初恋シリーズ①
穏やかな気候から抜け始め、上昇しつつある気温とは真逆に、体は冷たさを求めるようになるこの時期。
補填された道路の横に咲く桜が降り、この道道の端に落ちていた頃とは変わり、青々とした緑の木々と、残った散りゆくのを待つ儚い桜が、交互に並ぶように混じり合うコントラストは夏の知らせ。
そんな桜と木々は今日も、真ん中の道路を歩む人々を眺めるようにさざめき見守る。
「なあ!意味ないよなこれ!?絶対方向性間違ってるよね!?」
「ええい、うるさいうるさい。ほら、この木もさざめいて怒ってるじゃないか」
そんな木々に見守られる中、騒がしい二人がいた。
いや、正確には騒がしい一人と話す一人がいた。
喧しく声をあげながらスマホの画面を相手に見せ、抗議するなんらかの犠牲者。一人、その名は途一翔。又の名をイッチー。
喧しく声をあげるイッチーを横目に、桜と木を指で指し、ダシにして友の抗議を流そうとする面のいい悪戯っ子、その名は幸薄光輝。又の名を小悪魔。
イッチーが光輝に見せるスマホに視線を移せば、そこにはある動画配信アプリの画面に、イッチーの最近作ったアカウント画面。
そして、チャンネル登録者1万人という、新参にしてはあまりに多いファンの数。
「ふーん、1万人だって。良かったじゃん、有名○ー○ューばーの100分の一ぐらいにはなれたんじゃない?」
「良くねえよ!?なんでゆー○ゅーばーへの道歩き出させてんだ!俺の夢は「蟇目」さんと結婚する事なんだよ!なに夢への第一歩おめでとうみたいなこと言ってんの!?」
イッチーが怒る理由は一つ、この友達と書いて確信犯と読む親友に怒る理由はたった一つ。それはアドバイスと方法を教えてもらい実践してみたら全く意味のない物だったからではない。
そもそもアドバイスを貰って意味がなかっただけで怒る理由にはならない。他意があれば別だが。そして光輝には他意があったが。
それでもイッチーと光輝は親友である。既にそんな事はなれっこだ。
確かに確信犯で騙されるというのは腹にくるがそこが怒る理由ではない。騙されるだけならいつもされている。
それだけでなくこの者、力技でイッチーをバズらせたのである。しかも面白半分で 。
イッチーは確かに、配信者として光るものを持っていた。言うなれば磨く前の原石。だがそれだけでは有名にはなれない。なれるのであれば有名○ー○ゅーばーはこの世に何百人と生まれているであろう。
本来であれば、イッチーの配信に来るのは良くて10人程度だったのだ。
だがそこは天才悪戯っ子。そんなつまらない結果で終わらせるつもりもなかった。
故の細工。故の工作。
結果として、イッチーは超プチではあるがバズった。
因みにここまで手のこんだことをしておいて、したい事はただイッチーをからかう事だけだ。天性の悪戯好きである。
「だからまずお近付きになるために話し上手になるんだよね?」
「こんなんでなれるかぁ!どうやって気を使うんだよ!?液晶越しにいるヤツらと蟇目さんを一緒にすんな!」
そしてイッチーとしては有名になんかなるつもりも無かったので、こうして喚いているわけである。そのおかげでもう気は収まったが。コイツは聖人か?
「しょうがないなぁ〜♪じゃあ次の手段ね♪」
「……まともなの頼むわ…俺だけだとまともな結果になんないからさ…」
「うんうん♪任せてよ♪」
こうして、イッチーの高校生になってやっとの初恋と共に、ラブコメディーのような日々が幕を開けるのである。
見てくれてありがとうございます!
なぜ光輝はそんなことできたのかって?
ヒント:ツラ、コネ、有名○ー○ュー○ー




