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19. 相川さんと風間くん


 「じゃあ、貴方で」


 と使命したのは男性陣の中でも若い伊勢野という人物を選んだ。


 「じ、自分ですか?」


 選んだ理由としては彼が比較的まともだと思ったからである。第一候補の一ノ瀬さんが消えた以上、まともな感性を持っていそうだと思ったのは彼だけだと直感したのだ。


 「すみません、自分ペーパードライバーです」


 「・・・・・・嘘」


 「すいません」


 第二候補も潰れた。

 

 「嘘でしょ、冗談やめてよ!」


 彼に詰め寄るが反って来る言葉は謝罪のみだった。


 詰んだ!!

 指定された時間までに目的地まで向かわないといけないというのに第一、第二候補者が潰れてしまった。

 どうしようかと悩んでいると、ある人物に声を掛ける。


 「ワタシガ、オオクリシマショウカ」


 その声は少し機械的にであるもののハッキリと聞こえた。

 声のする方に目をやると人の姿に似せて造られたアンドロイドがいた。


 「えと、誰?」


 「ハジメマシテ、コードNo.(ナンバー)C-3352プロトタイプ、ジリツガタエーアイ・・・」


 「ちょっと待って!!」


 私は名前を聞いたんであってロボットの製造ナンバーだのタイプだのを聞いた訳じゃない、そして長い!!


 「もうちょっと短めでお願い!」


 予備動作機能なのか(まぶた)をパチクリし、首を少し傾けた。


 「ミジカク・・・・・・」


 「製造ナンバーとかそういうのはいいから、分かりやすく呼びやすい名前ってコトよ」


 またも瞼をパチクリしながら数秒間が空いた。


 「ドノヨウナ?」


 どのようなと言われても勝手に付けて良いのか一ノ瀬さんの方を見ると、「いいんじゃない」という言葉が返って来た。

 

 いいって言うなら・・・・・・


 「それなら、アイちゃんでどう?」


 「ちなみに何故?」と理由を聞かれたので自信満々に答えてやった。


 「AIだから、アイちゃん!」


 その場の空間に流れる時間が一瞬止まった。男性陣は全員思った。

 それ、安直(あんちょく)すぎじゃあないかと・・・・・・


 「アイ・・・・・・」


 どうかと、提案し暫く悩んでいるのか間を開けて返事が来た。


 「アイ・・・ワタシノナマエハ、アイ」


 良かったね、本人も気に入ったようだよと一ノ瀬さんが言った。


 「私は武藤 蘭香、それじゃあアイちゃん急いで目的地までお願いね」


 「ワカリマシタ」


 蘭香とアイと名付けられたアンドロイドのアイとのやり取りを見た武藤 仁は考えていた。


 「伊勢野、お前もついて行け」


 「じ、自分もですか?」


 文句あるのかと無言の圧力を伊勢野にぶつけた。


 「わ、分かりましたぁっ!!」


 AI機能を搭載(とうさい)したアンドロイド改め、アイちゃんと義理兄に強制的にお目付け役にされた伊勢野と共に相川と風間がいる目的地へと向かった。






 この頃、某廃工場には大人数の男達が集まっていた。


 「リーダー、本当に来ますかね?」


 「来るさ、こっちには人質がいるんだ」


 街から少し外れた所に建てられた廃工場、鉄筋が剥き出しになったり場所によっては穴が空き雨風が入って来る。それでも彼らにとって(いこ)いの場として現在無断で使い集まった仲間達とバカ騒ぎをしている。


 「あの武藤 蘭香の友達って本当ですかね?」


 「もし来なかったら、その時はその女使って遊べばいいだろう」


 周りにいる仲間達は賛成~賛成~とゲラゲラと笑い中には相川にちょっかいを出す男もいた。

 

 「彼女~俺と遊ばない~・・・ギャハハハハ~~~っ!」


 「触らないで、来ないでよ!」


 ちょっかいを掛けられながらも近づいて来る男達を振り払おうと悪戦苦闘の中、自分を守ってボロボロになった風間の側を離れなかった。

 息はあるものの大勢の人数で風間は一人袋叩きに逢い虫の息状態となった。


 「風間くん・・・・・・」


 武藤さん早く来て!


 今にも泣き出しそうな気持ちを押し殺しボロボロになって倒れた風間の側を離れなかった。

 こんなコトになったのは今朝、いつもの様に学校にいて武藤 蘭香の到着を待っていると担任から休みだと言う報告を受け取った。武藤 蘭香がいない学校・・・・・・少し呆けていると、いつもの様に校門の辺りが騒がしかった。

 やはり、というか他校生の生徒が武藤の名前を呼び登校していた他の生徒を威圧していた。大事になる前に納めようと校門前に、いざ行ってみると多人数の男子達に周りを囲まれてしまった。

 相川はこの時、気づいてしまった。歳が近い男子とはいえ相手をするというのはとても勇気がいるという事に・・・・・・今さらながら気づいてしまった。

 相川は蛇に睨まれた蛙状態へとお陥ったのだった。


 武藤さんはいつもこんな気持ちで男子達の相手をしていたの・・・・・・


 気づいた時には遅かった。

 それでも風紀委員として、この学校の理事長の娘として毅然(きぜん)とした態度で彼らの対応を試みたが上手くは行かず、腕を捕まれ乱暴される処を風間が割って入り、庇う形で多人数から暴行を受ける事になってしまった。

 自分一人では無理だと判断して周りに助けを求めたが誰も手を貸すことなく足早にその場を去っていった。


 「だ、誰か・・・・・・」


 な、何で誰も助けてくれないの?

 本来ならいつも彼女(武藤 蘭香)が対応していたのに・・・・・・


 「や、止めて!! これ以上乱暴するなら警察にーーー」


 動かなくなった風間を身体を張って覆い被さる形で止めに入った。


 「邪魔するんなら次はお前の番だ」


 一人が腕を掴み拳を握る、そのまま殴られると覚悟すると既にボロボロになった風間が相手の足元にへばり付いていた。


 「このっ! しつこいんだよ!!」


 足元にいた風間を何度も何度も多人数が蹴り、踏みつけた。力尽きたのか風間は動かなくなった。


 「風間くん!!」


 彼に駆け寄る私にリーダーらしき人が近づき言った。


 「オイお前! 武藤 蘭香ってヤツを呼べ」


 「か、彼女は今日、休みでいないわよ!」


 「いないだと!?」


 すると周りにいた他の人達は笑い出した。


 「皆、聞いたか? いないってよ」


 「今日はおやちゅみでちゅか~?」


 「きっと逃げたんだよ」

 

 ギャハハハと大声で笑った。


 「今すぐ呼び出せ、でないとそいつがどうなってもいいのか?」


 男はバットを振り回しフルスイングした。


 「・・・・・・っ!」


 携帯を取り出し武藤に連絡を入れた。


 トゥルル~トゥルルルル~・・・・・・カチャ


 「武藤さーーーんっ!!」


 耳がキィーーーン


 「大声で喋らなくても聞こえるって、何なの?」


 「か、風間くんが・・・風間くんが・・・グスッ」


 「風間がどうした?」


 私の携帯を奪い男が話し始めた。


 「・・・武藤 蘭香だな?」


 「誰よ、アンタ?」


 男は携帯のカメラ機能を使い私と風間くんの写メを一枚撮った。武藤さんにその写メを送った。

 話しが終わったのか私の携帯を投げて返して来た。


 「貴方達、こんなコトしてタダじゃすまないわよ!」


 「タダじゃすまないわよ~ん・・・ギャハハハ~」


 「む、武藤さんが来たら、あ、貴方達、無事じゃあすまないわよ」


 ゲラゲラと男達は笑った。


 「オイお前ら、この二人を連れていつものたまり場に行くぞ!」


 その合図に相川は両側を男達に捕まれ、風間と共にそのまま何処かへと連れて行かれた。

 バイクで街外れまで走り着いた場所は一軒の廃工場だった。


 「ようこそ、俺達のたまり場へ!」

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