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56話 サイキック覚醒

用語説明w

エマ:医療担当隊員。回復魔法を使える(固有特性)

カヤノ:MEB随伴分隊の隊員。思念誘導弾を使い、飛行ユニットによる空中戦が得意なサイキッカー(固有特性)

クルス:ノーマンの男性整備隊員、車両の運転も兼務

ホン:ノーマンの女性整備隊員、車両の運転も兼務


ここは医療室

俺は医療カプセルから出てきたところだ


レールガンに二回も被弾し、その内一回は内臓がはみ出て満身創痍だった

ナノマシンの治癒力で大分抑えられたが、出血も多かった


更に腹から飛び出した大腸が少し損傷していたらしく、そこから腸内細菌が漏れて腹膜炎を併発していたらしい

本来は高熱と激痛に襲われる病気だ


次からは腹に空いた穴だけじゃなく、内臓にもカプセルワームを使えってことだね


六時間ほど回復溶液に浸かって寝ていたら、恒例の全回復

痛い思いも苦しい思いもせず…、ありがたやー



「ラーズ、具合はどう…?」

エマが、聞いてくる


「ちょっとふわふわしてるけど、特に痛みもないし大丈夫だよ」

俺は伸びをしながら答える


「ラーズ、落ち着いて聞いて…。間違いなく、サイキックの発動兆候が出てる…。そのふわふわする違和感はその影響…」


「え!?」


サイキックの発動兆候

俺の所属する1991小隊は実験部隊の側面を持っている

希少な固有特性持ちが集まっている代わりに、怪しげな実験台になっている感じだ


具体的には、サイキック能力に目覚める薬とやらを摂取させられている

だが、他の薬を摂取させられている可能性も否定はできない


「サイキックが使えるようになったってこと!? 撃たれてからふわふわした感じがあったんだけど、出血のせいじゃなかったの?」


相討ちになってから、妙な浮遊感が続いている気はしてたんだ


「恐らく…。と言っても、訓練をしていく必要があるし、すぐ使える訳じゃないけど…」


「でも何で急にサイキックに目覚めたんだろう?」


「恐らく…戦場での死の恐怖…。過去のデータでも、命の危険による心理的なストレスがサイキックに結び付く例は多いみたい…」


「…」


確かに、今回は狙撃勝負になり、その中で意識を失うという失態を犯した

死ぬかもという恐怖は半端じゃ無かったな


「サイキックは、精神力から発する精力(じんりょく)を由来とする力…。心理的ストレスで発現するのは理にかなってると思う…」

エマは考えながら言う


「これから、具体的に何をしたらいいんだろう。サイキック用の検査とかあるの?」


「生理検査は発動の有無しか分からない…。カヤノに訓練を頼んでおいたから、ある程度サイキックが使えるようになったらその強さを計るテスターを試してみて…」


「分かったよ。カヤノの所に行ってみる、ありがとう」

俺はお礼を言って、医療室を出た


サイキックの訓練って想像つかないな

カヤノはどこだろう?




・・・・・・




カヤノを中庭で見つけた


「ラーズ! 大怪我だったけどもう大丈夫なの?」

カヤノは俺を見るなり、声をかけてきた


「もう大丈夫ですよ。医療カプセルに入ってぐっすり寝ましたからね」

俺もカヤノの所に行く


「そう、良かった。体調は大丈夫なの? サイキック発現の数値が出たってエマから聞いたけど」


「そうなんですよ。そのサイキックの訓練をお願いしたくて。体調は、ちょっとふわふわするけど問題はありません!」


「…そうね、サイキックのエネルギーが発現しているからかもね。変な感じがするでしょう?」


「浮遊感というか、変な感じがします。カヤノはサイキックのエネルギーが分かるんですか?」


「サイキックのエネルギー、精力(じんりょく)は感じるし見えるわ。ラーズも訓練すれば見えるようになるわよ」


「そうなんですか!?」


…カヤノが言うには


精力(じんりょく)は、精神の力

サイキックが発現するほどの精力が発生すれば、それは脳の周囲に留まる


この精力の留まり方に差があり、

物体を動かす力であるテレキネシスは、脳の周囲を覆うように

対象の思考を読み取るテレパスは、脳から触手のように精力が飛び出している

透視能力者は、眼球付近に精力が留まっている

…といった特徴があるらしい


「ラーズは典型的なテレキネシス使いね。精力の量は…うん…これから訓練を頑張りましょう」

というのがカヤノの説明だ


要は、特殊な能力はない(テレキネシスも十分に特殊だけど)

そして、そこまでテレキネシスは強くない(精力が多くない)

と、いうことらしい


ちょっと残念だが、訓練を続けていけば精力(じんりょく)を増やすことは出来るらしいので、そこは頑張るしかない


ま、サイキックに目覚めただけでも凄いことだし

サイキックに目覚めるとかいう怪しげな薬って、本当に効果あったんだな…


ちなみにサイキッカーは脳を精力で覆っている

他人のサイキックで放出される精力が、この脳を覆う自分の精力に干渉することでサイキックを感じることが出来るそうだ


新たな感覚器ってことなのかな?

そして、感じることができたら、脳がそれを勝手に色付けして視覚として認識できるらしい

錯視や幻覚で惑わされることもあるが、脳のこういう機能って素晴らしいな


「最初は何をやればいいんですか?」

俺はカヤノに訓練方法を聞く


「最初はサイキック能力の感知ね。感知ができれば自分の精力(じんりょく)を認識できるから、次はテレキネシスの使い方の訓練に移れるわ」


「なるほど…」

確かに今の俺は、ふわふわするだけで精力というのはよく分からない


「最初は、私がラーズに何度も精力(じんりょく)を当てるから、それを感じることが訓練ね。目を閉じて、耳栓をして、五感を制限した方が感じやすいと思うわ」


「分かりました、よろしくお願いします!」


そういうわけで、早速訓練が始まった







……




………





真っ暗闇…目を閉じているから当たり前だけど



何かが触れる感じがある


触れると言うより、自分の何かにさざ波を起こされる感覚



触れられる、その感覚があるのに…


何に触れられているのかが分からない



液体のよう、気体のような


触れられた何かがすり抜けるのに、その何かにさざ波が立つ



でも、俺の体にそんな部位はないはず…





………




……







「…最初はこんな所にしておきましょう。 疲れたでしょ?」

カヤノが俺の顔を覗き込む


「は、はい…」


俺は目隠しと耳栓を取る

体が汗びっしょりになっていることに気がついた


頭が重い…若干気持ち悪い…


「はい、これ飲んで。ブドウ糖だから倦怠感が取れるわ」


「ありがとうございます…」

俺は、個包装の粉状になったブドウ糖を飲み干す


「サイキックの訓練は脳をフル回転させるわ。 下手すると低血糖になるからブドウ糖を買ってきといた方がいいわよ。あと、多分知恵熱みたいな症状出るから、消化のいい糖分とってゆっくり休んでね」


「はい…。今回やってみて分かりましたが、こんな能力を使いこなせて空まで飛べるなんて、カヤノって本当に凄いんですね」



バッチーーーーン!


「痛ったーーーーーーー!」



「やっだー! もうっ!」


「またこれ!? 前もビンタ来たけど褒められるのがスイッチなの!?」


カヤノ、こういう変な照れ隠しなければ美人で優しい百点お姉さんなのに…


サイキッカーの変な所は見習わないようにしよう




・・・・・・




今回の銃創の治療の様子見で、明日は休みをもらった


明日が休みで良かった

頭が重いし、気持ち悪い

ただの低血糖と分かっただけで少し気は楽になったが


帰ろうとMEBハンガーの前を通ったら、クルスとホンがいた

足元には壊れた筒が置かれていた


「クルスとホン、それ何なんですか」


「ああ、ラーズか。これはお前の腹に穴を空けたレールガンだ」

クルスが指を指して教えてくれる


確かに見覚えがある、ハカルの戦闘員が使ったレールガンだった


「修理や、使えるパーツの流用を試してみたんだけど、厳しかったわ」

ホンが悔しそうに答える


「修理できたら凄い強かったんですけどね」

レールガン、俺も欲しかったな


「恐らく、雷属性の魔法を変換してバッテリーにチャージする、緊急充電ユニットを発動してる時に撃ったんだろうな。内部回路がショートして、バッテリーが爆発したのが致命傷だったな」


「運が悪かったわね…」


クルスとホンが残念そうに頷き合う


あの戦闘員、雷属性の魔法も使えたのか

近接戦闘に持ち込んでも危なかったのかも…


単独で敵国内で活動するんだ

それなりの実力は持っているってことだな


俺も早く強くならないと




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