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44話 舐められるということ

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシンを運用・活用するシステム。ラーズの固有特性となった

フェムトゥ:外骨格型ウェアラブルアーマー、身体の状態を常にチェックし、骨折を関知した場合は触手を肉体に指して骨を接ぐ機能もある

偵察用ドローン:カメラ付きドローンで、任意の場所にとまらせて偵察カメラとして使い、PITで画像を受信する


サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)

戦場は弱肉強食

モンスターも兵士も生き残るために戦い、強い方が勝つ


強さってのは、戦闘力だったり、人数だったり、戦術だったりその時々で変わるんだけども


そして、この弱肉強食は戦場だけのものではない

しかも、戦闘や喧嘩だけじゃない


例えば、職場で仕事を押し付たり、学校でのいじめであったり

そこに共通する原因の一つは、精神的な弱さに付け込まれること

要は舐められるってことだ


精神的な弱さなんて誰でも持っている

だが問題なのは、舐められることは防衛軍では死に直結するってことだ


舐められることを軽く考えてはいけない




防衛作戦が発令

今日はサイモン分隊長と俺が参加している


偵察用ドローン、フェムトゥとホバーブーツのチェックをして、イズミFの弾、小型杖の魔石、陸戦銃とモ魔を確認する

モ魔も、そろそろ風属性以外の巻物を使ってみるかな


お、サイモン分隊長が作戦会議から戻ってきた


「ラーズ、今日はヒートブレードのサウルが出てるらしいぜ」


「ヒートブレードのサウルって有名な人ですか?」


「高性能サイボーグだな。手足に高熱ブレードを仕込んで何でも切り裂き、熱量をジェットとして放出して中距離攻撃もいけるって話だ」


「凄いですね。それだけの熱量をどうやって確保してるんですかね?」


「倉デバイスの亜空間魔法技術を応用して小型原子炉を搭載してるらしいぜ。火属性回路を使って熱効率も良いらしいしエネルギー切れはないんだろうな」


「Bランクでも通用しそうな固有特性ですね…」


「ランクはC+らしいぞ。だけど固有特性持ちはお前も同じだろうが」


「だって、私の固有特性って怪我が速く治るだけで地味ですからね…」


C+ランクって戦車を超える戦闘力を持つってことだ

片や俺の固有特性であるナノマシン集積統合システムは、今のところ怪我が若干速く治るくらいだ

もちろん、怪我が速く治るのもかなり有効な能力ではあるんだけど


サイモン分隊長は飲料水と携帯食をもらいに行ってしまった

俺も出撃前の確認を終わらせよう

アイテムを忘れると、死に直結するからな



「おう、お前新人か?」

突然、横柄な態度で三人組が声をかけてきた


一人は防衛軍の防弾アーマーとは違う、おそらく固有装備であろう茶色い鎧を着たノーマンの男

他の二人は防衛軍の防弾アーマーを着た魚人の男だ


「…はい?」


「なんだお前、新人なのに挨拶もできねぇのか? その鎧って固有装備だろ、新人のくせに固有装備なんか使いやがって生意気な野郎だな」


何なんだこいつ

俺はお前の小隊じゃないんだから新人とか関係ないだろう


「1991小隊のラーズです。今回の作戦に参加させてもらいます」


「挨拶くらいしっかりやれよ? こっちは二十回以上作戦に参加してるんだからよ。やりたくもねぇ新人の世話やらされてたまらねえよ」


ん? 二十回?

俺でもクエストや仮採用時の出撃入れたら、もうすぐ二十回くらい行きそうだぞ


しかも、態度の悪いお前に世話焼いてもらうつもりないし


「聞いてんのかよ、お前!?」


「えっ!? …あ、はい、すいません」


あ、いきなり大声出されて、つい謝っちゃった


「おう、どうしたラーズ」

サイモン分隊長が戻ってきた


「あ、サイモン分隊長」


「ちっ…」


舌打ちをして、三人組がはサイモン分隊長の姿を見てどこかへ行ってしまった

分かりやすいな


「なに絡まれてんだよラーズ」


「いや、挨拶がないとかいきなり言われたんですよ。ビックリしました」


「あの茶色い鎧のやつは新人いじめで有名なやつだ。舐められると目をつけられるから気を付けろよ」


あいつの名はドム

サイモン分隊長曰く、過去にあいつと組んだ新人が辞めたり不自然に負傷したらしい

だが、防衛軍幹部の息子ということで今のところ処分された様子はないそうだ


めんどくさいな

関わらないようにしよう



・・・・・・



作戦が始まった


今回の敵は、河の上流のダムに現れた小規模のマーマンの群れ

人種としての魚人と違い、魚に人間の手足が生えたような半魚人のモンスターだ


このマーマンの中に魔法を使う種がいるとのことで、危険レベルが一段階上がり複数小隊の合同作戦となった


水魔法は、水辺ではかなり危険な魔法となる

水辺で水魔法を使う敵と戦うのはかなり危険なのだが、放っとくわけにもいかない


俺は出現ポイントの一つに配置となった

ダム湖に近い林の中だ


木の枝に偵察用ドローンを着地させ、いつものように偵察カメラにする

思ったより湖が近いから引きずり込まれないようにしないとな



「なんだ、またお前かよ?」


げっ…さっきの三人組だ


「なんだお前、生意気な野郎だな。挨拶はどうしたんだ!?」


「…よろしくお願いします」

めんどくさいよ、何なんだこいつは


「お前、その鎧は自前か?」


「はい、固有装備のフェムトゥという外骨格型アーマーです」


「新入りの癖に生意気なんだよな、自前なんか百年早いぜ。ちょっと脱いで見せてみろよ」


な、何を言ってるんだ?

作戦開始直前に鎧脱げとかバカなのか?


「いや、もうすぐ作戦開始なのに無理ですよね」


「てめえ、新入りの癖に口答えしてんじゃねえよ!」


「は?」


ドムはいきなり激昂して大声を上げる

すると、取り巻きの魚人二人が俺の腕を左右から掴んできた


「仕方がねえから教育してやるよ」

ドムはそう言ってニタリと笑い、俺のアーマーを脱がそうとしてきた


「やめてください!」


なんだ、バカなのか?

何で無理やり鎧を脱がそうとしてくるんだ


身をよじって振りほどこうとするが、魚人二人にうつ伏せに倒され押さえつけられる


「暴れるんじゃねえよ。お前なんかが大層な鎧使ったってしょうがねえんだからよ」


「自前の鎧は高いっすからね。百万はいきますよ」

魚人二人もニヤニヤしながら言う


まさか、俺の装備品を奪おうとしてるのか?

これから防衛作戦が始まるのに!?


防衛軍には規律やルールがあり、罰則が存在する

それなのに、こんな暴挙に出るのか?


「ドムさん、この鎧体に張り付いて脱がせられねえんすけど」


「あぁ? そんなわけあるかよ」


俺のフェムトゥは呪われてる

脱げなくなる呪いがこんなところで役に立つとは


拘束の手が、鎧を脱がすことに集中して緩む


ガンッ!


「ギャッ!」


右回りに回転して、思いっきり魚人の顔をぶん殴る

その勢いのまま、拘束から離脱



「なんなんですか!? 防衛軍内で強盗とか信じられないんですけど!」


「抵抗するんじゃねえよ!」

ドムが背中の長剣を引き抜く


マジで!?

まさか、切りかかって来るのか!

もうダメだ、さっさとインカムで助けを呼ぼう


ドムが切りかかって来る


フェムトゥの装甲は剣なんかじゃ切れるわけない

左腕でガードをする



ズバッ!


「…っ!!」



ドムの長剣が豆腐のように俺の左腕の中程を切断した


え?

装甲ごと腕が切断…!?




「ぐあああああああああぁぁぁぁっっ!!」




腕が切断された現実にパニックになる

装甲の一部が切れずに残り、左前腕の中程から先がぶら下がっている


剣で装甲が切れるはずがない

だが現実に切られた


出血がヤバい!!

付けないと くっつけないと!

どうなってる? 何で切れた?


パニックになりながら右手でカプセルワームを取り出し、切れた腕の先にくっつけ切断面同士を押し付ける


焦ってるからか、熱いと感じるだけで痛みはない



「わっはっはっは! 馬鹿かお前、カプセルワームを使ったって腕がくっつくわけないだろうが!」

「ドムさんの剣は超振動ブレードだぞ。そんな薄っぺらい装甲真っ二つだぜ」

「せっかくの装備を傷つけるんじゃねえよ。さっさと脱ぎな!」


三人が口々に俺に言葉を投げ掛ける




「…っ!」 「な、なんだ!?」 「うわあああああ!」


ドドドドドドドドドド……!!!




その時、突然の鉄砲水が俺達を襲った…








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