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 エリオットside.


 あれからルーカスからの情報もなく、一ヵ月程、エリオットは学園とタウンハウスを往復する毎日であった。

 そんなエリオットだが、正直、勉強に全く身が入らなくなっていた。

 それはエデュール伯爵家内で、今だに目を覚まさないハンナとの婚約を解消した方が良いのではと話が上がっているからだ。

 エリオットはその話を聞いた時に内心でどこかホッとしている自分がいたが、気づかないフリをし毎日を過ごしていた。

 そんなある日、授業も終わり帰ろうとしたら、フィナが現れ声をかけてきたのだ。


「エリオット様ぁ、今日、うちに寄ってかれますかぁ?」


 しかし、エリオットは首を横に振った。


「婚約者でもないのに流石にまずいだろう。僕じゃなくルーカス様を誘ったらどうかな?」

「ええーー! 私はエリオット様が良いんですけどぉ」

「はっ?」


 エリオットはフィナの言葉にギョッとした後、周りを見まわし誰もいない事がわかるとホッと胸を撫で下ろした。


「フィナ嬢、流石に今のは心臓に悪い。ルーカス様は侯爵家の方なんだから言葉には気をつけた方が良いよ」

「別に卒業したら貴族籍を抜けて平民の商人になるんだから大丈夫ですよぉ。それより、いつまでお姉様の事を待つつもりですかぁ?」

「それは……」


 エリオットは言葉に詰まり俯いてしまうと、フィナは覗きこむように見ながら言ってきた。


「いつまでも、起きない人を待つより婚約者を私に変えちゃった方が良いんじゃないですかぁ」

「な、何を言ってるんだ! 君はルーカス様の婚約者だろう⁉︎」

「将来、平民になる人より私はエリオット様の方が良いんですよぉ」

「僕の方が良い? でも、僕だってハンナと結婚できなかった場合は立場的にはルーカス様と一緒だよ……」

「全然、違いますよぉ。だって、ルーカス様は仕事の話ばかりで全然面白くないんだもん。その点、エリオット様は優しいし素敵じゃないですかぁ。それに……」


 フィナは最後の方は何か小声で言ってきたが、ルーカスより素敵だと言われた事に気を良くしたエリオットにはどうでも良かった。


 僕が学園中で人気者のルーカス様より素敵か……。こんなことハンナにも言われたことはなかったな。

 ……いや、違う。ハンナはルーカス様に興味なんてなかっただけだ。

 

 エリオットはすぐに頭を振ってフィナに言った。


「やはり、駄目だよ。だってフィナ嬢だって将来はキリオス伯爵家から出なきゃ行けないだろ?」

「ふふ、そこはお父様に言って私がキリオス伯爵家を継げるようにすれば良いんですよぉ。いつまでも起きないお姉様に変わって泣く泣く私を次期当主にしたって言えば、ルーカス様も納得して婚約解消してくれますよぉ」

「でも、そんなことをしたらソニアさんから金銭面の援助をしてもらえない可能性があるんだよ」

「大丈夫ですよぉ。昨日、お姉様にどんな事があってもキリオス伯爵家には金銭面の援助はするって言ってくれましたからねぇ」

「そ、そうなのか?」

「ええ、だからエリオット様は何の迷いも持つ必要はないんですよぉ。それに醜くなってしまったお姉様より可愛い私の方が良いですよねぇ」


 フィナはエリオットに甘えるような仕草で近づき、体を密着させてくる。そんなフィナにエリオットは初めて異性として意識し、生唾を飲み込んだ。

 そしてハンナの事がゆっくりと頭の中から薄れていく感じがしたのだ。


「……わかった。今日、フィナ嬢の家に寄って行こう」

「さすがエリオット様ですぅ、それと私の事はフィナで良いですよぉ」

「……ああ、フィナ」


 エリオットは頷くとしなだれかかるフィナを連れだって馬車の方に歩いて行くのだった。



 ルーカスside.


 ルーカスはエリオットとフィナが仲良さげに歩いている後ろ姿を心底冷たい目で見ていた。


 やはり、自分で探しに行く気もなかったか。馬鹿な奴だな。まあ、おかげでこっちからあの馬鹿女に婚約解消を言わずに済みそうだ。


 ルーカスはフィナの後ろ姿を見て笑みを浮かべた後、自分の馬車がある方に歩いていく。そして、馬車の整備をしていた御者に指示を出した。


「例の病院へ行ってくれ」

「声をかけにいった方はいなかったのですか?」

「いいや、もうその必要はなくなったよ」


 ルーカスはそう呟くと馬車に乗り込み一息ついた。


「ふう、しかし、調べた情報とあの女の行動を見ていたらキナ臭くなってきたな」


 ルーカスはいつもエリオットに微笑んでいたハンナを思いだし唇を噛み締めた。


 もし、そうなら絶対に許せないが、とにかくハンナ嬢の安全を確保しないとな……

 

 ルーカスはそう判断してハンナが入院しているであろう病院へと向かうのだった。


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