16. 鉄拳制裁
私が怪我や昏睡で病院送りになり義理兄の形相が凄いコトになってしまった。
最早、人間とは言えない様な形へと変わっていくのを私は見てしまった。
か、顔が・・・顔が!
「待ってろクソガキ共!!」
燃え盛る憤怒のオーラを纏い部屋を後にしようとしたので止めに入った。
「ま、待って義理兄さん!」
こんな義理兄を外になんて出したら大変な事になるに決まっている。
「うくっ!」
義理兄を止めようとした瞬間、頭痛が走り頭を抑えた。
「蘭、大丈夫か!?」
苦しむ私の様子に義理兄は側にいた。
「だ、大丈夫だから、怪我も学校でした訳じゃないから」
頭痛の影響なのか昨日の記憶が流れ込む様に思い出した。
しかし、思い出したは良いものの何と義理兄に伝えたら良いのか困った。
まさか、途中で学校を休んでその足で地下格闘技場で暴れた帰りにナンパ男と刃物持った男性達に絡まれて逃げたなんて・・・・・・義理兄には言えない!
この場に一ノ瀬さんが居てくれたら・・・・・・
「実は友達と遊んでて遅くなっちゃて帰りに公園で少し寄り道してたら変な男達に絡まれて・・・・・・」
「変な男達!!」
前半の部分はカットして男達に絡まれて怪我をしたというコトにして義理兄に説明したのだ。
間違ってはいない、男に絡まれて怪我をしたのは本当の事だし何も間違ってはいない。
頭痛の痛みと塩らしい態度で訴えた。
こんな手は使いたくなかったけど、仕方が無い。
「そいつ等のコト覚えてる限りでいい、話してくれ!」
ちょっとあざとかったけど何とか誤魔化せたから良しとしよう。
「えっと、最初に男性二人からナンパされて・・・・・・」
ナンパァッ?!
「断って帰ろうとしたら別の男性が二人いて一人は刃物持って切りつけてきて・・・・・・」
刃物で切りつけた・・・だから蘭の制服は穴だらけだったのか!?
「逃げようとしたら隠れていた別の男性が出て来て・・・五人の男性に襲われ・・・・・・」
相手は五人!!
「隙をついて逃げて帰って来たの、グスッ・・・」
最後は嘘泣きで話を閉めた。
「そうか怖い思いをしたな」
そう言ってまた私の頭を大きな手の平で撫でた。
「他に男達の特徴は覚えているか?」
特徴・・・・・・あっ!
「そう言えば、名前を呼んでいたような・・・?」
「名前、男達の名前か?」
多分と答えた。
「確か・・・うさぎ?とか伊勢エビ?とか」
うさぎ・・・伊勢エビ?
「あとは、刃物で切りつけた人は身体中傷だらけだった」
うさぎと伊勢エビ、それに傷だらけの男・・・・・・
武藤 仁の頭の中には、ある人物達の顔が浮かんだ。
まさか・・・
意識が戻った蘭と話していると内ポケットに入れていた携帯が鳴った。画面には一ノ瀬と表示されていた。
「ちょっと悪い」と言い席を外し部屋から出て掛かって来た相手と話しをした。
「一ノ瀬か、何か分かったのか」
「君から受け取ったモノを調べたら混合物の成分を発見してね」
「混合物ってことは」
「明らかに市販品ではなく作られたモノだね」
「それで相手を特定は出来ないか?」
「いくらボクでも難しいねぇ~・・・ただ・・・」
「?」
「これと同じ様なモノを以前見たコトがあって」
見たコトがあると言うことは・・・・・・
「実は蘭が目を覚まして色々聞いてみたんだ」
「蘭ちゃん意識が戻ったのかい?」
「ああ、それでなんだがーーー・・・」
「・・・なるほど、実はボクの方からも彼等から聞きたい事があるんだよ」
聞きたい事?
「どうもこの一件あの隊長が絡んでるみたいなんだ」
隊長絡み・・・やっぱり俺がいない間に何か企んでいたんだな。
「そこでなんだけど仁、蘭ちゃんを連れてコッチに来れないかい?」
「蘭も?」
「事の詳細を本人達の口から聞こうと思ってね、どうかな?」
「・・・・・・」
「無理強いはしないから一応相談してみてよ」
「分かった」
携帯を切った。
電話を済ませ病室に戻った。
「お仕事の電話だったの?」
「一ノ瀬からだ」
「一ノ瀬さんから?」
相談・・・かぁ~、悩んだ。
「どうしたの?」
何か言いたげな顔をしながら目線を下に泳がせ口をへの字にしてタメ息を吐いた。
「犯人を特定出来た」
えっ? 早っ、もう?! あれだけで?
私が襲われて半日位しか経っていないのに、どうやって?
「実はな、お前を襲ったヤツ等・・・俺の知り合いだ」
義理兄の知り合いってコトは仕事関係の人・・・・・・
話の流れ的にヤバくねー。最悪ハショッた地下格闘技場にいた件の説明するコトに成りかねない。何とか良い言い訳を考えておかないと・・・ゴリ押し、出来ないかな・・・・・・
「それでな、確認したいから一緒に来てくれないか?」
確認? 行くって何処へ?
「大丈夫だ、今度は俺も側にいて守るから!」
「・・・・・・」
ここでNOって言ったら変に思われるだろうし・・・・・・色々考えてYESを取った。
ナンパ男と切り裂き魔のいる所へ・・・
「・・・分かった、行くよ」
受付けで料金を払い退院の手続きを行った。
手続きの最中、受付けにいたナース達がヒソヒソと話しているのが聞こえた。
義理兄さん目立つんだよね~。
本人は気づいているのか、いないのか知らないけど周りからピンクの声援が飛び交って来るのを隣で聞いているのは正直辛い。
だからこの人と一緒に行動するのはイヤなんだ。
止めていた車に乗り込もうと駐車場へ向かうと目を疑った。
黒塗りの高級外車っ!!!
「この車、義理兄さんの?」
そうだ、という答えが帰って来た。
車に乗り込むと、中も凄かった。
運転席、助っ席、ハンドル、諸々、皮仕様っ!!!
前からおかしいとは思っていたけど高級車乗り回すって、どんな仕事しているんだ!!
武藤 仁の運転で目的地を目指した。
やっぱりNOって言えば良かったかな?
車を走らせ一時間程、人気の無い砂利と砂地が広る広野に着いた。そこには大型の飛行機が止まっていた。
「!?」
政府の要人や官僚なんかが使っている様な立派な飛行機が目の前にあった。
高級外車に大型飛行機・・・、義理兄さん何の仕事してるんだろ?
ダメだ心臓に悪い・・・・・・
車から降りるとついて来いといわれ、ついて行くと前から大きな欠伸をしながら頭をかいて歩く男性がいた。
その男性は義理兄に気づき話し掛けて来た。
「はぁ、何でいるんだよ、休みだったんじゃあ?!」
義理兄は目を細くしてから、後ろにいた私に声を掛けた。
「こいつか?」
「その人よ! 刃物で私を襲った人!!」
指を差して大声で呼ぶと男性も私に気づいた。
「はぁっ、何でお前が此処に!!」
男性がそう言った瞬間、男性は強い衝撃で詰まれた荷物のコンテナまで身体がぶっ飛んだ。飛ばされた衝撃でガッシャーン!! と大きな音が機内に響いた。
義理兄は男性をワンパンで殴り飛ばしたのだ。
「!!?」
に、義理兄さん・・・その人、○んだんじゃあ・・・
余りの衝撃的な光景に声が出なかった。
「ルーサー、今の何・・・っ!?」
音に気づいてディックが出て来た。
「ふ、副隊長!?」
コンテナで倒れるルーサーと副隊長を交互に見てディックは青ざめ、状況が把握出来ずにいた。
義理兄さんの側に私が居るのに気づくと慌てた。
「き、君、どうして此処に!」
私はその問いに答えなかった。
ふっ飛ばされた勢いと痛みで身体が動かないルーサーの首根っこを掴み引きずる形で運んだ。
「ディック、あと三人もデッキに呼んで来い話しがある!」




