挨拶は大きな声で。
「カナ……ッ!」
扉を勢いよく開け放ち、椅子に座る夏菜子に跳びついて来る。
その声色は酷く焦ったような、同時に酷く安堵したような。
いや、なんら間違っていないのだろう。
その証拠に彼は、私を視界に納め、不安をかき消すように跳びついてきた。
だが私の視線を釘付けにしたのはその姿ではなく…………
『かつて』、絶対に流させまいと思っていた……
いや、誓っていた 頬を伝う大粒の涙だった。
体から、興奮によって発せられていた熱が、氷水をかけられたようにサーッと引いていく。
「うぅっ……!カナ!無事なのか!?」
埋めた夏菜子の胸元から、未だに溢れ出す涙に濡れた顔を上げ、宝石のように輝く潤んだ翠の眼に心配の色を多大に込め、友の身を案じる。
「ぁ……」
頭が真っ白になった。
震える小さな声が、口から漏れ出る。
今、目の前にいる私の想い人は、泣いている。
嗚咽を挟み、顔を歪め、今にも咽び泣き出しそうなほど。
服から伝わるジンワリとした暖かい湿りが、その事実を夏菜子へ告げる。
いつかどこかの尊い約束は、破られた。
それも、信頼した親友から。
誰だ。誰が彼を泣かせた。
胸が苦しい。息が詰まる。
体が震える。冷たくなる。
目元が熱い。顔が歪む。
「分かってた!いや!信じてたっ!でもっ…!でも…!」
私だ。
私の浅慮な考えが。
私の自分勝手な行いが。
私の欲に囚われた最低最悪な悪戯が。
彼を泣かせた。
私は何をしているのだろう。
彼を無意味に心配させて泣かせて。
私は彼に救われたのに、私から返す物は仇しかなくて。
私は彼を泣かせまいと誓って、結局口だけで。
私は……なんてことをしてしまったんだろうっ‼︎
心の淀みは祓われていく。
喉がヒクッと鳴る。
目からは涙が溢れ、クシャリと顔を歪ませる。
「ーーっ!ごめん…っなさい!ごめんなさいっ!」
口からは心の叫びが漏れ、何度も何度もゴメンを繰り返す。
「ごめんなさい!……うぐっ!…心配かけてごめんなさいっ‼︎私っ!わだじぃっ‼︎」
「いやっ!俺こそっ…!俺の方こそっ……‼︎」
「……おかえり、蛍」
「…………そっか。気付いて…それであんなに…」
「っ…、ごめんなさい……」
「いやいや!責めてるわけじゃないんだ!」
「…私、いっぱい心配かけた。返信無かったってだけでやり返して…」
「……プッ!あはは!」
「なっ、なによいきなり!」
「返信無かったのそーゆう事かよ!あははは‼︎」
「〜〜っ!なんでそれで笑うのよ〜‼︎」
「あはははは!うぅ、お腹痛い!」
「も〜〜!ほらっ!ただいまって言いなさいよ〜〜‼︎」
「あっ!あっ!わか、分かったよぉ!……ふぅー」
「…………」
「………………カナ。」
「……うん。なぁに?」
「ただいま!!!!」
見てくれてありがとうございます!
こういうシリアスシーン書いたこと無かったので違和感あると思いますが……
空白の多さは普通だと思いたい。
あとめっちゃ【完】って入れたい。
蛍くんはいつもはどこかお気楽くんですが、テンパる時はめちゃくちゃテンパる子です。
それで感情が爆発して泣いちゃったり。
夏菜子は……あまりのショックと一年ちょっとのニート生活に、何かが澱んでしまったんですかね。




