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65話 へこむフィーナ

用語説明w

フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹、龍神皇国のBランク騎士として就職している

セフィリア:龍神皇国騎士団に所属、B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性


セフィ姉からメッセージが来ていた

『フィーナが仕事でミスをしたらしいの。やんわりと元気付けてあげてね』


…仕事のミスって結構引きずるんだよな

俺も何度もミスってるから、へこむ気持ちは凄い分かる

新社会人ならではの打たれ弱い部分だと思う


駅前でフィーナの帰りを待ちながら、俺はPITで居酒屋のチェック

行ったことのない店にでも連れていってみるかな


データにフィーナが来るかを見てもらっている


「ご主人! フィーナが来たよ!」


「データ、ありがとう」

俺は手を上げる


駅から出てきたフィーナは、ちょっと驚いたような顔を見せてこっちに来る

「ラーズ、どうしたの?」


「ご飯でも食べに行こうと思って、待ってたんだよ」


「まだご飯まだ食べてなかったの?」


「うん、待ってたんだよ。行こうぜ」


「うん!」

フィーナは嬉しそうに笑った


今はすでに20時を回っており、町は夜モードに変わっている

そんな町を俺達は目的の店まで歩く


「仕事はどうなんだよ。慣れた?」


「え? うーん、まあまあかな」


「そっか。なんか元気ないなと思ったんだけど」


フィーナが不思議そうにこっちを見る

「…何か聞いたでしょ? 誰、セフィ姉?」


「うぐっ…! いや、何も聞いてないぞ!?」


「…駅で待ってるなんて普段しないことするから、おかしいと思ったんだよ」


いたずらっぽくフィーナが笑う


「…」


いきなりばれた

これは恥ずかしい…!


「わざわざ、心配して待っててくれたの?」


「はぁ!? た…たまたまだし! 別に心配してたわけじゃし!」


「んー?」


「それに仕事の失敗は俺もしてきてるからな。ちょっと気持ちは分かるよ」


「うん…、ありがと。今日、ちょっと失敗して嫌いな上司に凄い怒られたの。でもラーズのおかげで、ちょっと元気出たかも」


「あ、そ、そう? 良かったな」


ここで素直にお礼を言えるのって反則だよな

こっちがどぎまぎしてしまう


「もっと元気出して欲しそうだから、ご飯奢らせてあげるね?」


「何で上から目線!?」




・・・・・・




帰宅


フィーナの飲む勢いが止まらず、午前様だ


「美味しかったけど、料理の量は少なかったねー」


「お前、いつの間にそんなに酒強くなったの? 俺、飲みすぎてフラフラなんだけど」


ワインをがぶ飲みする姿に、フィーナの社会人としての成長と…、そして社会人としてのストレスも見た気がする


「え? まぁ、今日はいろいろあって飲みたい気分だっただけだよ。普段はそんなに飲まないしね」


しかも、あれだけ飲んで呑まれてない

前から思ってたけど、こいつ酒強いんだよな


「女に酒の強さで負けるとは屈辱だ…」


「性別関係無く、ラーズは元からお酒弱いじゃん。私、先にシャワー浴びてくるね」

そう言って、フィーナはシャワーを浴びに行った


しかし、本当につまみの量が足りなかったな

「何か食べ物ないかな?」


ごそごそ台所を探していると

ラッキー、カップラーメンが一個だけ残っていた

お湯を沸かして、さっそく作ろう




「あ、カップラーメン。私にもちょうだい!」


シャワーを終えてすぐに、フィーナにラーメンを目撃される


「これしかないから、全部食べないでよ?」


「つまみ少なかったからお腹すきすぎて…、私のお箸を持つ手に聞いて?」


「箸を本能に委ねるな。俺だって腹減ってるんだから」


「うーん、ズズズズズズーーーーー!」


「っ! ばっ、食べ過ぎ! 麺吸いすぎ!」



結局


「…俺は言ったよな、全部食べないでよって。絶対に言ったよな?」


「私は無実です。箸が勝手に動いたんです」


「なめてんの? 麺を一気に吸い込んだよな? 箸ほぼ使って無いじゃん」


「まあ、お汁は残ってるから飲んでいいよ?」


「もはや残飯じゃねーか!」




…腹は減ったが、明日も仕事だ

そろそろ寝なくいと明日がきつい


「ね、ラーズ。寝る前にちょっとだけサイキックの練習する?」


「え、今から? でも、確かに今日はやってないからお願いしようかな」

今日はカヤノが非番だったから訓練は出来なかった


そう言って、俺とフィーナは向かい合って座る


フィーナは慣れたもんだが、俺はまだ初心者なので目を閉じて耳を両手でふさいで集中する

五感を閉じた方が、サイキックの練習は集中できるんだ





……



………



「うん、ラーズは精力(じんりょく)の抑え方が上手いね」


「抑え方?」


「うん、私の精力(じんりょく)を感じている時に精力(じんりょく)を発して、感じないときは精力(じんりょく)を抑えてるから。これが結構難しくて、精力(じんりょく)を常に発し続けちゃって体調崩す人もいるからね」


「そ、そうなんだ」

誉められるのは嬉しいもんだ


「あ、フィーナ。一度、お前のハック型のテレパスを俺に使ってみてくれない? 一回体験してみたいんだけど」


「え? 防御方法知らないと、精力(じんりょく)の感受性上がってるラーズは普通の人より効いちゃうよ?」


「体験だけだから大丈夫でしょ? めっちゃ弱くしてよ」


「うーん、じゃあ…」


フィーナが目を閉じて、集中する


「力加減が難しいんだけど…」


その時、俺の頭付近に精力(じんりょく)を感じた

目を開けているのに、精力(じんりょく)を感じる

同じ視界に、今まで見えていなかったものが重なって見えるような不思議な感じがする


が…


「ぐあぁぁぁぁぁっ…!」


急激に視界がピンクに染まる

フィーナが、いや目の前の景色が上下左右に震え、奥行き方向に自分が高速で進んでいるような感覚に襲われる


「ラーズ、大丈夫!?」


「ヤバい、酔う。吐きそう…」


「待って待って! トイレ行こう!」


フィーナの介護で、無事便器を抱き締める




…胃の中身が全部出た

視界だけじゃない、平衡感覚まで狂うとは思わなかった

ハック型テレパス恐るべし


「ごめんね、かなり出力を抑えたつもりだったんだけど。でも、ラーメンは私が食べといてよかったよね」


「…それとこれとは話が違うぞ」



サイキックは奥が深い

テレパスはとんでもない能力だ

こんなもん、戦場でかけられたら一歩も動けなくなるぞ?


軽はずみに受けちゃダメなやつだった



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