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52話 避難誘導任務2

用語説明w

PIT:PIT:個人用情報端末、要はスマホ。多目的多層メモリを搭載している

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる


データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。明るい性格?

俺達は走った

走って走って走って走った


走る~走る~俺た…


「ご主人落ち着いて!?」


…危なかった

データの一言がなければ、有名すぎるフレーズを口走ってしまう所だった


「データ、お前、今俺の心の中に突っ込まなかったか?」


「ご主人! そろそろ西側エリアに着くよ!」


AIにはぐらかされた気もするが、まあいい

俺達は東側エリアから西方向にひた走り、殲滅エリアからの離脱を試みている


北の拠点に設置された殲滅兵器は「風魔法誘導加速中性粒子ビーム砲」という

粒子を超高速に加速して打ち出す機構と、風魔法で大気中にビームが通る真空の通り道を作る機構からなる兵器だ


粒子ビームは大気中で発射すると、空気の分子に衝突して減衰してしまう

この欠点を、風魔法で大気中の気体を操り、ビームが通過する極短時間の間だけ真空の通り道を作ることで解決したのだ


まさに、魔法科学の兵器といえるだろう

だがエネルギー量が多過ぎて、そのビームの通り道にはある程度の熱量が放出さててしまう

もちろん、人間を消し炭にするには充分な熱量だ



「はぁはぁ…ラーズ、あとどのくらいなんだ!?」

ウカムが息を切らして聞いてくる


「はぁ…はぁ…、やっと西エリアには入りました…。そろそろ北上していきましょう」

もちろん、俺も息が続かない


ゴールは殲滅兵器より北側まで行くことだ



作戦本部には、俺達が避難出来ていないことを伝えた


「幸運を祈る」

本部は俺達を元気付けてくれた


「ばかやろぉぉぉぉぉぉぉっ!」

俺とウカムは作戦本部に感謝の気持ちを叫び、自力での避難に移る


もちろん意味はわかる

俺達二人を助けるために作戦は止められない

今、エルダードラゴンを止めなければ、想像もつかない被害が出るのだから



インカムから指令が流れる

「…まもなく……誘導…ーム砲……る…」


「…」


俺とウカムは、無言でインカムを聞く

もちろん、可能な限り早く走りながら


このまま北西方向に走り続けて、エルダードラゴンから出来るだけ離れることが生き残る確率が高い選択だろう



「ご主人、発射連絡が来たよ! 後五分後!」

データが受け取った通知を伝えてくる


「ああ、分かってる」

俺も仮想モニターで本部からの一斉通知を確認している


「くそ! ラーズ、もっと離れようぜ」

ウカムが回復薬を飲んで言う


体力回復のためだろう

走りっぱなしで俺も体力が尽きそうだ

俺も回復薬を飲んで頷く


そして、また走る

五分でどれだけ走れるのか、頑張れ俺!




「はぁはぁ…」 「ふぅ…ふぅ…」

二人して息が切れてくる


「ご主人、後三十秒! 隠れて!」

データの警告で、俺達はすぐにビルの影に隠れる





カッ…!


ブォンッ!!





光ったかと思うと、一瞬遅れて突風がビルを揺らす




グギャアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーー




エルダードラゴンの悲鳴? が響き渡る


ウカムがビル壁から覗く

「殲滅兵器が命中か?」


「さっきの悲鳴は、命中したっぽいですよね」


避難のどさくさで偵察用ドローンを無くさなければ、状況が見れたんだけどな


「データ、マップのエルダードラゴンの位置に動きがあったら教えてくれ」


「ご主人! 分かったよ!」


「ウカム、マップ上はエルダードラゴンの動きがない。今のうちに逃げましょう!」


「おう、わかった!」


そして、俺達はまた走る



東方向には黒煙が上がっている

殲滅兵器発射の熱量の影響だろうか


「ご主人! 対象が動いたよ!」


「生きてたの!? どっち!」


「こっちに来るよ!」


マップを確認すると、エルダードラゴンを示す赤い点がこっちに向かって近づいて来る



ガシャーーーーン


ドドドーーン



遠くで何かが壊れる音が響いている


「殲滅兵器で死ななかったのか!?」

俺は、走りながら叫ぶ


「知るかよ! とりあえず逃げるぞ!」

ウカムも叫び返す


叫ばないとやってられないんだよ

どうすればいいのか分からないんだもん



ドドン ドドン ドドン


ガシャーーー ガシャガシャーーーン



「や、ヤバい、地面が揺れてきた!」


エルダードラゴンが近づいて来る振動が、どんどん大きくなっている



「ご主人、ここにいると対象の移動ルートのど真ん中だよ! 左に入ってルートから離れて!」


「よし、データ分かった! ウカムこっち!」


俺は指を刺し、路地へ飛び込む

全力疾走で走る


「次左、すぐに右、突き当たりまで!」

データがナビをしてくれる


この状況で地図なんか見てられないからすごい助かる

AI買って良かったー、データ、ナイスだぞ!



ドドドーン ドドドーン


ドドーン ドドーン


ドーン ドーン



ち、近い!

震動で足が取られる!



ドズーーーーン! ドズーーーーン!



「おわぁ!」


「ウオォォォォ!?」


ビ、ビルの向こう側に、巨大な影が!?


エルダードラゴンがすぐそこまで来ていた

速度が違いすぎる



ドオン! ドオン! ドオン! ドオン!



「…っ!?」


「あ…」



ドオン! ドオン! ドオン! ドオン!



「…」


「…」



ドオン! ドオオン! ドオオーン! ドオオオーン…!



「…あ、あれ?」


「行っちまった…」


俺達二人の脇を巨大な恐竜が歩き去っていった


俺達なんか眼中になかったらしい

当たり前といえば当たり前か…


エルダードラゴンを追いかけるように、空中を人影が追いかけている

BランクとAランクの戦闘員だろう


「よし、ウカム。今のうちに離れましょう」


「また、来た道を戻るのかよ…」


「死ぬよりましですよ、行きましょう! データ、ノクリア属性の討伐記録検索して情報集めといて」


「ご主人、分かったよ!」


俺達はまた走り始める

今来た道を反対側に戻るのだ



「なんだよ、恐竜野郎がこっち来るなら向こうで待っとけば良かったのによ!」

ウカムが愚痴る


全くの同感だ

だが、さすがに疲れて言葉を返す気力もないよ




「ご主人! 大変だよ!」


「え、データどうした?」


「ノクリア属性モンスターの討伐記録の大部分が、メルトダウンを起こしてるんだよ!」


「メルトダウンって…」


メルトダウン

原子炉が、核分裂の熱量を処理できずに熔け出してしまい、大爆発を起こす現象だ


ちなみにノクリア属性魔法は、魔法で作り出した核分裂現象の熱量で魔法構成ごとメルトダウンを起こして発動させるとか…


「め、メルトダウンってことは…」

ウカムが呻く


「早く離れないと、討伐と同時に大爆発だよ!」


データの声に、二人で顔を見合せる


「に、逃げろーーー!」


「うわああああああああああ!」


今日、何キロ走ったんだ!?

そろそろフルマラソンの距離に至ってしまう気がする


「ご主人、この先にコンクリートのビルがあるよ! そのビルの影に隠れよう!」


「でも、逃げて離れたほうが良くないか!?」


「走る距離じゃ焼け石に水だよ! 建物の影に穴を掘って隠れるのが爆風対策にいいって情報が多いよ!」


データはネット情報を集めてくれたらしい

ナイスだぞ!


「分かった、ナビしてくれ!」


「ご主人、分かったよ!」




走る走る走る…!




「はぁはぁはぁ…、ラーズ、ここは?」


「走るのはここまでです。このビルの裏に穴を掘って隠れます」


「え、穴を?」

ウカムがビックリして聞き返す


「メルトダウンの熱風と爆風は、基本上と横に広がります。ビルの影で、更に地下方向に身を隠せば生き残る可能性は高いはずです!」

データからの受け売りだけどな


「わ、分かった! じゃ、穴を掘ればいいな?」


「頼みます、俺は穴を塞ぐ板を探してきます!」


二人で手分けして準備

インカムは沈黙、情報が一切来ない


すぐに鉄板を見つけ、蓋にする

近くの物置からスコップを見つけ、二人で掘る掘る掘る!


十分ほどで、二人が余裕で入れる大穴が空いた

火事場のスーパーパワーだな


「ラーズ、防御魔法だ」


ウカムが防御魔法(小)をかけてくれる

ウカムって回復魔法と、更に補助魔法も使えるんだな


後は…回復薬とカプセルワームを用意

きれいな水かは分からないが、ポリタンクに入った水も万が一の消火用に拝借した


携帯用小型杖に土属性土壁の魔石を装填して、穴の淵に土壁を作ってバリケードにする


後は、運を天に任せるだけだ


「ラーズ、今回はお前と組めて良かったぜ。絶対に生き残ろうな!」


「ウカム、こちらこそですよ。万が一の回復魔法、期待してます」




その時、周囲を閃光が包んだ…!







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