俺の妹の友達には彼氏がいます。さぁその彼氏とは誰でしょうか?
「お兄ちゃん。私の友達のルカちゃん」
「何で俺に紹介するんだよ。ルカちゃんも困ってるだろう?」
「だって、可愛いルカちゃんと友達になったことを自慢したくて」
「そうか。良かったな」
俺はそう言って妹のルウの頭をヨシヨシと撫でた。
ルウは嬉しそうに笑っている。
ルカちゃんは不思議そうに見ていた。
これが妹の友達のルカちゃんとの最初の出会いだった。
俺とルウは歳が離れている兄妹で俺はルウをすごく可愛いがっているシスコンだ。
だからルウも俺から離れないブラコンとなった。
「ねえ、ルカちゃん。私のお兄ちゃん格好いいでしょう?」
「うん。格好いいし大人だね」
二人はルウの部屋へ行きながらそんな話をしていた。
妹の友達は可愛い女の子。
恋愛対象になるはずもなかった。
ルカちゃんは毎日のように家に遊びに来ていた。
帰るのが遅くなるので俺が毎日ルカちゃんの家まで送っていた。
最初はルウも一緒に車に乗っていたがいつの間にかルウは一緒に乗らなくなり、ルカちゃんと二人が多くなった。
その車の中で話していてルカちゃんには彼氏がいることが分かった。
「ルカちゃんの彼氏は毎日会いたいとか言わないの?」
「そんなこと言わないです。彼は私といるより友達といたほうが楽しいみたいなんで」
「ルカちゃんはそれでいいの?」
「嫌ですけど仕方ないです」
「何で我慢するの?」
「えっ」
「ルカちゃんは彼女でしょう?」
「はい」
「我慢する必要ないと思うけどなぁ」
「何でですか?」
「ルカちゃんと彼が同じ気持ちなら我慢なんてしなくても会いたいときに会ってくれるんじゃない?」
「でも。言えないです」
「言わないと、これからも我慢することになるよ?」
「それは嫌です」
「気持ちって言葉にしないと伝わらないよ」
「そうですよね」
「着いたよ」
「あっ、ありがとうございます」
「ルカちゃん」
「はい?」
「ルカちゃんの気持ちは俺には伝わったから、彼にも伝わると思うよ」
「ルウのお兄さん。ありがとうございます」
「うん。じゃあね、おやすみ」
「おやすみなさい」
そしてルカちゃんが家に入るのを確認して俺は自分の家へ帰る。
それが毎日の日課となっていた。
そんな日が続くにつれ、ルカちゃんの俺への態度は変わった。
言葉遣いは敬語がなくなり、何より一番分かりやすく変わったのは俺の呼び方だ。
「お兄ちゃん。明日、彼とデートなの」
俺を呼んだのはルウではなくてルカちゃんだ。
「ルカちゃん。俺に抱き付くのは止めてもらえるかな?」
「だって嬉しいんだもん」
「分かったから」
ルカちゃんが離れる。
そんなルカちゃんの頭をヨシヨシと撫でる。
「お兄ちゃんは頭を撫でるのが好きなの?」
「何で?」
「最初に会った日も今みたいにルウにしてたから。」
「だって可愛いからね。撫でたくなるよ」
「何か子供扱いしてる?」
「まあ、妹だからね」
「私は妹の友達だよ」
「だから妹」
「もう。お兄ちゃんのバカ」
そうルカちゃんは言ってルウの部屋へ入っていった。
何をあんなに怒ってるのか分からないが怒っているルカちゃんも可愛い。
やっぱり妹だな。
そんな俺の大事な二人の妹に危険がおよぶ事件が起きた。
それは一本の電話から始まった。
「お兄ちゃん。助けて。ルカが」
「ルウ? どうしたんだ。ルカちゃんがどうしたんだ?」
「お兄ちゃん」
ルウは泣いているだけだ。
「ルウ。ルカちゃんを助けるから場所を教えてくれ」
「近くの公園」
「今すぐ行くから待ってろよ」
「うん」
俺は近くの公園へ走る。
公園へ行くまでの道が狭いから車より走って行った方が早い。
「ルウ」
「お兄ちゃん」
「ルカちゃんは?」
「公園のトイレに彼と行ったの」
「彼?」
「ルカの彼氏が何故か怒っていて、ルカの髪を引っ張って男性トイレに入って行ったの」
「分かった」
俺は怒っていた。
俺の妹の髪を引っ張った?
あんな綺麗な髪を引っ張っただと?
許せない。
彼氏でもそんなことをするやつは許せない。
俺は男性トイレに入る。
「ルカ」
「お兄…………」
ルカの声は途中で消えた。
口を押さえられたか?
嫌がるルカの顔が頭をよぎる。
早く助けないと。
俺は一つずつトイレのドアを開ける。
そして見つけた。
開かないドア。
「ルカ」
「助けて」
ルカは確かに俺に助けを求めた。
俺は思い切りドアを蹴った。
ドアは壊れルカと男がいた。
「誰だよ。俺のルカを泣かせるやつは」
「お前、誰だよ。ルカは俺の彼女だ」
「彼女? 泣いてるのに? 彼女ならもっと大事にしろよ」
「ルカが悪いんだよ。別れるとか言うから」
「それはお前のせいだろう? お前がどれだけルカに寂しい思いをさせてたか分かってんのか?」
「ルカは他に好きな人がいるって言ったんだよ」
「はあ?」
「お兄ちゃん」
ルカはそう言って俺の胸に飛び込む。
俺はルカを抱き締める。
「私はお兄ちゃんが好きなの」
「えっ」
「お兄ちゃんは私を妹って言うけど私はお兄ちゃんに女の子として見て欲しいよ」
ルカは俺の胸に顔をうずめたまま言う。
「なっ、何なんだよ」
ルカの彼氏はそう言ってトイレから出ていこうとしている。
「おい、待て」
「はあ?」
「今後一切ルカに近寄るなよ。ルカは俺のだ」
「人のもんなんて興味ないんだよ」
「女に手を出すのもやめろよ」
「しねぇよ」
そう言って男はトイレから出ていった。
「お兄ちゃん?」
ルカは顔を赤くして俺を見上げている。
ん?
俺。
今、何て言った?
ルカは俺のだ?
「聞いてた?」
「聞いてたよ」
ルカは俺を見上げて嬉しそうに笑っている。
あれ?
ルカってこんなに色っぽかったかな?
すごく可愛い。
俺のルカへの見方が変わったんだと思う。
今までは妹としてしか思っていなかった。
ルカをちゃんと女の子として見るとルカはすごく色っぽく俺の脈が早くなる。
俺はルカを抱き締めていた。
「お兄ちゃん?」
「ルカ。好きだ」
「私も。お兄ちゃん大好き」
「お兄ちゃんって呼ぶのは変わらないんだな」
「だってお兄ちゃんでしょう?」
「そうだな。」
「ルウのお兄ちゃん」
「そうだよ。ルウには俺達のことは言わない方がいいな」
「ルウがやきもちやくからね」
「ああ」
そして俺達は家へ帰った。
ルウは心配しながら何があったのか聞くと言ってルカと一緒にルウの部屋へ入って行った。
俺は自分の部屋でベッドに寝転んだ。
色々ありすぎて疲れた。
『コンコン』
俺の部屋のドアがノックされた。
「誰?」
「ルカだよ」
「鍵、開いてるから入っていいよ」
「うん」
「ルウは?」
「泣き疲れて寝ちゃった」
「子供だな」
「私は?」
「ルカは子供だった」
「だった?」
「今の俺はルカを妹としては見れない」
「嬉しい」
「ルカってすごく色っぽいんだな」
「今頃、気付いたの?」
「ルカに触れたい」
「いいよ」
「そんなことを簡単に言うなよな」
「簡単に言ってないよ」
ルカは真剣な顔で俺を見上げている。
「ルカ。可愛い」
「お兄ちゃんの意地悪」
「ルカ。その照れてる顔を見せて」
俺はルカの顔が見たくて顎をもって顔を上げる。
頬を赤く染めているルカはすごく色っぽい。
ああキスしたい。
ちょっと待てよ。
俺は自分の部屋のドアに行き、鍵を閉める。
「お兄ちゃん?」
「誰にも邪魔されたくないんだ」
「秘密だからね」
「ルカ」
「お兄ちゃん」
俺達は見つめ合う。
ルカはゆっくりと目を閉じる。
そして俺はルカにキスをする。
その後、ルカを抱き締めた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「大好きだよ。…………君」
ルカは俺の名前を呼んでくれた。
俺はルカのお兄ちゃんから卒業した。
「ルカ。俺も大好きだよ」
俺の彼女は妹の友達。
妹の友達の彼氏は友達の兄でした。
読んで頂きありがとうございます。
人には自分の気持ちに気付かず、思い込みってありますよね。
一度でもいいので見方を変えてみると何か違って見えると思います。
自分の気持ちにはちゃんと向き合ってほしいと思って書きました。