線を合わせたと思いきや腕を掴み自分の方へ引き寄せ顔を近づけ口づけをした。
「!!?」
離れて見ていた伊勢野は状況の整理が追いつかず頭の中が真っ白になった。相川も目が点になっていた。
いきなり口づけをされ抵抗しようにも男達に袋叩きにされ負った怪我で余力が無く振りほどけずにいたが相手の方が直ぐに離れた。
「な、何すんだいきなり!!」
顔を真っ赤に無駄だと分かってても一応の抵抗は試みた。
帽子を被った人物は耳元で小さく呟き武藤蘭香の側から離れそのまま去っていった。
帽子を被った人物が去ったのを確認し伊勢野は武藤蘭香の側までやって来た。
「おい、大丈夫か?」
武藤蘭香は固まっていた。
アンドロイドのアイがつつくが動かなかった。
「貴方達は誰なの?」
相川が伊勢野に聞いた。
「説明は後で、取りあえず病院へ急ごう」
伊勢野は倒れている風間を担ぎヘリに向かった。
「ええっと~アイ・・・救急車を人数分呼んでくれ」
倒れた男達を指差した。
固まって動かない武藤蘭香を持ち上げヘリに乗り込んだ。
「これ、副隊長に何て報告すれば良いんだ?」
伊勢野はこの後の事が心配で気が気でなかった。




