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閑話5 補給搬送任務

用語説明w

シグノイア:惑星ウルにある国

ハカル:シグノイアの北に位置する同国と戦争中の国


MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット


ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長

サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)


ハカルとシグノイアの国境は、低山で隔てられている

この低山には観測基地がある


低山とはいっても、この観測基地までの道のりは危険だ

モンスターも出る険しい山道なのだ


今回の任務は、この観測基地への補給部隊の護衛だ

本来は国境付近を管轄する小隊が行う任務なのだが、人が足りない場合には他の小隊が応援を出すのだ


補給部隊は軍用トラック一台だ

MEB一機と、護衛車両数台で護衛している

俺とサイモン分隊長は、最後尾の護衛用車両で追従している



「俺達は海沿いの管轄なんだぜ? 何でわざわざ国を縦断しなきゃいけないんだ」

サイモン分隊長が愚痴っている


「国境から一番遠い場所ですもんね。私達の隊舎って」


ハカルとの国境はシグノイアの北、俺達の1991小隊の管轄は南の海沿いだ

わざわざ俺達が国境近くまで行くより、もっと近い小隊がいくらでもあるはずだ


だが、各小隊が平等にこの任務に付くためこういう不合理が生じるのだ


「だいたい、国境を管轄する小隊が人数足りないっておかしいだろうが」


「そうなんですか? 国境が近いとハカルからの斥候やモンスターも来るし、低山に自生するモンスターも多いだろうし忙しいそうですけど」


国境付近は敵国が近いし、そもそも国境の低山自体に自生するモンスターが多く、防衛軍の仕事は多いのだ


「だが、その分国境付近の小隊は隊員数が多いんだぞ。観測基地を管轄している小隊なんか百人近く隊員がいるはずだぜ」


「百人って、私達の七、八倍の隊員がいるんですか!? すごいですね」


「うちの小隊が少なすぎるってのもあるけどな。うちは十三人か? こんな弱小小隊なんか他に無いと思うぞ」


「管轄地域も狭い訳じゃないですしね。なんか不公平感ありますよね」


普通の小隊は三十人くらいで構成されているので、十三人というのは防衛軍の中でもかなり数が少ない方だ


「だが、戦闘ランクだと逆なんだよ。戦闘班が見習いのお前を除けば四人全員がCランクだからな。Cランクが複数いる小隊なんて、なかなか無いからな」


「すごいですよね。他の小隊に持っていかれたりはしないんですか?」


「本部からは、Cランクが集まり過ぎているから何人か他に異動させてくれって言ってきているみたいだな。だが、ゼヌ小隊長が断ってくれてるんだ。なんたって、戦闘班全員がこの小隊に来てからCランクに上がってるからよ。育てた小隊は異動を断れるんだ」


防衛軍全体でもCランクの戦闘員は多くはない

Cランク戦闘員がいる小隊は全体の半分より少し多いいくらいで、複数のCランク戦闘員がいる小隊なんて数えるほどだろう


「うちの小隊って雰囲気いいから、人が入れ替わって欲しくないですよねー」


「そういや先週、どっかの小隊で射撃訓練中に他の隊員を撃ったやつがいたらしいぞ」


「え!? 大事件じゃないですか」


「かなり酷いいじめがあったみたいでな。いじめられてた隊員が遂にキレたらしいな。監察も入って、いじめてた隊員や小隊長分隊長も処分喰らってたよ」


「…この小隊でよかったです」



道程は半分ほど、ここから道が険しくなる

俺達は管轄外の隊員のため、道筋が頭に入っていないのが辛い

急勾配の坂に差し掛かった


「おい、手を貸してくれ! その車で引っ張って欲しいんだ!」


前を見ると、補給のトラックの隊員が手を振っている

俺達は車を降りて隊員の所に行く


「何だぁ? トラックが重すぎてこの坂を上がれなかったのかよ」


「MEBで引っ張った方がよくないですか?」


しかし、隊員は首を振った


「違うんだ。この坂が昨日の雨でぬかるんでいて、MEBが上がれないんだよ」


見ると、MEBが前のめりで坂に両手を突いている


「二足歩行だと、一歩踏み込むときに片足の面積で体重をを支えてしまうから、柔らかい地面に沈み込んで滑ってしまうんだ」


「あのMEBって護衛なんだろ? 護衛が足引っ張ってどうするんだよ…」


そう言いながら、俺達は護衛車両を前に出して鎖をMEBにかけた

車両三台でMEBを引っ張る


ギギギ… ズシャァッ!


だが、やはりMEBが足を滑らせ倒れてしまった


「ちっ、しょうがねえか…。ラーズ、運転頼むぞ」

そう言ってサイモン分隊長が車を降りて行く


他にも、固有装備であろう鎧を着た重量級の隊員達がMEBの周りに集まった


「先に地面の水分飛ばせよ!」


誰かが声をあげ、火属性魔法が地面に撃たれる

白い湯気が上がり、地面の水分が多少は蒸発したようだ


「よし、行くぞ!」


MEBが一歩を踏み出す

その足を重量級隊員達が押さえ、車両が鎖を引く



ギギギギ、ズシャッ、ズシャッ、ズシャッ…


「おー!」 「やった!」 「よし!」


MEBが足を踏み出し、足を取られることなくそのまま坂を上がりきった

隊員達から歓声が上がる


その後、また隊列を組み直して十分休憩を取る


「お疲れ様でした」

俺は、補給部隊が配ってくれたスポーツドリンクをサイモン分隊長に渡す


「今回は強化鎧のやつがいないし、身体強化魔法使える奴もいないしよ、本当の体力勝負になっちまったよ。重量級の奴が何人かいてよかったぜ」

サイモン分隊長はうまそうにスポーツドリンクを飲み干す


トラブルはあったが、もう大丈夫だろう

後は、観測基地にたどり着くだけだ


休憩を終え、各自が出発の準備を始める

俺達も車に乗り込もうとした


その時…


「おい、緊急連絡だ! 近くでモンスター討伐をやってるぞ! 範囲魔法(大)を使うから衝撃に…」



…ドオォォォ……



その時、遠くで爆発音がした


「伏せろ!」



ゴオォォォォォォーーーーッ!


「ぐあっ!」



爆発音の一瞬後に、凄まじい突風に襲われた

サイモン分隊長に言われてすぐに伏せたおかげで吹き飛ばされずに済んだ


「ったく、連絡遅いだろ!」

サイモン分隊長が、体を起こしながら怒鳴る


「危なかった…」


その後は、特にトラブルなく観測基地にたどり着いた



…この国を守るために、いろんな所で仕事が行われているんだな




 

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