表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/396

閑話4 関係機関との連携

用語説明w

MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット

ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ


サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)


俺とサイモン分隊長は目を見張る


「一杯いますね…」


「何なんだよありゃ!?」


郊外の廃ビルの前に、消防隊、警察官、役所の職員までが集まっている

その集団を遠巻きに、さらに住民が野次馬と化して包囲している状況だ


「悪霊退治のクエストで間違いないんですよね?」


「ああ、間違いないだろ」


そう、俺達は廃ビルに取り憑き地縛霊と化した悪霊退治のクエストを受けたはずなんだ

何でこんな大騒ぎになってるんだ?


「ちょっと聞いてきますよ」

そう言って俺は、言い争っている警察官と消防隊員の側に向かう



「もうすぐ倒壊するんだぞ! 住民の安全を考えろ!」


「もう待避済みだろ! 捜査の邪魔をするな、被害者の身になってみろ!」


かなり激しく言い争っている


「あのー、クエストを受けさせてもらった防衛軍なんですけど…」


「あぁ!?」 「お!」

警察官と消防隊員が振り向く


興奮をこっちにぶつけないでよ?


「…状況を説明してもらってもいいですか?」



それぞれが説明してくれた


消防隊員は、廃ビルの倒壊の危険性があるため、MEBとクレーン車を使ってビルを壊し始めたいらしい

だが、悪霊がいて危険なため防衛軍の除霊待ちとなっている


警察官は、ある組織的な事件捜査中だ

ここの悪霊は、このビルの元オーナーで、組織的な殺人、監禁、詐欺の関与が浮上している

組織的な犯行の裏付けには、この悪霊の記憶と言い分を捜査する必要があり、それができればこの組織の構成員を一発有罪に出来るとのこと



「…じゃ、除霊は待った方が良さそうですか?」


「一番は、悪霊を封印してビルから引き剥がしてくれると助かるんだが…」

警察官が言う


しかし、霊を封印する封印石は高い

もちろんそんなもの持ってきてないし



「あなた方は何なんですか?」

後ろの役所の係員らしき人に確認する


「私は市役所の環境整備課です。管轄内の事案ですので、処理は警察と消防の方にお任せします」


「うちは税務署です。実はこの廃ビルのオーナーが生前、税金を滞納してこのビルを差し押さえているんです。ですので管理権がうちになっているので立ち会いをしています。消防、警察さんに処置はお任せしていますのでうちは気にしないで下さい」


「そ、そうですか。分かりました」


凄い温度差あるな

まあ、それぞれ担当分野が違うから仕方ないよな



ガラガラ… ドォン…!



その時、ビル内で何かが崩れる音がする


「うわっ!」 「下がれ!」 「きゃあぁぁぁ!」


それぞれが声を上げて廃ビルから離れる


「早く結論を出さなきゃまずいな。おい、あんたらの中で、誰か封印石を持ってないのか?」

サイモン分隊長が集まった公務員に言う


「か、確認します」

それぞれが、電話で確認をし始める



「でも、これだけ倒壊しかけているビルの中で除霊ってきつくないですか?」


「きついだろ。高機動戦闘や空中戦が出来る奴が入るしかないだろうからな」


「…え!? 何ですか、その限定!」


「下手すりゃビルから飛び降りなきゃいけないんだぞ? ホバーブーツとか履いてなきゃ死んじまうだろうよ」


「…ホバーブーツ履いてたって死にますって」

ホバーブーツは、空を飛ぶようには作られていない


「悪霊のいる階を特定、一気に封印、そして脱出! それ以外にここにいる全員が納得する方法はないだろう?」


「うぅ…」




・・・・・・




「差押さえ物件の中に、すぐに用意できる封印石がありました!」

税務署の職員が声を上げた


ナイス税務署!


「ただ税金という金銭の扱いなので、お渡しができません。買取りという形でならお渡しができるのですが…」


うわ、面倒くさいお役所仕事だな


「警察が買い取ります。捜査費用という事で、許可を取りますので!」


おお、ナイス警察官!


「後、場所が隣町の倉庫なので持ってくるまでに時間が…」


「うちの提携業者に空輸運送がいますよ。すぐ手配して持ってこさせますよ」


おお、ナイス市役所!


「よし、そちらの手配は任せた。消防隊、こっちへ来てくれ」

サイモン分隊長が、突入の準備を始める


でも、突入するのは俺ですよね?


「悪霊のいる階の特定は?」


「五階です。災害用ドローンで確認済みです」


「五階の間取りは分かるか?」


「あ、それは税務署の方が…、税務署さーん、間取り図貸してください!」


税務署の職員が冊子を持って来る


「これです。差し押さえ物件の五階の間取りですね」


道路に面した広いワンフロア、奥にキッチンとトイレが設置され、階段に繋がる


ドローン映像では、そこまで崩れてはいない


「警察さん、悪霊はどんな人間だったんだ? 暴れるのか?」


悪霊は生前の性格を引き継いだ上で、だんだん人格が崩れていく


「いえ、小市民で卑屈、ただ顕示欲が強かったみたいですね」


「そうか、分かった。ラーズ、喧嘩慣れした感じはなさそうだ。窓から一気に突っ込んで驚かし、その隙に封印しろ」


「はい、分かりました」


他の公務員が見ている以上、強気に答えなければ

こっちも防衛軍の看板を背負っているからな


「消防さん、MEBで布広げてうちの隊員を受け止められるか?」


「可能です、任せてください」


おお、ナイス消防隊!


「よし! では、封印石が届いたら除霊を開始だ」


「「はい!」」 「了解!」 「よし!」


それぞれが声を上げた




・・・・・・




「封印石届きましたー!」


持ってきたのは、座席と持ち手を着けた運送用カスタムタイプの箒に乗った女性だった


「お、空輸運送はさすがに早いな」

サイモン分隊長が封印石を受けとる


魔法の箒は、魔力、バランス、操作と複数のセンスが必要な乗り物だ

だが、小回りも効き障害物も関係ない、運送業速達部門の不動の一位の乗り物だ


「なあ、箒の姉さん、ちょっと協力してくれないか? この投擲砲を空飛びながら撃つことは可能か?」


「え? 大丈夫だと思いますけど」


「なら、五階にこの弾を撃ち込んでもらえないか? 撃ったらすぐに待避してくれていい」


「え、はい、それくらいでしたら」

そう言って、箒の女性は投擲砲を受け取った


投擲砲は、火薬の力で弾を撃ち出すだけで威力はない

撃ち込む弾は、除霊線香玉だ


除霊効果は高くないが、除霊用線香の煙を吹き出し、悪霊を可視化し動きを止める効果がある


「よし、やるぞ! 箒の姉さんはビルに近づかないでくれ。撃ったらすぐに降りてくるんだ」


「はい、分かりました!」


「ラーズ、箒の姉さんに屋上まで運んでもらえ! 線香玉撃ち込んだら突入だ!」


「了解!」

俺は箒のお姉さんに頭を下げて屋上まで運んでもらう


始めて乗ったが、空とぶ箒って揺れるし結構怖いぞ!


「消防MEB、準備を頼む!」




……







こうして、除霊作戦が始まった



ボヒュッ… ガチャーン!



箒のお姉さんが投擲砲で五階に線香玉を撃ち込む

屋上の上まで白い煙と線香の匂いが上がってくる


「ラーズ、悪霊は部屋の階段側中央だ! 突入しろ!」

消防隊のドローンで五階フロアを確認したサイモン分隊長の指示が飛ぶ


俺は屋上から五階のバルコニーに降り、窓を蹴破って突入する



「ガアァァァァァ!」


フロアの奥に悪霊がいていた

線香が効いて苦しいのか、叫んでいる


俺はホバーブーツのエアジェットで一気に突っ込み、封印石を持った手を突き出す


「このビル$#俺の%¥*だぁぁ*%>!!」


わめき散らす悪霊を封印石で一気に吸い込む

だが、その間際、悪霊が念動力を、テレキネシスを放った



ガラガラ… ズズズーーーーン!



まずい、天井が崩れる!

俺は悪霊を封印した封印石をしっかり握り、一気に外に飛び出す



「うわあぁぁぁぁぁぁっ!」


ばふっ!



俺は、消防用MEB二機が持つ布で受け止められた




その後、消防隊員が廃ビルの安全措置を取りながら、撤去作業に入った

俺達は警察官に封印石を渡して任務終了


「協力感謝します」


箒のお姉さんに、お礼を言って解散となった

後日、箒のお姉さんには警察から捜査協力の感謝状が出るそうだ




討伐や除霊だけじゃない、各組織と一般業者との連携作業

こんな複雑な任務もたまにはあるもんだ




いろいろな機関で社会が成り立っているというお話

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ