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68話 消耗戦2

用語説明w

フェムトゥ:外骨格型ウェアラブルアーマー、身体の状態を常にチェックし、骨折を関知した場合は触手を肉体に指して骨を接ぐ機能もある

モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる

ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ

イズミF:ボトルアクション式のスナイパーライフル。命中率が高く多くの弾種に対応している

魔術師の側に水の塊が水球となって浮いている

あれを投げつけてくる気か?


大分時間をかけて魔力を練り込んで作ったようだ

もしかしたら、強酸や強塩基の可能性もある


魔導師のくせに逃げないで戦うとは

俺達が満身創痍の弾切れと舐めてるのか?



「さ、行くぞ。俺はバンナだ、さっさと仕留めて帰ろうぜ」

大柄の兵士は、機械式のフルフェイスアーマーの向こうで笑ったように見えた


「ええ、行きましょう。私はベルよ、生きて帰りましょう!」

ノーマンの女魔術師も杖を取り出す


「私はラーズです。行きましょう!」


これから戦闘に出る

初めて会った俺達だが、命を賭けているだけあって絆ができるのは早い

もう誰にも死んでほしくない



俺は超振動ブレードを背負い、イズミFに対人弾を装填する

モンスターや装甲車両を破壊するための徹甲弾では、人体を簡単に貫通してしまい効率的に破壊することができないため対人弾を使うのだ


今回はモンスター相手を想定していたので、対人弾なんか最低限しか持ってこなかった

弾数はあと五発しかない


バンナは、アーマーの背中に付いたジェットスラスターで魔導師に突っ込んでいく


俺はモ魔で風属性竜巻魔法(小)を読み込み始める

すぐにホバーブーツのエアジェットでバンナに続く



ガガガガ…! ダンッ!



バンナのアサルトライフル、俺のスナイパーライフルが魔術師を狙う



バババババ…


「何!?」


魔術師の周りに流水の壁が現れ、俺達の弾丸を防ぐ

魔術師の側に浮遊している水球から水壁が現れ、水球に戻っていく


防御手段があったのか

だから逃げなかったんだな


だが、あんな高性能な防御魔法はかなりの魔力を使うはずだ

そう何度も使えるわけない


俺はイズミFに徹甲弾を装填する

貫通力特化で防御魔法をぶち抜いてやる!



ボシュゥゥゥーーーー!


ドゴォッ!



「は?」


今、俺の真横をバンナが吹っ飛んで行った…!

な、何があった!?


「水の射撃よ! 避けて!」

ベルが叫んで火属性魔法の火の玉を飛ばす




ボシュゥッ!


ボシュッ!



魔術師の水球が水を撃ち出す


「ぐあぁっ!」 ゴキッ…


一発は避けるが、もう一発の水のビームが俺の右肩に直撃

体が吹っ飛び、嫌な音と共に激痛が襲ってくる


脱臼か? 骨折か?

フェムトゥの接骨機能が働き、俺の右肩を無理やり動かす


ボゴッ…


「ぐぅっ…」


どうやら脱臼だったようだ

接骨機能で肩を入れてくれたがスゲー痛い…

痛みを堪えて立ち上がる


あの水球は、水魔法で具現化した大量の水を高圧状態にしたものらしい

圧縮された水の一部を解放するだけで、凄まじい勢いで噴出するビームとなる

時間をかけて作り出しただけあって、厄介すぎる魔法だ


準備の時間を与えたのは失敗だ

とんでもない必殺技を持っていやがった



「ご主人! 魔術師は魔導サイボーグだよ! 額に魔玉を埋め込んでいる! 魔力切れは期待できないかも!」



魔導サイボーグ

サイボーグは、体を人工物に変えることで肉体の機能を強化できる

反面、肉体ならではの機能である霊力や氣力の総量が落ちてしまうというデメリットがある

特に魔導師は、霊力が落ちると魔力も落ちてしまいこれは死活問題となる


この問題を解決したのが魔導サイボーグだ

魔導サイボーグは、額に魔玉を取り付けて脳と直結することで魔力を作り出す

これによりサイボーグの強靭さと魔導師の魔法力を両立したのだ

ただし、あくまで魔玉の魔力を使っているので、魔玉に魔力を充填する設備がないと魔力は回復できない



「初めて見たな…」


俺はベルに注意を促す

恐らく、魔力切れを狙うのは厳しいだろう


ベルが頷きながら、火属性投射魔法の火の玉を撃ち魔術師を牽制してくれている

バンナは意識が飛んでいるようだ

直撃だったもんな…


本来なら不確定要素が多過ぎて撤退したいところだが、バンナが動けるまでそれも厳しいな


思い付きだが一つ試してみよう

俺は小型杖とスナイパーライフルを持つ


ホバーブーツで魔術師を右に逸れながら距離を詰める



ボシュゥッ!



水ビームを撃ってくるが、横方向に動く対象に当てるのは難しいだろう



ボシュゥーーーーーーッ!


「うおぁっ!?」



よ、横に薙ぎ払って来やがった!?

一気に前に出てスライディングで回避!

あっぶねー…



ダンッ!


ボシュゥ…



徹甲弾を近距離から発射するも、読まれていたらしく水壁で防御される

貫通はしたと思うが、更に防御魔法もかけているらしい

体には届かなかった


だが、本命はこっちだ

小型杖に解呪の魔石が装填してある


ヒュンッ!


小型杖を振り解呪の魔法弾を放つ

狙いは水球だ


水球は攻撃と防御を兼ねる

逆に、水球を消せれば魔術師に出来ることはなくなる



シュゥゥゥゥ…


水球に魔法弾が当たる

よし、これで水壁の防御が消え去るはず…



ボゴォォォォォォォォォォン!!


「…っ!?」




………




……







…水球が大爆発を起こした

直近にいた俺は吹き飛ばされ、地面に転がった



「…」


意識が混濁している

衝撃で脳震盪を起こしたか…

予想してない衝撃は効くんだよな




・・・・・・




「ご主人! 解呪の魔法効果は水球の圧力を維持する効果の一部を消すことしか出来なかったみたいだよ! 時間をかけて具現化した高圧の水を消しきれずに圧力が解放され大爆発を起こしたみたいだよ!」

データが、映像を解析した考察を述べる


そうか、よく考えたら解呪の魔石一個であの圧縮さてた水球を消し切れるわけないか



「おい、こいつ腕にナイフを仕込んでるぞ」

バンナが壊れた魔術師の体を見て言う


魔術師の左腕の前腕部に20センチメートルほどのナイフが仕込まれている


魔術師は水球の爆発の影響で首が折れ、頭蓋の人工皮膚が剥がれ人工の眼球も飛び出している

恐らく頭蓋内の脳も衝撃で損傷しているだろう



俺は正直、投射系の魔法をバカにしていた

弾速は銃弾とは比べられないくらい遅い

矢などに付与して使うならともかく、直接魔法を投射する使い方にメリットがあるとは思えなかった


だが、考えてを改めさせられた

銃と違って弾が切れが少なく、魔力の回復方法もある

銃弾を持ち歩くより魔力回復薬の方がかさばらない


継続戦闘能力は投射魔法の方が圧倒的に上だ

更に範囲魔法とも使い分けられる


現代の兵士の完成形は、銃と魔法を使えるタイプかもしれないな

俺はモ魔と魔石装填型小型杖がないと魔法が使えないのが悔しい



「ラーズ、バンナ、ありがとう。私達の勝ちね」

ベルが笑顔で言う


「ああ、生き残れたな。いきなり被弾して面目ねぇな」

頭をかきながらバンナも笑う


「おいしいところをもらっちゃってすみません。自爆になっちゃいましたけどね…」

俺も笑う


多分俺達全員、何度も死が頭をよぎったていだろう

ガッチリと三人で握手を交わし抱き合って喜んだ


敵とはいえ魔術師の死体の前、更に味方の戦死者も出てて不謹慎だったかもしれない

しかし、生き残れたのは素直に嬉しかった


補給部隊の安全確保

これができないと、弾が切れた銃、燃料のない戦闘車両ができ、一瞬で部隊が置物と化す


三個小隊で生き残ったのが六人…

とんでもない授業料だった



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