正しい人
心に素直であるという選択をしたのは
なにも僕が我儘だからなだけじゃない
素直である事が正しいだなんて
僕は思っちゃいないから
『皆違くていいんだよ』とか
親切に言う人達は大概僕に
『もう少し上手くやれ』を
もっとやんわりした言葉に変えて窘める
心に素直であることと言うと
あまりに綺麗な表現すぎてうんざりするけど
それが愉快なことばかりでないなんてことくらい
とっくにわかっているのに
嘘をつくというのが悪いことではないことを
知らないとでも思っているのだろう
葛藤の中で一番マシな選択をしただけ
別にそれは正しさからではなく
嘘が下手だから余計に上手くいかないとか
経験に基づいたもので
仕方がないからそうしてるだけ
いっそ親切な人達みたいに
盲目的にひとつの正しさを
相手の個性に関わらず
推奨することができたらいいのに
僕は仕方ないから
心に素直に従うけれど
正しいなんて思っちゃいない
荒野より峠のがマシだとか
その程度の理由で
面倒なのはそれを
正しいと思っていると勘違いされること
親切な正しい人が
『こうすると生きやすいよ』って
是正をしようとしてくれること
あなたにはそれは簡単かもしれないけれど
僕にはそっちの方が難しいし生きづらいなんて
想像されることすらないこと
そういう人は大抵優しくて親切なんだけど
そこに秘められた少量のマウント的な
小馬鹿にした気持ちや
単純に僕の行動が気に入らないことを
感じ取って
無理矢理合わせて下手くそに嘘をつく
正しい人の言ったとおりに
そういうことも感じ取れないくらい
愚鈍だと思われているのか
自分の正しさが人にも正しいと
盲信的に思えるのかまでは
僕にはわからないけれど