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閑話1 悪夢

用語説明w

シグノイア:惑星ウルにある国

ハカル:シグノイアの北に位置する同国と戦争中の国


MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット

シグノイア純正陸戦銃:アサルトライフルと砲の二連装銃



防衛軍への正式採用が決まった

だが、決まった矢先に()()悪夢をみた


不吉な戦場の夢


防衛軍では仮採用時に三回、研修として戦場に出る

俺は、その二回目の研修でとんでもない戦場に当たってしまった


多分トラウマになっているのだろう…




人類やモンスター、精霊やアンデッド、ある程度以上の知能を持つ者たちに共通する認識がある

種族、そして自己を守るための不文律だ


この世には絶対に手を出してはいけない相手がいる

それは、「竜と巨人、そして国」


この三種を攻撃してはいけない

多様な種族が、この認識を共通して持っている



竜とは、全生態系の頂点に君臨する生物

多種多様な種がいるが、成長度と能力によってそれぞれ六つのランクがある


成長度の頂点が(エンシェント)竜、能力の頂点が(マスター)竜、古極竜(エンシェントマスタードラゴン)ともなれば、高次元的存在である神や魔神と同レベルの存在だ



次に巨人

巨人も多くの種族がいて、亜種はモンスター化している


圧倒的耐久力と圧倒的回復力を持つ巨大な存在

仲でも巨神と呼ばれる巨人は大地の力を使い、この星にいる限り不死に近い存在となる



そして国

国とは人類が作る組織の最たるもので、人類をこの星の支配者の一角に押し上げた人類の集団構成だ


武器や資源を作り出し、個体としては脆弱な人類が集団戦術を使うことでとてつもない戦闘力を持ち得る

実際に勇者と呼ばれる人類が国から産まれ、魔王や邪神さえも倒したという記録が残っている



…強力なモンスターでさえも戦うことを避けるこの三種

これが、この戦いで集まってしまっていた


ハカルという隣の「国」

そこから、モンスターと何人かの工作員が侵入、大規模な戦場となった

そして、サイクロプスという一つ目の「巨人」、さらに飛竜種の「竜」までいた


更に、大型の蜂や蟻、トロルやゴブリンなどのモンスター、そして小型戦車やドローンなどの戦闘兵器もいて、何人もの死傷者が出た




あの戦場を思い出す…


戦闘開始から五分、すでに混戦状態になっていた



ダダダダッ ダダッ


巨大な蟻を相手に、陸戦銃のアサルトライフルを撃ちまくる

すでに交換用マガジンがあと一個しかない



ど、どうすればいいんだ!

もう弾がないぞ!?


目の前には三十匹以上の蟻が迫ってくる

一度噛まれたら、囲まれて終わりだ



「下がれ!」


後ろから声がして振り向くと、長い柄の斧を持った黒い鎧の兵士が立っていた


「火属性付加(小)!」 「身体強化魔法(小)!」 「硬化魔法(小)!」


その後ろに控えていた魔導師風の兵士達が黒い鎧の兵士に補助魔法をかける


「おりゃぁぁ! 喰らえ、火炎斬り!」


黒い兵士は火の斬撃を放って、次々に蟻を燃やしながら切っていく

あの兵士は特性(スキル)使いだ


更に、魔法使いの兵士が範囲魔法や精神属性魔法を使い、蟻の群れを殲滅していく


しかし、すぐに敵の増援が来てしまった

上空から巨大な蜂の群れが襲ってきたのだ


「東方向からトロルとゴブリンが接近中、数は十体前後と思われる」

そして、インカムで敵の更なる増援情報


弾もほとんど残ってないのにどうすればいいんだ!?



「行け!」


すると、全長二メートルくらいのコンドル型モンスターを連れた女性が命令を出す

コンドルが飛び立ち、颯爽と蜂を襲って爪と嘴で切り裂いていく

あの人はモンスター使いらしい


「蜂は使役しているヘルコンドルが落とす! ヘルコンドルを撃たないように銃は使うな、魔法で援護を行え!」


指令を聞いて地上の魔法使いが空中の蜂を投射魔法で狙っていく

ヘルコンドルは器用に魔法を避けて飛んでいく


次はトロルとゴブリンが迫って来ている

射撃武器の隊員が迎え撃つようで、俺も慌てて向かう



ダダダダッ ダダダダッ


アサルトライフルでゴブリンを殲滅していく



だが、トロルが岩を投げつける

更に、その後ろにはハカルの自立型のものと思われる小型戦車と戦闘用ドローン数機が接近



ドゴォッ! ゴガァァァァァン!



岩や着弾した迫撃砲で隊列が崩れ、ゴブリンとトロルの接近を許す

こん棒で隊員が襲われる!



ゴガッ!


「ぎゃあっ!」



目の前で隊員が頭を割られる

すぐに銃で撃ち殺すが、同士討ちになりかねないので連射できない


しかも、小型戦車の迫撃砲によって被害が増していく



ドガァァァァァァン


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



また目の前で隊員が吹っ飛ばされた

その砲撃を怖がりもせず、トロルとゴブリンが迫ってくる


「ど、ど、ど、どうすれば!?」


その時、ロケットランチャーやスナイパーライフルがドローンやゴブリンを破壊

今度はこっちの援軍が来てくれた



ガゥン! ドッゴォォォォン!


ハカルの戦車やトロルが爆破されていく



援軍が来てくれなきゃ絶対に死んでいた


次から次に敵が出て来る

弾もない! 味方も死んでる! もう無理、帰りたい!



「いたぞ! ハカルの戦闘員だ!」


声が聞こえた方を見ると、迷彩柄の軍服を着た戦闘員が飛竜種のドラゴンに乗って飛んで来る

…ドラゴンライダーか竜騎士か!?


しかし、ドラゴンの翼は破れて墜落しかけている

その後ろを戦闘ヘリコプターと魔法のじゅうたんに乗った魔法使いの隊員が追跡、攻撃を仕掛けていく


「落ちるぞ! MEBで対処しろ!」


防衛軍のMEBが墜落したドラゴンを仕留めに動く



「ゴオォォォォォン!」


その時、後ろから咆哮が聞こえた



「きょ、巨人だ! サイクロプスだぞ!」


「何匹敵がいるんだよ!」


隊員達が指す方向を見ると、一つ目の巨人が走って来る



「撃てーー!」


ゴォォォォッ!



二発のロケットランチャーがサイクロプスに向かう

それが戦闘の合図だった


ドラゴンとMEBがブレスとアサルトライフルを撃ち合う

サイクロプスはロケットランチャーを被弾しながらも、味方の隊員を粉砕しながら向かって来る



ドガァァァン!


ドォォン… ゴッガァァァァン



ドラゴンのブレスが戦闘ヘリに直撃して墜落

同時に撃ったヘリ搭載のミサイルがドラゴンに命中し、倒れたドラゴンの頭をMEBが叩き潰して止めを刺す


だが、こんどはMEBがサイクロプスに襲われる


持っていた丸太のようなこん棒で殴り倒され、追撃の連打で機能を停止

この間に、ドラゴンに乗っていたハカルの戦闘員は特技(スキル)と魔法で抵抗したが射殺された



後はサイクロプスのみだが、ダメージを大地の力で回復されてしまう


巨大な敵を倒すためには、動きを止めて攻撃を集中するための隙を作らなければならない

しかし、サイクロプスを止める手段がなく、被害を押さえながら攻撃し続けるしかない



「撃てーーー!」


一斉に、魔法や砲弾が撃たれる

魔法が付加された矢、精神属性の魔法、弱体化魔法、属性攻撃魔法、ロケットランチャー、スナイパーライフル、グレネードと波状攻撃だ



「ゴオォォォォ!」


血塗れになりながらもサイクロプスは動きを止めない

ヘリとMEBの両方を破壊され火力が足りていない



そして…


「…ぇええええ!?」


サイクロプスは俺の方に走ってきて思いっきりこん棒を振り下ろした



ゴガァッ!


「うおわぁぁぁぁ!?」



何とか避けるが、サイクロプスは目の前だ



ボゴォ ドガァァン! バチバチ…! シャキーーーン…


「うわっ!?」



爆発や魔法が一斉にサイクロプスを襲う


ち、近い!

目の前のサイクロプスに炸裂すると巻き込まれる!



ズリズリとほふく前進で距離を取る

突然、上空が明るくなったので振り向くと、巨大な火球が落ちて来ている



ゴォォォォォ…!


上空の魔法のじゅうたんで詠唱を終えた魔法使いが火属性魔法を発動したのだ



「た…助かった…」


やっとのことでサイクロプスが地に倒れた



…後から、この時の指導隊員に


「こんな大規模な、そして被害が大きい戦場は滅多にない」

と言われた


どこで誰が何と戦っているのかも分からない

目の前で死んでいく隊員達、射殺されるハカルの戦闘員、モンスターや兵器の恐ろしさ


戦場は恐ろしい

勇者なんてなれない


今だに夢の中で絶叫し、汗だくで目が覚める


この時の恐怖を忘れたらダメだ



…防衛軍になる俺への、戒めのような夢だ

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