コンビニのマットが、ちょっとだけめくれてた
真夏のゲリラ豪雨に見舞われて、急いで入店した足元は、僕と同じ目的で先に入店した足跡で光っていた。めくれた足拭きマットはいつもより濃いグレーを。
入り口付近に掛けられた残り少ないビニール傘を1つ手に取り、部活で不足した水分を求めてスポーツドリンクを選んだ。
少しだけドリンクコーナーの冷気で涼み、セルフレジで会計を済ませる。
突然「キュ」っと体育館の床をバッシュで擦った時のような音が耳に響き、同時に、「ドサ」っと床にバッグを放り投げたような音がした。
すぐに、入り口の床とその音が結びつき、全てを察した。
出口の方を見ると、老婆が床に横たわっている。すぐさま店員が介抱に駆け寄った。
自動ドアが閉まるのを、よじれた足拭きが邪魔をしている。
倒れたそれを横目に、マットのシワを足でならすようにしてどかすと、店員の困った顔を横目に傘を開く。
まだコンビニを出て100mちょっとしか歩いていないと言うのに、ぶ厚い雲の隙間から光が漏れ始めた。
傘の取手に貼られた554円+税のシールに気がつき、爪でガリガリ剥がしていると、救急車が横を通り過ぎる。
ふと目で後を追うと、少し曇ったビニール傘越しに、救急車の向こう側にうっすらと虹がかかっているのが、見えた。