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27話 引退者

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシンを運用・活用するシステム。ラーズの固有特性となった


フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹

近くにある公園のオープンカフェでジャンと待ち合わせ

ジャンはもう来ていた


先ほど『妹も連れていくことになりました。怪我の事は言わないで』とメッセージを送ってある


完璧だろう


「あそこだ」

ジャンが手を挙げている


「お待たせしました、ジャン」


「初めまして、ラーズの妹のフィーナです」


「休みなのに急に呼び出して悪かったね。ジャンです」

お互いに挨拶して席につく


俺は、アイスを取り出してジャンに渡す

「ケーキ屋にいたんですよ。よかったら」


アイスを買いたいが、ジャンに合ってたら溶ける

だが、諦める選択肢はないという状況のもと、フィーナが出したジャンと一緒に食べよ?という結論だった


「おぅ、悪ぃな」

ジャンはアイスを食べ始める


「それで、今日はどうしたんですか?」


「もちろんお礼を言いに来たのさ。それとお前の怪我の様子を見にな」


「おおぉぉぃ!? 怪我なんか全然してないよ! 何で!?」


「え、だって俺のせいで火だるまになったら心配するだろ?」


このおっさん、まさかメッセージ見てないのか?

やべぇ、どうする!?


フィーナをチラッと見ると目が合った


「火だるまって…? 大丈夫だったの?」


「火だるまは大袈裟だよ!ちょっと火傷しただけ、火属性がかすったからね!」


「いやお前、あれはかすったなんてもんじゃ…直撃だろ?」


「そ、それよりお礼なんていいんですよ!ジャンは今回のペアですし、ジャンが言ってくれたおかげで金一封もらえて、小隊長からも誉められましたよ」


しどろもどろになりながらも怪我から話題を変える


すると、フィーナの目が不思議な色に光っている


「お前、解析系魔法使ってるだろ! やめろって」


「下顎や首辺りの皮膚が新しいね? 火傷は本当に大丈夫だったの」

ジロッと睨むフィーナさん


「軽傷だよ。だからすぐ戻ってきてるんだろ?」

本当はナノマシンのお陰だけど


「…ならいいけど」

一応納得したらしい


固有特性を持った事は言ってなかったけど、黙っていよう

そうしよう


「嬢ちゃんは魔法使いなのか?」

ジャンがフィーナを見る


「勉強中で、嗜む程度ですよ」

一応謙遜してる


範囲魔法(大)を嗜むBランクの戦闘員だけどな


まあ、フィーナは二年飛び級した、まだ21歳の本来なら学生の年齢だからそうは見えないよな


「ところでジャン。さっきメッセージ送ったんですが?」


「ん?…おぉ、すまん気付いてなかったよ。ちょっと忙しく連絡取り合ってたからさ」

笑いながら頭を掻くおっさん


このやろー…


ジャンは話始める

「実は、防衛軍を辞めることにしたんだ」


「え!?」


「もう、年だからな。潮時ってやつさ」


「まだまだ、戦車ぶっ壊すくらいは余裕な動きをしてましたけど?」


「…お前が庇ってくれた火属性魔法あるだろ? 本来なら獣化してる俺は魔法の発動が臭いで分かるはずだったんだ」


「臭いで…ですか?」


「そうだ。魔素の動きが分かるって言うのか、魔法発動の時に鼻で感じるんだ。だが、最近は嗅覚が鈍っててな、前回は全く気づかなかったんだ」


「…」


「五感が鈍ったらさすがに引退だ。最後にお前と組めて良かったよ」


「そんな、俺なんか何も…」


「戦場に何度もいると、味方にも糞みたいな奴がいるもんさ。わざと助けないで装備を死体から剥ぐ奴とかな」


「そ、それは確かに糞みたいですね」


「その点、お前は俺を助けた。しかも、二人とも動けなくなってたら殺られてた状況だった。経験や計算は必要だが、たまたまでも正解を引き当てる強さってのも必要だぜ」


「はぁ…」


「そんなおまえに大先輩からプレゼントを持ってきたんだ、受け取って欲しい」


「何ですか?」


「俺の相棒だ」

そう言って、ジャンは倉デバイスから「戦車壊し」を取り出した


「それって…」


「こいつはまだまだ現役だ。元々は十年前の戦争が終わるときに引退した奴から引き継いだ物をカスタムしてきた物だ」


「…」


「遠慮はいらないぜ。錆びて朽ちるよりは必要な場所でこの国を守るために使ってほしいんだ」


「分かりました、そう言ってもらえるならもらっちゃいます。ありがとうございます」


「ああ、こっちこそありがとうな。」


俺は、今回の金一封の五万ゴルドと自分の五万ゴルド、合わせて十万ゴルドをジャンに払う

「少ないですが、受け取って下さい」


「いいのか? 仕事辞めるにあたって、物入りだったから助かるが」


「五万はジャンのおかげで貰えた賞金ですよ。ロケットハンマーをちゃんと売ったらもっと高く売れるでしょ? こっちこそこれしか出せなくて申し訳ないです」


「命を救ってもらった代金にしちゃ安いもんだ。ありがたくもらっとくよ」


い、いきなり近接武器が手に入った

嬉しい


ドラゴンブレイドと併用するか、整備長に言って戦車壊しに刃を移植してもらうか


「そういや、さっき隊で聞いたんだけどよ」


「え?」


「ラーズ、お前固有特性持ちだったんだってな。何で黙ってたんだよ?」


「おいぃぃぃ! 何言ってんの? 何で今言うの!?」


「え、だって別に隠すことじゃないだろ」


「こ、固有特性!?」

フィーナががっつり喰い付いてきた…



・・・・・・



結局、ジャンの口からフィーナにかなりの情報が漏れてしまった


「メメント・モリを忘れるな。死ぬなよ」

ジャンは別れ際に、俺に言葉を残していった



帰り道にて


「帰ったら正座だからね?」

フィーナが笑顔で言う


大先輩からの教訓を反芻する余裕は無さそうだ…



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