14. 五人の男達
地下格闘技場の裏からひっそりと抜け出し人目を避け路地裏を通って街に続く歩道を歩いた。
此処まで来れば大丈夫だろうと歩いている途中で公園を見かけ立ち寄った。辺りは日が落ちかけ時刻は十七時を回っていた。公園に設置されていた自販機にお金を入れて飲み物を買った。
控え室で飲んだ一本では足りなかったので、追加でもう一本買うのに寄り道をしたのだ。
飲み物を飲んでいると携帯が鳴った。
「ん?」
画面には義理兄と写ったメールを一件受信した。
【夜は外食しないか?】と短い内容の文だった。
外食は嬉しいけど、義理兄と一緒・・・・・・、只でさえ目立つ人なのに、本人に自覚が無いのが困る。
返事は帰ってからにしようと制服の内ポケットに終い公園を後しようとした時だった。自販機に近寄る人の気配を感じた。
「今晩はお嬢さん、今からボクとデートしないかい?」
いきなり表れたウェーブが掛かった金髪の男性に声を掛けられ、その場に固まった。
(今時まだいるんだ、こんな人。)
夜間にのみ出没するというナンパ男ってこんな感じかと思ってしまった。
「すいませんが急いでいるので!」
キッパリ断らないと、この手合いはしつこく粘着してくるから何言われてもNOーで貫いた。飽きれば諦めるだろうと思っていたが、違ったようだ。
ナンパ男を断り早足で振り切ろうとしていると前方には、また別の男性が表れ前を塞ぐ形で立っていた。
「!?」
「お話しがあります、お付き合いをお願いします」
男性二人は私を挟む形を取った。前方に姿を表した男性は最初に表れた男性より若い男性で丁寧な口調で話したて来た。
「アンタもあのナンパ男の仲間なの?」
ウェーブが掛かった金髪の男性は後ろから少しずつ距離を詰めて来た。
「いや、自分はナンパなんて!!」
若い男性はナンパ目的で声を掛けたと思われ顔を赤らめ違うというジェスチャーで全力で誤解を解こうとした。
「ちょっと話しをするだけだからさぁ~」
後ろから近寄る金髪の男性が肩に手を置いた瞬間、その手を掴んで一本背負い投げをした。
「は?」
一瞬の事だったので金髪の男性は呆気にとられ気がつくと自分の背中が地面に付いていた。
「宇佐見さん!?」
金髪の男性が倒れ、前方にいたもう一人の若い男性に自販機で買ったペットボトルを投げた。男性は投げつけて来たペットボトルを反射で払うと、その間に距離を詰め若い男性の目の前まで行き男性の胴、めがけて回し蹴りをお見舞いしてやった。
「伊勢野!!」
蹴られた若い男性は痛みが走り膝をついて地面に倒れた。
「がはぁっ!!」
逃げるチャンスだと思い公園から出ようとすると公園の入り口近くに、また別の男性が立ち塞がるようにして待っていた。
新手!?
前には傷だらけの男が近寄って来るので後退りすると後ろにも別の男性が、また挟みうちにする形で立っていた。
全部で四人? ナンパにしたって数が多すぎないか?!
「な、何なのよアンタ達!?」
前にいた傷だらけの男性が隠していた得物を抜き肩に担ぐ格好で更に距離を詰める。
「なかなか、生きが良いなお前」
暗闇の中、傷だらけの男性が手にしているモノが刃物だという事が街灯のライトに反射して気づいた。
おい待て、街中で刃物を平気で出してる!
「は、刃物なんて銃刀法違反でしょ!」
傷だらけの男性は踏み込み一気に距離を詰め持っていた刃物を振り降ろした。何度も何度も、その刃物が私を襲う。
は、早い!
刃物の起動を読んで避けるも着ていた制服ズタズタに切られ穴だらけになっていく。
「おらおら、上手く避けねーと怪我するぜ!!」
後ろにいた男は傷だらけの男性に叫んだ。
「ルーサー、やりすぎダメ!!」
「実力を見るって言ったのはお前らだろーが!」
傷だらけの男性が大きく振りかぶったタイミングを計り、刃物を両手で止める事に成功した。
良し、これで武器を使えなくすればーーーっ!?
白羽取りの要領で刃物を止めると見ている視界がおかしくなった。
あれ、何だ? 視界が霞んで・・・いく・・・・・・
「うくっ!」
身体がふらつき、その場に立っていられなくなった。
何だ、急に・・・眠気が・・・・・・!?
膝をつき地面に倒れたそうになるのを両手で支えると隠れていた五人目の男性が手には銃らしいモノを持って出て来た。
自分の身体を調べると小指の第一関節よりも小さい容器が刺さっていた。
原因はコレのようだ。
その小さい容器を取ると先が細く小さな針になっていた。
クソッ・・・意識が・・・・・・
薄れる意識の中、暗闇で光る刃物が私を襲う。
「大人しく寝てな!」
カキィーーーン!!
甲高い音が響いた。
私の後ろにいた四人目の男性が傷だらけの男性の刃物を止めた音だった。
「んあ?」
「ルーサー、これ以上良くない!!」
「邪魔すんじゃねーよ、ディック!」
「女の子、怪我させる良くない」
ルーサーとディックが揉めている間に私は地面にバタリと倒れた。
「眠ったか?」
隠れていた五人目の男性ゼルが表れた。
「ゼル、薬良くない!」
「動きを止めるのに麻酔を射っただけだ」
「ゼルもそうだがルーサー、お前はやり過ぎだ!」
後から宇佐見と伊勢野が表れた。
「一般人の女子高生に乱暴したなんて副隊長に知られたらどうするんだ!」
「副隊長なら、きっと鬼の形相で雷が落ちますね」
伊勢野がそう言うと全員、副隊長の顔が脳裏を過り皆、ブルッと身震いをした。
「彼女どうする?」
倒れた私の側にいたディックが聞いた。
「このままって訳にもいかないし、取り敢えず俺達が使ってるホテルまで連れて行こう」
宇佐見が伊勢野に指示を出した。
「念の為に一ノ瀬さんにも連絡しておこう、何かあった時用にブレーキ役が必要だ」
これは、全員頷いた。
五人が少し目を離したほんの一瞬の出来事だった。その一瞬の隙を私は逃さなかった。
カッと目を見開き、それに気づいたディックは声を上げる前に目を覚ました私に顔を蹴られよろめいた。
「「「「!!?」」」」
男性を一人蹴飛ばし残っていた力とを振り絞って、その場を逃走した。
「待てよテメェー!!」
ルーサーは掴もうとしたが、伸ばした手は空を切った。
「動けるはずがないのに何故!?」
「あのガキ、逃がすか!!」
「ルーサー乱暴良くない!」
後ろから羽交い締めして止めるディックに暴れる、ルーサー。
「離せ、あのガキ逃げちまうだろう!」
慌てる四人に対して伊勢野だけが気づいた。
彼女が倒れた辺りから赤いモノが点々と続いていた。その赤いモノに触れると液体の様に流れた。
これはまさか、血! 血液!?
自分の身体を傷つけて逃げたのか!
時刻は夜の十九時を回った。
「遅いなぁ~、友達と遊んでいるのか?」
自宅で私の帰りを待つ武藤 仁が落ちつかず部屋をウロウロ歩き回っていた。
「あいつだって年頃だし、時間を忘れて友達とあそびたいよなぁ~」
部屋をウロウロ・・・・・・
来るなといわれたが、心配だし自宅の辺りを見て来るか。
部屋の扉を開けると足元に人が倒れていた。
「!?」
うつ伏せに倒れた人物の顔を確認すると、それは義理の妹、武藤蘭香だった。
「蘭、どうしたんだ!」
抱きかかえると手の平に赤いモノが付着した。
「お前、怪我しているのか?!!」
何度呼んでも目を覚ます事はなく身体が冷たい生で顔色が悪かった。
「おい蘭、何があったんだ! 蘭、蘭ーーーっ!!」




