18. 会社訪問の末
「いっ妹ぉぉぉーーーっ!!!」
四人は一同、驚愕した。
「う、嘘・・・・・・」
兄妹・・・いや全然似てないし、顔の作りが全く違うし、もう別モンだろと四人は思っていた。
部屋の端で様子を見ていた私は何やら視線が此方に来ていたので義理兄の傍まで近づき四人に挨拶をした。
「昨日ぶりですね皆さん、義理の妹の蘭香です」
嫌味を込めた笑顔で丁寧にお辞儀をした。
「ん? 義理の?」
伊勢野が気づいて声に出した。
「こいつとは血縁関係はないが戸籍上は兄妹なんだ」と武藤 仁から補足がたされた。
「戸籍上?」
宇佐見が聞いた。
「三年前亡くなった親父が養子に引き取ったんだよ」
副隊長の親が引き取った。
だから、五人がかりでも逃げられたのかと納得した。
しかし、此処であるコトに気がついた。
というコトは俺達副隊長の身内に手を出したという事か!!
よりにもよって副隊長の身内に手を出していたなんて、隊長なんて任務を出したんだ!!
これ、完全に詰みでしょう・・・・・・
だから副隊長の顔が鬼の様な顔に・・・・・・
「だから、極秘任務だったんですね」
伊勢野が呟く。
「俺達、隊長にハメられたのか」
四人は酷い脱力感に襲われたが武藤 仁の声に我に返った。
「お前ら、妹に何か言う事があるんじゃないのか」
四人はその場で土下座と謝罪をした。
「すいません!!」
「怖い思いさせてごめんなさい!!」
「仕事とは言えごめんなさい!!」
「本当にすいません!!」
額を地面に擦り付ける勢いで謝った。
約一名、意識が無いのかそのまま動かないが全員からの謝罪を受け取ることにした。
「謝って頂けたので、もう良いですよ」
天使だ! 俺達を救ってくれた天使だと宇佐見は感激してあたが、天使の傍には鬼がいた。
「お前らには後から処分を言い渡す、それまで謹慎だ」
「仁、後で隊長にも話しをしないとね」
忘れてはならない今回の黒幕にも注意するべきだと一ノ瀬は言った。
「そうだな!」
何とかルーサーの二の舞だけは避けられホッとする四人だったが、ディックがあるコトに気がついた。
「そういえば、なんで地下格闘技場にいたの?」
「!?」
まさかの言葉に私は焦った。
有耶無耶に出来るんじゃあと思っていたのにディックのこの一言で義理兄が食いついた。
「地下格闘技、何の事だ?」
義理兄にはその部分はあえて話さなかったのにディックという男性が余計な事を口にしたため風向きが悪くなった。
「俺達が声掛けしたのは格闘技場の付近です」
宇佐見も発言した。
「俺は何も聞いてないぞ、蘭」
マズイ!!
義理兄の矛先がこっちに来た。何とか誤魔化さないと!
「・・・じ、実は学校生活があまり馴染めなくて、それで格闘技場の事を知って推しの選手を応援していたの・・・・・・」
キャラじゃない!!
こんなコトするのは私のキャラじゃない、心とは裏腹に瞳をキラキラさせ義理兄に訴えた。
何とかコレでこの場を遣りきろうと可愛気で押し通した。
「・・・・・・そうか」と何故か納得した武藤 仁だった。
ゴスン!!
大きな音がしたので振り向くと宇佐見が頭を地面に叩きつけた音だった。
「いやいやいや、おかしいでしょ副隊長!!」
頭から血を流し宇佐見は抗議した。
「女子高生が地下格闘技にいたんですよ、もっと怪しんで下さいよ!!」
「確かに未成年が入る所じゃないが選手の応援をしてあたんだろ、何がおかしい?」
マジかこの人!
義理とはいえ、妹には甘過ぎないか?
「それに彼女は選手の応援していたんじゃなく選手・・・・・・」
言いきる前に宇佐見は言葉を詰まらせた。
天使の顔が変わっていた。
「私は客席で応援していました」
語気を強め笑顔で言った。
鬼が二人・・・・・・
確かに兄妹だ、この二人・・・四人はそう思った。
武藤 蘭香、彼女から迸るソレは武藤 仁と同じモノを感じた。
「まぁでも、未成年が一人で危ない所へ行くのは感心しない」
「は~い、今度から気おつけます」
満面の笑顔で答え、何とか誤魔化すことに成功した。
やっぱコレ、私のキャラじゃない。自分でやってて何だけどイラッとくるわ。
それに言える訳ないじゃん、リング名持ってる選手ですなんて言ったら怒るに決まってるじゃん。今さっき四人の尋問を目の当たりにしたばかりなんだし。
ストレス発散目的ですなんて口が裂けても言えるか!
プルルル・・・プルルル・・・・・・
「誰、こんな時に」
私の携帯が鳴り画面には相川の名前が写しだされていた。
うげぇ!! なんでこんな時に、渋々電話に出てみると電話越しに大声で喋り始めた。
「武藤さーーーん!!」
耳がキィーーーン
「大声で喋らなくても聞こえるって、何なの?!」
「か、風間くんが・・・風間くんが・・・グズッ」
え? 何、泣いてるの?
「風間がどうした?」
電話越しから相川の悲鳴が遠くから聞こえた。
「・・・武藤 蘭香だな!」
「誰よ、アンタ?」
相川の携帯から知らない人物が変わった。声からして男性のようだ。
「俺は岩高の綱山だ、武藤本人で間違いないな」
「用件は何なの?」
「聞くまでも無いだろう」
嗚呼、こいつもウチの学校の生徒と同じ人種で喧嘩上等ってヤツかと気持ちが冷めた。
「そういうコトは私が学校に入る時にして欲しいんだけど」
「そっちの事情なんて知るかよ! コッチの要求は呑んで貰うぞ武藤 蘭香!」
五月蝿いなコイツ、周りに仲間がいるから虚勢を張っているのか声も態度もデカ過ぎて相手するのが嫌になる。
「悪いけど今、忙しいから後にしてくれない」
すると一件のメールが届いた。
届いたのは写メで中身を見たら倒れてる風間と縄で縛られていた相川の姿だった。
「!?」
相川・・・と風間だよね?
風間の顔が赤く腫れている。 まるでルーサーと呼ばれた義理兄の仕事仲間と同じ様な姿になっていた。
「送ったモノは見たか、俺の要求を呑まないなら次は女の顔が酷いコトになるぞ」
「・・・分かった、要求って?」
電話の男性は勝ち誇った様にフフンと鼻で笑った。
「場所と時間はメールで送ってやるから必ず一人で来い」
男性の高笑いが聞こえ電話は切れた。
直ぐに場所と時間が書かれたメールが一件届いた。メールの内容を確認した。
電話の相手は今頃、電話一本で呼び出した俺スゴい! なんて思っているヤツの要求を呑むのは癪に障るけど、風間はともかく相川まで酷い目にあったら流石に目覚めが悪いし助けに行くか。
「という訳で用事が出来たので誰か運転できる人はいませんか?」
だったら俺がと武藤 仁が名乗りを出たが、これを拒否した。
「それ以外の人でお願いします」
「な、何でだよ!?」
「自覚無いなら、この際言わせて貰うけど貴方目立つから一緒にいたくないのよ!」
目立つ、一緒にいたくない言葉の矢がグサグサ刺さった。背中を丸め大きな身体を震わせ、か細い声で泣いた。
その場に膝を着いてショックを受ける義理兄を無視して私は淡々と運転手を決めた。
「じゃあ、一ノ瀬さんお願いします」
「ごめんね、仕事が有るから」
サラッと断られてしまった。
第一候補者だった一ノ瀬さんから断られ困った、残った男性陣を値踏みし慎重に吟味した。
「じゃあ、貴方で」
と言って決めたのは、この中で若い男性の伊勢野という人物を使命した。




