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 あれからしばらくハンナは塞ぎこみ気味だったが、ソニアやレフティア公爵のおかげで少しずつ元気になっていった。

 そんな中でも特に元気にさせてもらっているのが床頭台の上に置かれた花束であり、毎日、ハンナが眠っている際に誰かが替えてくれているのだ。

 そこで、ハンナはこの花束を持ってきてくれている人物にお礼を言うために、昨日は早めに寝て今日はかなり早い時間に起きていたのである。


 日が出ていない時間に起きてしまったけれど、流石にまだ来てないわよね……


 ハンナはそう思いながら花束を確認する。まだ昨日のものである事がわかりホッとしていると、病室の扉が音もなく開き、看護師の女性とルーカスが花束を持って入って来たのだ。


「ルーカス様⁉︎」


 ハンナは思わず起き上がり大きな声を出してしまった。その所為で看護師もルーカスも驚いてしまう。


「ハンナ嬢……」

「起きてらしたのですかお嬢様⁉︎」

「は、はい……。いつもその花束を持って来て下さる方にお礼を言いたくて。でも、まさかルーカス様だとは思いませんでした」

「あっ、いや、なんだか私で申し訳ない……」


 ルーカスは申し訳なさそうな顔をするため、ハンナは慌てて首を振った。

「ち、違うんです! 私はてっきり、仲の良い学友か親戚の方かと思っていたので……」

「……エリオットではなくてか?」


 ルーカスは恐る恐るそう聞いてきたが、ハンナは笑顔で首を振る。


「はい。あの方が来る事は絶対ないですから」

「そうか、君は吹っ切れたんだな……」


 ルーカスはホッとした表情になる。しかし、ハンナはルーカスとフィナが婚約解消した事を思いだし慌てて頭を下げた。


「ごめんなさいルーカス様」

「えっ? な、何故ハンナ嬢が謝るんだ?」

「……妹との婚約解消の件です」

「ああ、それなら全く気にしてないし、むしろ解消できで良かったぐらいだ」

「えっ、そうなのですか?」


 ハンナは驚いてそう聞き返すとルーカスは笑顔で頷く。


「正直、フィナ嬢との婚約は親の都合で結ばれたものだからね。まあ、私のためを思っても少しはあったのだろうが婚約を結んだ相手が悪かった。全く商会に顔を出さないし将来平民として生きる私に対して態度が悪すぎたのもある」

「申し訳ありません。妹に代わって謝罪致します」


 ハンナが頭を下げようとするとルーカスが慌てて止める。そして申し訳なさそうな表情をした。


「ハンナ嬢が謝る必要はないよ。むしろ謝らなければいけないのは私の方だ」

「えっ、どういうことですか?」

「エリオットがフィナ嬢と徐々に仲良くなるのを私は止めようとしなかった」

「……それは、しょうがありませんよ。妹はエリオット様を狙っているようでしたし、エリオット様も私が目を覚まさなかったので愛想が尽きてしまったのでしょうね」

「だからって妹と付き合って結婚前に子を作るなんて貴族としてあるまじき行為だと思うけどね」

「確かにそうかもしれませんね……。でも、二人は平民としてやっていくわけですから問題ないと思いますよ」


 ハンナがそう言った瞬間、ルーカスは驚いた表情をした後、口元に手を当てて吹き出した。

「ぷっ! た、確かにそうだな。ふふふ、これは楽しくなってきたな」

「楽しくなってきたですか?」

「いや、君がある事を心配すると思ったが、やはり君は立派な貴族だね。ふふふ」


 ルーカスはそう言って笑いだす。ハンナは何がなんだかわからないが、とにかくルーカスがフィナとの婚約解消を気にしていない事にホッとするのだった。



 ソニアside.


「そう、ハンナは気にしてないのね」


 病院の応接間でソニアが楽しそうに聞くとルーカスは頷く。


「はい。なので頃合いかと」

「わかったわ。では、早速キリオス伯爵家の掃除を始めるわ」

「じゃあ、私は例の人物を捕まえておきますよ」

「お願いね」

「ええ」


 ルーカスは頷き応接間を去っていくと、入れ違いにレフティア公爵が入ってくる。


「どうやら、始めるようだな」

「ええ、なのでお兄様もお願いしますね」

「ああ、陛下には既に話はつけてある」

「ふふ、ではキリオス伯爵邸にいる者達にはそろそろ夢から覚めてもらいましょう」

「ああ、そして地獄に落としてやる」


 ソニアとレフティア公爵は二人して不敵な笑みを浮かべるのだった。


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