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 翌日、学園へ行くとエリオットが笑顔で手を振ってくる。


「ハンナ、ここに座りなよ」

「ありがとうございます」


 ハンナはエリオットの隣に座ると昨日の件を謝った。


「エリオット様、昨日は妹が申し訳ありませんでした……」

「ああ、大丈夫だよ。それより、君と結婚するまで僕はあの家にはなるべく近づかない方が良いかも知れないね」

「でも、それではエリオット様に……」


 申し訳ないと言おうとしてハンナは言葉を止める。

 正直、タウンハウスにエリオットが来るとフィナがまた言い寄り、場合によっては自分達だけじゃなく、フィナ達の婚約まで破談になるかもしれないのだ。

 しかし、すぐにフィナの性格を思いだす。きっと自分達が黙っていれば問題はないかもしれないと。何せフィナは自分とエリオット以外には猫をかぶるだろうからだ。

 ハンナはそんな事を考えていたら、二人の前にフィナの婚約者であるルーカスが銀髪を靡かせながらやってきた。


「やあ、エリオットにハンナ嬢」

「ルーカス様、おはようございます」

「おはよう、ところでフィナ嬢を見なかったかな?」

「申し訳ありません。朝、別々に来たものですから……」

「そうか。では、フィナ嬢にそろそろ私が作った商会の方に顔を出して欲しいと言伝を頼みたいんだけど良いかな?」


 ルーカスはそう言ってきたのだが、ハンナは驚き思わず聞き返してしまった。


「ルーカス様、商会を作ると言っていましたが、もうご自分の商会を作られたのですか?」

「ああ、私は侯爵家と言っても四男だから卒業と同時にさっさと家を出ないといけないからね。だから、学生のうちに勉強して商会を作ったんだよ。フィナ嬢は君達に言ってなかったのかな?」

「……はい」


 ハンナは頷きながら、きっとその事はキリオス伯爵家の誰も知らないだろうと思ってしまった。

 

 使用人達も聞いていないものね……。帰ったらお父様には一応、伝えておきましょう。


 ハンナは軽く溜め息を吐いていると、ルーカスも溜め息を吐く。


「ふうっ。そうか、とりあえずはわかったよ。それじゃあ、二人とも邪魔して悪かったね。では、私は戻るよ」


 ルーカスはそう言って教室を出て行く。エリオットが心配そうな表情で言ってきた。


「ハンナ、ちょっとまずいんじゃないかな」

「エリオット様もそう思いますか……」

「うん、だから今日キリオス伯爵に言いに行った方が良いよ。さっき、あんな事を言ったばかりだけどフィナ嬢だけじゃなくキリオス伯爵家の将来にも関係あるだろうから僕も一緒に行ってあげるね」

「ありがとうございます」


 ハンナはそう答えながら内心ホッとする。それはエドモンドが自分の説明だけで状況を理解できるか不安だったからだ。だから、エリオットの横顔を見ながら微笑んだ。


 本当にエリオット様が婚約者で良かったわ……


 そして、二人は放課後、キリオス伯爵家のタウンハウスに戻るとエドモンドがいるであろう執務室を目指した。先ほどの話をするために。

 だが、執務室の前に来ると、ちょうど中から亡き母の妹でハンナの叔母でもあるソニアと執事のゼバスが一緒に出てきたのだ。


「あら、帰ってたのねハンナ。おかえりなさい」

「ソニア叔母様、ただいま戻りました。あの、どうされたのですか?」

「あなたの父親が私の商会にもっと資金援助してくれって言ってきたのよ。だから、半年後にハンナが学院を卒業すると同時に爵位をハンナに譲るならしてあげるって言ったの」

「……そうなるとお父様は断ったのではないですか?」

「もう、うちの商会しか経営難なキリオス伯爵家には資金援助をしないんだから頷かせたわよ」

「えっ……」


 ソニアの言葉にハンナは思わず目を見開く。まさか、エドモンドが頷くとは思わなかったからだ。すると、ハンナの気持ちがわかっているのかソニアは説明してきた。


「あの無能に理解はさせたから大丈夫よ。契約書も次回までに用意して書かせるから、あなたは安心して後を継いで頑張れば良いのよ。もちろんあの三人には領地の離れの小さな屋敷に住ませて本邸には近づかせないからハンナの邪魔はさせないわ」


「でも、あの三人が耐えられますかね?」

「今回は、親戚の上位貴族や私の兄であるレフティア公爵が睨みを利かせてるから耐えるしかないわよ」


 ソニアがそう言うと執事のゼバスが頷く。


「これで、再びキリオス伯爵家に平穏が戻ってきますよ、お嬢様」

「ゼバス……。あなた方には本当に辛い思いをさせたわね」

「いいえ、私達よりむしろハンナお嬢様が辛い目にあっていましたので我らは見ていて辛かったです」


 ゼバスが悲しげに言うとエリオットがハンナを優しげに見つめる。


「大丈夫、どんな事があっても僕が必ずハンナを守るよ」

「エリオット様……」


 ハンナは思わず頬を赤らめてエリオットを見つめる。そして、これから二人でキリオス伯爵家を経営していく事を夢見るのだった。


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