48話 根性
用語説明w
ロケットハンマー:ハンマーの打突部にロケットの噴射口あり、ジェットが噴射の勢いで対象を粉砕する武器
ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ
倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる
サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)
ロゼッタ:MEB随伴分隊の隊員。片手剣使いで高い身体能力を持つ(固有特性)
カヤノ:MEB随伴分隊の隊員。思念誘導弾を使い、飛行ユニットによる空中戦が得意なサイキッカー(固有特性)
現在、ガネシャハッティという魔物と交戦中
防衛作戦が開始されている
今回はうちの小隊だけのミッション
参加はサイモン分隊長、ロゼッタ、カヤノ、俺の四人だ
何気に、1991小隊の戦闘担当四人での出撃って初めてな気がする
改めて、戦闘担当全員が固有特性持ちって凄いよね
ガネシャハッティは、古き神の名を冠した象の魔物でCランクだ
長い鼻の先にハンマーのようなコブがあり、強力な防御魔法と土属性の魔法を使う
こいつは攻撃の度に土壁を作って防いでくるらしい
「弾が通りません!」
アサルトライフルの弾は、先程から土壁と防御魔法を貫通できない
「決め手にかけるねぇ」
ロゼッタも攻めきれてない
「焦らなくて良い、じっくり削っていこう」
サイモン分隊長が、蒼い強化紋章を発動させガネシャハッティの突進を受け止める
「ハァァァッ!」
カヤノが思念誘導弾を複数撃って、多角的な攻撃を行っているが、全方位の防御が展開されている
ガネシャハッティの意思と認識に関係なく、自動で土壁が発動しているのだろうか?
ドドドドッ
ガネシャハッティが再度体当たりをしてくる
「おらぁっ!!」
サイモン分隊長が、気合いを入れて受け止める
…ドドォォォォン!!
受け止めたサイモン分隊長の足元から石柱が突き出す
「ぐわっ!」
サイモン分隊長が不意を付かれて、石柱を足に受けて吹っ飛ぶ
…まずい、追撃が来たらサイモン分隊長は防御ができない!
追撃を防がなきゃ!
俺とロゼッタが同時にサイモン分隊長とガネシャハッティの間に飛び出す
最初に突っ込んだのはロゼッタ
ガネシャハッティは土壁を展開する
ザシュザシュザシュッ!
ロゼッタが三連斬りを繰り出すが、土壁が壊れるだけだ
ガネシャハッティは身を屈めてから、突進を行う
ドガァッ!
「うぁっ!」
ロゼッタが片手剣で受け止めるが、体重差もあり吹き飛ばされる
後は俺だけだ
サイモン分隊長をカヤノが治療しているが、まだ動けていない
…受け止めるしかない
絶対さ後ろには下がんねぇ…根性をみせろ!
俺は覚悟を決めてロケットハンマーを構える
ボッ!!
ホバーブーツのエアジェットを噴射、一気に突っ込む
ドガァッ!!
ぶつかる瞬間に、ロケットハンマーのスイッチをON
ハンマーのジェットでぶん殴る
「パオオオオオオ!」
ガネシャハッティが悲鳴をあげる
攻撃が通った!?
ブオンッッ!!
ガネシャハッティが鼻をハンマーのように振り回して、俺を叩き潰しにきる
鼻の先に付いたコブは、鉄の塊のように硬い
俺は思いっきり踏み込んで、横から飛んでくる鼻を受ける
ゴッ…!!
「うおああぁぁぁぁぁぁっ!!」
打点をずらし、コブの根本で鼻を受け止める
直撃ではないがかなりの衝撃だ!
踏ん張る足が地面を耕すように体が押し込まれる
ホバーブーツのエアジェットで推進力を確保、止める!
「おああぁぁぁぁぁっ!」
止まった鼻をそのまま押し戻して、ガネシャハッティの顔の先へ
ボッ! ドガァッ!!
ロケットハンマーのジェットで思いっきりぶん殴る
「パオオオオオオッ」
牙をかち割られ、ガネシャハッティが仰け反る
「があああぁぁぁっ!」
俺は再度ホバーブーツのジェットで突っ込む
「ばかっ!強引すぎだ下がれ!」
ゴガァッ!!
「うがっ!」
サイモン分隊長の声を聞くと同時に、ガネシャハッティの頭突き突進で俺は空中へ打ち上げられる
だがフェムトゥの装甲と、外骨格の保護力のおかげでそこまでダメージはない
空中で体勢を立て直して着地まで出来る余裕がある
サイモン分隊長が動けるようになったようだ
俺は倉デバイスからロケットランチャーを取り出す
「ランチャー行きます!」
みんなに注意を促して…発射
ボシューッ!
発射筒を投げ捨て、すぐに接近する
ガネシャハッティが土壁を展開
これにロケットランチャーが突き刺さる
ドゴォォォン!
爆発して割れた土壁に突っ込みながら、ロケットハンマーを振るう
ドガァッ!
「パォォォ!」
攻撃がまた通った!
土壁を発生した直後は、発生した土壁がまだ魔素に戻って消えていない
この場合はまだ、同じ場所に土壁を作れないらしい
ロゼッタが俺の後ろに来る
「ラーズの攻撃に合わせるよぉ!」
ロゼッタも理解したようだ
「行きます!」
俺が先に突っ込み、ロケットハンマーを振るう
ドガァッ!
お決まりの土壁が展開され、それを砕く
砕いた隙間にロゼッタが突っ込む
ザシュッ ザシュッ ザシュッ
「パォオォォォォン!!」
おぉっ! ロゼッタの斬撃が全部通った
ガネシャハッティは右前足を折ってうずくまり、動きを止める
「ラーズ、とどめにこれ使って!」
カヤノが俺のところに来て変わった形のロケットランチャーを渡しに来た
「え、何ですかこれ? 重っ!」
「携帯用バンカーバスターよ。ロゼッタ、これに合わせて!」
「おっけぇ!」
「ロゼッタの攻撃終わりに私が続くわ」
「了解!」
俺はバンカーバスターを担いで、ガネシャハッティをターゲットに設定する
「撃ちます!」
「あっ…」
カヤノが何かを言いかけると同時に俺は引き金を引く
ドゴォォォォ!!
「ぐわっ!?」
発射と同時に、凄まじい衝撃で俺は後ろに吹っ飛ぶ
「それ、無反動じゃないって言おうとしたの…」
さ、先にいってくれ
仰向けで空を仰ぎながら、カヤノに文句を言う
…もちろん心の中で
バンカーバスターは貫通力に特化した砲弾だ
高速で対象に「突き刺さり」、その後爆発する
突き刺すために、発射装置が反動を殺せないくらいの威力で飛び出す
バンカーバスターが、ガネシャハッティの作る土壁に突き刺さる
ボゴォッ!!
「パォ…ォォ…!」
土壁が爆発し、そのエネルギーがガネシャハッティを貫く
更にロゼッタが、バンカーバスターの作った土煙に飛び込む!
ザシュッ!
「…ッ!」
もはや、ガネシャハッティは声をあげられない
離れたロゼッタに代わり、更にカヤノが雷属性の範囲魔法(中)を発動
バリバリバリバリ!
ヒュオォォォォ…ドオォォォンッッ……
ついに、ガネシャハッティが倒れこんだ
・・・・・・
「お前らよくやったな。防御役の俺が戦線離脱したのはミスだな、すまなかった」
サイモン分隊長が、足を引きずりながら歩いてくる
「いいんですよ、分隊長。無事倒せましたし、いいチームですよね」
カヤノが笑いながら言う
「分隊長ぉ、今日は奢りですねぇ? ゴチになりまぁす」
ロゼッタは…、マイペースだな
「強かったですね…。銃弾の効かない敵だと、俺は全然貢献できないですね。攻撃方法を考えないと…、ロケットランチャーをもっと持ち歩くか…?」
「何をブツブツ言ってやがるんだ!? お前、自分の貢献度を理解してないのかよ。実際、お前があの象の突進を止めてくれなかったら俺は危なかったんだぞ?」
サイモン分隊長に、ガシッと頭を掴まれてワシャワシャされる
「そうだよぉ。ラーズが土壁の壊し役やってくてたから、あたしの斬撃が届いたんだしぃ」
…めっちゃ誉められた
どうしよう、恥ずかしいし嬉しいし恥ずかしい
「ラーズ照れてるぅ?」
ロゼッタがニヤニヤしていじってくる
「…!」
やっぱり顔に出てるか?
ポーカーフェイスに戻さねば
「攻撃特化の私達にはいろいろ出来るラーズが必要よ。ただ、興奮して象に正面から力勝負を挑むのは危ないわよ?」
カヤノが冷静に評価する
…確かに頭に血が上ってたな
反省しよう
「ま、俺はお前達全員信頼してるからよ!これからも頼むぜ」
「さ、象さんを解体して内臓捨てちゃいましょう?」
カヤノの一言で、全員が動き出した