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55話 vs固有特性

用語説明w

シグノイア純正陸戦銃:アサルトライフルと砲の二連装銃

モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる

イズミF:ボトルアクション式のスナイパーライフル。命中率が高く多くの弾種に対応している


ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長

サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)

カヤノ:MEB随伴分隊の隊員。思念誘導弾を使い、飛行ユニットによる空中戦が得意なサイキッカー(固有特性)

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。明るい性格?

出勤して早々に、ゼヌ小隊長に事情を聞かれた

ドラッグの影響で町中で暴れ出した魔法使いを取り押さえた件だ


「……と、いうわけなんですよ。たまたま出くわして、ほっとくわけにもいかなかったんです」

俺は簡単に事情を説明する


「話は分かったわ。結論から言うと、その魔法使いは防衛軍の隊員に間違いないみたい」


「えぇ!? やっぱりそうなんですか。あの魔法使いに何があったんですかね」


「彼は最前線のカツシの町に配属されていたらしいわ。まだあまりに表には出てないけど、だんだん戦闘が激化してきているらしいの。前線では恐怖を薬物で押さえ込む兵士も少なからずいるから、その魔法使いの彼もそのクチなんでしょうね」


「前線ってそんなに激化してきているんですか…。知りませんでした」


「民衆の不安をいたずらに煽らないように、ある程度は情報統制してるでしょうからね」


「はぁ…」


「今回のことはお手柄よ。防衛軍の不祥事が出ると、防衛軍の活動に対する国民の理解を得られなくなるから。でも、怪我しないように気を付けてね」


「はい、気を付けます」


…最前線の戦闘ってどうなってるんだろう?

俺もいつか、ハカルとの戦闘の最前線に出ることになるのかな



・・・・・・



今回、サイモン分隊長とカヤノ、そして俺は緊急クエストの召集を受けた

ハカルの戦闘員を山林に包囲したらしく、その応援だ


「最近、全然クエスト行けてないから、いつまでたっても見習い卒業できないですよ」

俺はちょっと愚痴ってみる


「でも見習い卒業したって実力はつかないわよ? 実戦の経験を積んで実力つける方が大事よ」

カヤノは俺をなだめるように言ってくれる


「はい…。確かに実力つけるのが最優先ですよね。前向きにやります」


「しゃべってないで準備しろ! 来たみたいだぞ」

サイモン分隊長が、会話を止める


向こうの森から、銃声と魔法の発動音が聞こえてくる

こちらへ向かって来ているようだ


サイモン分隊長は大盾を構えて、蒼い強化紋章を発動する

カヤノはサイキックを発動させ、思念誘導弾を撃つ用意をしている

俺もスナイパーライフルのイズミFを構えて準備は完了だ


森からハカルの戦闘員が出てきた場合、俺達が迎撃する手筈になっている

どうやら出番がありそうだ


「来るぞ!」

サイモン分隊長が叫ぶ



茂みから現れたハカルの戦闘員は、肩に見慣れない大きな銃砲を担いでいた

俺達は攻撃合図を待つ


「担いでる銃は何だ? えらくゴツいな」

サイモン分隊長が呟く


その銃砲は、銃身が1メートル以上、太さ直径30センチメートルはある大きな物だ

あんな大きな銃は、確かに見たことがない



「攻撃開始!」

インカムで指示が流れる



ガウン!

ドドドドドドドド…!



俺とカヤノが、サイモン分隊長の大盾の影から一斉に撃つ


それと同時に相手も撃ち返す



フィンッ…



「…」

追撃がない、一発だけ?


ハカルの戦闘員は、一発撃っただけで右の林に入っていく


さ、追わないとな


「ラーズ! お腹!?」

カヤノが目を見開いて叫ぶ


「え!?」


「レ、レールガンだ! 気を付けろ、俺の盾を貫通しやがった!」

サイモン分隊長が叫ぶ



レールガン

電磁力の力で弾丸を加速させる兵器だ

弾速がものすごいため、かなりの貫通力を持つ

反面、大量の電力を消費するので燃費が悪い


レールガンは、その威力から使う者の固有特性と認められるほどの兵器で、俺も初めて見る


情報が無かったのは、おそらく倉デバイスに収納して隠していたからだろう

追い詰められて使い始めたってところかな


「ラーズ、動いちゃダメよ!」

カヤノが駆け寄ってくる


何を言ってるんだろう?

早く追わないと




びちゃっ…


「…?」


何かが左手に触れる

濡れている柔らかいものだ


俺は、手に触れた自分の左脇腹付近を見る


「…っ!?」


長いものが…

ち、腸が脇腹からこぼれ落ちている!



「う…うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?」



な、何だ何で!?

ヤバイ、フェムトゥの装甲が落ちて穴が空いている!


これ、どうすればいいんだ!?


カヤノが抗生物質スプレーを噴霧してくれる

俺は手で腸を体に押し込む


「ぐっ…」

初めて痛みを感じた

レールガンの弾丸が脇腹を通ったらしい


何も感じなかったぞ!?


腸を腹の中に押し込んで、出血部分にカプセルワームと回復薬をぶちこむ

もう少し腸がこぼれてたら、戻し方が分からないところだったな

傷が痛ぇ…


「これ、装甲よ。これで押さえましょう!」

カヤノが、フェムトゥの装甲を拾ってくれる


俺は養生テープで胴をぐるぐる巻きにしてもらい、装甲を固定してもらう

これで、腸がこぼれ落ちるのも防げるだろう


レールガンの貫通力おかしいだろ

サイモン分隊長の強化紋章で硬化した盾を貫通するなんて!

貫通力が強すぎて、撃たれたことに気がつかなかった…!


下手すると死んでたよね?

もう少し右だったら腹に大穴空いてたよね!?

…ゾッとする



「ラーズ、行けるか?」

俺を射撃からガードしてくれていたサイモン分隊長が聞いてくる


「すみません、大丈夫です! カヤノもありがとうございます」


「よし、追うぞ!」


「ラーズ、無理しないでね」


俺達はハカルの戦闘員の追跡を開始した



「三方に別れるぞ! 五十メートル以内、味方を必ず目視、敵の発射を確認したらすぐに仕留めろ!」


「了解です!」 「了解!」



サイモン分隊長を真ん中に、俺は左 、カヤノは右に別れる

味方を目視しながら、ハカルの戦闘員の逃げ込んだ林を包囲する


発射場所が分かれば、仕留めることは出来る

味方が追撃をされる前に仕留めるってことだ



「御主人、ドローン飛ばして! ボクが映像チェックするよ!」


「分かった、頼む」


俺がドローンを取り出そうとする


その時……



「…っ!!」

いた、いきなりいた!



林から上半身が見えた、ハカルの戦闘員だ


俺がイズミFを構えると同時に、向こうもレールガンを構える

お互い、不意を突かれたらしい



スコープ越しにお互いの姿を捉える

どっちが先にスコープの真ん中に姿を捉え、どっちが先に撃つか


お互いに動きながらのコンマ1秒の勝負





ガァンッ! フィンッ!



「…かはっ!!」




……







「…」



「…じん…」



「…」



「ご主人…!」



…空が見える


どうなったんだ?



「ご主人、起きて!」


!!


データの声で、意識が急激に戻った


意識が飛んでたか!?


敵は? レールガンは!?

まずい、見失ったか!


俺は右手をついて起きようとする



が…、右手が動かない?


いや、右手の感覚がない



「ご主人、右腕が! カプセルワームを使って! 血圧が下がって来てるよ!」

データが警告を伝えてくる


ちっ…、またレールガンがかすったのか?

ヤバイ、先に移動しないと狙撃される…!


俺は自分の右手を見る


「なっ…!?」


俺の右腕は肘の少し上がちぎれかけ、右脇の装甲が削れてヒビが入っていた

右腕からの出血が酷い、骨が露出して内側の肉が吹き飛ばされている


この衝撃で意識を飛ばされたのか!


俺はカプセルワームを使って傷を埋める

「ぐぅっ…!」


めちゃくちゃ痛い、というか熱い

だが、負傷部位が腕だけで運が良かった、出血も思ったより酷くない

すぐに場所を変えないとまずい、狙撃される!


回復薬を肘にぶっ刺し、体を無理やり起こして移動する


「データ、敵の場所は分かるか?」


「アバターのカメラで捉えられなかったから場所は不明! ただ、仰け反りは確認したから負傷させた可能性は高いよ!」


負傷させたのか?

油断はできないが、いい情報だ


「データ、俺はどのくらい意識が無かったんだ?」


「ご主人、三十秒くらいだよ!」


三十秒、チャージ込みでレールガン二発は撃てるだろうな

危なかった、改めて考えるとゾッとする…



俺は、左手で倉デバイスから取り出した陸戦銃を持つ

片手でスナイパーライフルは無理だ

アサルトライフルで、弾数勝負しかない


モ魔で風属性範囲魔法をロードしながら林に近づく


その時



ドンッ ドンッ ドンッ


ドォォン…



爆発音が響いた

林の奥らしい


「待機班から本部、対象を仕留めた」


インカムからサイモン分隊長の報告が聞こえた

さっきの音は、サイモン分隊長とカヤノの攻撃か…


俺は、サイモン分隊長と合流するために林を進む


出血のためか、少しふわふわするな…



しばらく進むと、二人を見つけた


「お疲れ様でした」

俺は二人に声をかける


「おう、ラーズ。怪我は大丈夫か?」

サイモン分隊長が俺の右腕を見て言う


「なんとか大丈夫です。そいつですか?」

二人の足元に人が倒れている

レールガンらしき筒は爆発したようで、壊れて黒い煙を出して


「ええ…」

カヤノが答える


ハカルの戦闘員は年齢三十才くらいの女だった

顔には涙の流れた痕が残っている


多分、追われながら死を覚悟し、逃げながら泣いていたのだろう


俺は相討ちになった後、いつ狙撃されるか怖くてしょうがなかった

少しパニックになったくらいだ


この恐怖とずっと戦いながら、たった一人で戦い続け、逃げ続ける

…怖かっただろうな


だが、この国の不利益の芽は摘まなければならない

俺は、名も知らない敵の女のために黙祷をした





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