表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

01.  序幕

        



 青い空、白い雲、甘酸っぱい異性との恋愛模様、友情を創る部活動。そんなことを夢見た学生生活が音を立てながら崩れていったのは高校の入学式の直ぐ後だった。

 入学式も終わり帰る途中で男子生徒数人が女子生徒を囲って絡んでいるのが見えたので止めに入ったのがきっかけだった。今にして思えば、やめておけば良かったのに、こういうコトは黙って置けない性分だったので女子生徒を助けに間に割って入った。

 当然の展開で男子学生は私の腕を掴みに掛かったので、その場で全員投げ飛ばしてやった。事が済み女子生徒を逃がしてあげた。

 投げ飛ばされた男子生徒はうめきながら何かを言っていたようだが私は無視して、その場を去った。


 


 「よう、お前が武藤(むとう)蘭香(らんか)だな。この前、世話になった仲間の(かたき)だ!」


「・・・・・・」

 登校した途端に男子生徒数人に囲まれ、リーダーらしき男子生徒が私を指差し喋り出した。

 これは、所謂(いわゆる)お礼参りというヤツか?と目を細めて話を聞いていた。


 「相手が女でも関係ねー!!」


 「まぁ、土下座して謝るんなら考えてやるけどなぁ?」


 男子生徒の視線が顔より下にあるのに気づき、タメ息が溢れた。目線が完全に胸元だったので近くにいた一人の男子生徒を肩に担いでいた鞄で顔めがけて振り下ろした。


 ゴスッ!!!

 

 「フゲェッ!!」


 鈍い音がした瞬間、男子生徒は地面に崩れ落ちた。


 「!!?」


 「な、何しやがる!?」


 私を囲んでいた他の男子生徒達はザワついた。

 そんな、男子生徒達にもう一度タメ息をつきながら言ってやった。


 「朝から五月蝿いんだよ! バカ共がぁっ!!」


 

 「ば・・・バカ、だと・・・! お前らぁ、ヤッちまえ!!」


 それを合図に男子生徒達はわざわざ、持参した釘バットや木刀、中には懐に入れていた小型の折り畳みナイフを手に襲って来た。



 キーンコーンカーンコーン~・・・・・・

 

 時間にして五分と掛からなかっただろう。学校の鐘の音が鳴り終わる頃には終わっていた。


 「全く、いつもいつも学校来る度にこれだよ」

 

 服に付いた土埃りを軽く払い除けて足元で倒れている男子学生を(また)いで校内に入った。


 「い、痛てぇ~よぅ~・・・・・・」


 「ちくしょう~・・・・・・」


 「あいつ、本当に女なのか?!」


 何か聞こえたようだが無視して玄関へ向かった。


 「うわっ、やべ~よ・・・・・・」


 「あの(ひと)また、やってるよ」


 「おい、あんまり見るなよ! 目が合ったらやべーよ!!」

 

 上から声が聞こえると思ったら窓やベランダから覗いて見ていた他の生徒達がヒソヒソと話している。

 野次馬根性はあっても助けようって人は誰もいなかった。

 


 「うわっ、やべぇ~、俺目が合っちゃったよ!」


 こんなことなら学校なんて来なきゃよかった。

 重たい足を動かし自分の教室へ向かう。教室の扉に手をやると扉越しで聞こえてるクラスにいる人の声のヒソヒソ声。


 やっぱり、来るんじゃなかった。途中で()()バックレるか・・・・・・


 ガラカラガラ~・・・・・・


 「やぁっーーー!!」


 バチーーーンッ!!!


 「ブヘェッ!!」


 教室の扉を開けた瞬間、頭部に痛みが走った。

 

 「また学校で暴行事件をおこしたわね、武藤蘭香!」

 

 痛みが走る頭部に手を当てると目の前で竹刀を手に立っていた長髪の女子生徒がキリッとした面持ちで構えていた。

 ぼ、暴行って、今、貴方がやったのはカウントされないんですか?! 


 「あ~い~かぁ~わ~! いきなり何すんだ!!」


 「見ていたわよ、校内での騒ぎ!」


 いや、見ていたんなら止めに来いよ!!


 「暴力はダメって何度も言っているのに、何で止めないの?!」


 「だったら、止めに来い! 風紀委員だろっ!!」


 目の前で竹刀を向けている彼女は同級生の相川百合亜、腰まで長い長髪に整った顔立ち、大和撫子という言葉が似合いそうな女の子だ。


 「と、止めに行く前にいつも終わってるし、それに・・・ちょっと怖いし・・・」

 

 最後の辺りはゴニョゴニョ言っていたが、しっかり聞こえたぞ! 怖いって言ったな。


 「風紀委員、仕事しろよ」


 「だって、上級生ばかりだったし、武器持ってて危なかったから・・・・・・」


 また何かゴニョゴニョ言いだした。


 「貴方が持っているソレは何ですか?」


 彼女が持っていた竹刀を何度も指差し言ってやった。

 すると何故かプルプルと小刻みに震え出した。


 「だって、だって・・・・・・」


 「泣くなよ!!」


 この問答が毎朝の日課(ルーティーン)になっていた。

 

 勘弁してよ、朝から・・・・・・

 そんなことをやっていたらまた、頭部に痛みが走った。

 今度はそれ程痛くは無かった。


 ポスン・・・・・・


 「何、騒いでいるんだ朝礼だぞ、席に着け」

 

 クラスの担任教師だった。


 「それと武藤、朝礼終わったら職員室な!」

 

 ウゲェ!!


 「た、体調が悪いから保健室に・・・・・・」


 「逃げたら居残りと宿題の量増やすからな」


 「・・・・・・、はい」


 教師の出現により止まっていた朝礼が進んだ。


 私は後にある自分の席へ着くと机に何か飛んで来た。

 ノートの切れ端を丸めたモノで中を見たら文字が書いてあった。


 "反省しなさい 相川"


 「・・・・・・」


 後でコイツ泣かせてやる・・・・・・

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ