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63話 鎧サイ再び

用語説明w

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる

ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ

ロケットハンマー:ハンマーの打突部にロケットの噴射口あり、ジェット噴射の勢いで対象を粉砕する武器


ジード:情報担当の隊員、補助魔法が得意

ロゼッタ:MEB随伴分隊の隊員。片手剣使いで高い身体能力を持つ(固有特性)

今日は、ジードとロゼッタと共にクエストに来ている


大型のモンスターが町のそばで何度か目撃されたらしい

今回の任務は、そのモンスターの特定と可能ならその駆除だ


緊急クエストは、国だったり、市や町の行政だったり、時には防衛軍の小隊や中隊が応援を求める際に発動するのだ


緊急クエストは緊急性と重要性がある時のみ発令されるため、基本的に指定された小隊に拒否権はない

最近はこの緊急クエストが連続して発令したため、通常クエストは久しぶりだ


俺は自分一人でクエストが受けられない、まだ見習いの身分なのだが…

おかげで必要クエストを消化できず、見習いが卒業できていない

必要クエストとは自分で受けるクエストのみ、通常の出撃命令は計上されないらしい


見習いが卒業できないと、戦闘ランクが最低のFから上がらない

フィーナに言われた、「まだFランクなの!?」という言葉がちょっとショックで引きずってる…


クエストに向かいながら、そんな話をしていると


「緊急クエストも一人立ちの必要クエストに計上されるはずだぞ?」

ジードが首を傾げながら言う


「え!?」


「お前、最近緊急クエスト専門みたいになってただろ?」


「そうなんですよ。あれ? もしかして一人立ちの必要クエスト数終わってるかもしれないの!?」


「帰ったら調べてみたらぁ? 楽しみだねぇ」

ロゼッタがのんきに言う



その時、大きな足跡と藪の中を何か大きな生物が通ったと思われる折れた木々を見つけた


「大きい足跡だねぇ」

ロゼッタが足跡を小枝でツンツンしている


「…この足跡は鎧サイだな」

ジードが足跡を画像検索して、足跡をつけた主を特定した


鎧サイ

その名の通り、表皮が鎧のようになったモンスター


俺も一度戦ったことがあるが、あの時はサイモン分隊長とロゼッタ、カヤノが三人がかりで足止めして、スナイパーライフルで蜂の巣にした


だが、今回はサイモン分隊長のような壁役がいないので足止めができない


「一匹のようだが、どうするか…」

ジードが悩ましげに腕を組む


俺達が調査を始めてまだ十五分もたっていない

つまり、クエストを依頼した集落から歩いて十五分ほどの所にこの足跡があるのだ


鎧サイが集落に近づきすぎている

出来れば、被害が出る前に退治してしまいたいというのが本音だ


「…っ! 何か来るぞ!?」 「足音がするよぉ?」

ジードの探知魔法とロゼッタの優れた聴覚が、同時に何かの接近を感知した



…ドドドド…


確かに遠くから音が近づいてくる



ジードは、すぐに電話をし始める

「エレン、今回のターゲットは鎧サイだ。集落直近で遭遇することになりそうだ、すまないが集落の防衛のため応援要請を頼む。スナイパーも何人か手配してくれ!」


エレンに応援要請をしたのか、仕事が早いな


「応援要請はしておいた。ここで可能なかぎり仕留めるぞ!」

ジードが俺達に叫ぶ


「オッケぇー。私とラーズが前衛でいいよねぇ?」

ロゼッタが青い片手剣を取り出す


「鎧サイはスタミナに優れていて走り回る! 最初は足を潰すことに専念しよう、ラーズは状態異常の魔石を使え。足を止められたら、ロゼッタのトランスで一気に仕留めよう!」

ジードがテキパキと指示を出す


「りょうかーい」 「了解!」

俺とロゼッタが声を揃える


…トランスって何だろう?


「防御魔法(小)、硬化魔法(小) 、…身体強化(小)」

ジードが補助魔法を俺達にかけてくれる


「ジードの身体強化(小)って、始めてかけてもらいますね? 」

俺は、力がみなぎる自分の体に驚きながら聞く


「あまりこの魔法は好きじゃないんだ。 効果が切れた時に、急に身体能力が落ちて隙が出来るから気を付けろよ?」


「わ、分かりました」



ドドドドド!! バサバサッ!


その時、藪から鎧サイが飛び出してきた

戦闘開始だ


「はぁっ!」


ザシュッ


ロゼッタがすれ違い様に鎧サイの前足を切りつけ、関節辺りから出血させた


鎧の隙間を切ったの!?

あのすれ違いの一瞬で!

凄すぎるな



ドドドドド…!


鎧サイは走り続けながら、大きく回ってこちらに向かって来る


ロゼッタが魔石装填型の小型杖を振って土壁を作る

土属性土壁の魔石だろう


「ラーズ、土壁に誘導してスピード落とそぅ!」


「了解です!」


俺は土壁の上に乗り、小型杖を構える


狙うは拘束の魔法弾だ

スピードを落とさないと、動き回られてなにもできない

早くしないと身体強化の効果が切れる!



ドドドドド…!


ヒュンッ



俺はタイミングを合わせて小型杖を振って、拘束の魔法弾を撃つ


ホワァ…


拘束の魔法弾が鎧サイに当たり、スピードが落ちる



ゴガァッ!



鎧サイが土壁を壊す


ザッシュ!ザッシュ!


土壁の直近にいたロゼッタが、その瞬間に前足を連続で切る!



「ブゴォォォォォォッ!」


ドドドドド…!



鎧サイは悲鳴を上げながらも走り続け、迂回して向かってくる

この走りを集落でやられてたら、とんでもない被害が出てたんだろうな


「やっぱり足止めできないと厳しいですね!」

俺は、ロケットランチャーを肩に担ぎながら言う


「足のダメージはたまっているぞ! 前足を重点的に狙うんだ」

インカムからジードの声が聞こえる



有名なモンスターには定石というものがある

こうすれば簡単に素材を壊さずに狩れますよ、という狩り方のことだ

鎧サイの定石は、壁役を一人に固定して遠距離からの狙撃で倒す


鎧サイは近くの敵に突っ込んでくる

壁役を一人に固定し、更に突進を受け止めることで、鎧サイの体の向きを固定でき走り回ることも防止できる

走り回らなければ弱点である鎧の隙間を狙撃し放題ってわけか


確かに壁役がいないと、走り回られてなかなか攻撃ができない



俺はロケットランチャーの引き金を引く



ボシュゥーーーー!


ドドドドド…


ドゴォォォォン!



鎧サイの角付近に当たり爆発…しかし、硬い角にそこまでダメージが入ってないようだ


だが、ここからだ!


俺は、小型杖を振る

次は軟化の魔石だ


ホワアァァァァン…


軟化の魔法弾は弾速が遅いが、効果は絶大だ

しかも、突っ込んできてくれる敵には当たりやすい



ザッシュ!


「ヴゴォォォ!」



かなり深く、青い片手剣が鎧サイの前足の膝に食い込んだ

ロゼッタのすれ違い様の斬撃だ


軟化の魔法効果で表皮が柔らかくなり、ザックリと切れたようだ

鎧サイはまだ動きを止めないが、もう前足を引きずっている


ボォォッ!


俺は、ホバーブーツのエアジェットで鎧サイの左前に突っ込む


「ロケットハンマーが軽っ!」


身体強化の魔法効果で、ロケットハンマーが片手で振るえる!

信じられないな…


ボッゴォォォン!


「ヴォッッ!」


左前の前足にロケットハンマーをぶち込む

膝当たりにハンマーが食い込んで大穴が空く



…ボォォォ…



すると、突然ロゼッタが黄色い光に包まれた

いや、ロゼッタの体が黄色い光を発しているみたいだ


「ロ、ロゼッタ!?」

初めて見るロゼッタの姿に、俺は目を奪われる



「すぅー…」


ザシュザシュザシュッ…!



ロゼッタは深呼吸をすると、鎧サイを滅多切りした

あっという間に、首の切断、足の切断が終了

しかも、表皮の隙間を正確に切断していた


「凄い…!」


「あれがロゼッタのトランスだ」

ジードが側に来て教えてくれる


トランス…

まだまだ知らない技があるんだな




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