26話 火傷休み
用語説明w
MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット
PIT:個人用情報端末、要はスマホ
ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシンを運用・活用するシステム。ラーズの固有特性となった
モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる
フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹。
前回の作戦で負った傷は結構な大火傷だった
火傷を負った俺は、皮膚の再生のために医療用カプセルに入った
今回は火傷の面積が多かった
回復魔法を併用しても、普通2日間はカプセルの回復溶液に浸からなきゃ皮膚の再生は終わらないレベルだったらしい
だが、ナノマシンの回復作用で12時間ほどで皮膚が再生した
ぐっすり寝てたら治療が終わる、助かるぜー
フィーナに火傷のことを言うとまたうるさく言われるから黙っとこう
きれいに治ったから大丈夫なはずだ
「魔法の直撃はダメ… ナノマシンがあるとはいえ、下手すると火傷はショック死もある…」
エマに注意される
「魔法って詠唱を隠されると回避が難しいんだよね。壁の向こうで詠唱されて広範囲に発動されたらどうしょうもないよな…」
俺は、なるだけ気を付けると言って立ち上がる
エマが作る毒耐性をつける特製毒ジュースを飲むようになり、エマとは結構コミュニケーションをとれていると思う
エマにお礼を言って医療室を出る
大怪我をした甲斐あって、俺は今回の作戦のMVPみたいな扱いになっていたらしい
ジャンと二人で戦車を破壊したという事、さらにジャンを救ったことをジャン自身がしっかり小隊長に報告してくれたそうだ
俺は応援の隊員だったこともあり、金一封も出た
五万ゴルド…めっちゃ嬉しい
早く個人AIと鎧買わなきゃな
鎧は魔法耐性もついた物にしよう
・・・・・・
「お疲れ様、大活躍だったのね。だけど最近怪我が多いからしっかり休みをとってリフレッシュしてきなさい」
ゼヌ隊長に優しい言葉をかけてもらい、非番をもらった
ラッキー
ゼヌ隊長がサラッと、随伴分隊のカヤノ隊員が他小隊の応援から戻ったと重要な情報を言っていたが、疲れてるし今日は素直に休ませてもらおう
次の出勤で挨拶に行けばいい
フィーナに連絡すると、昨日テレビでケーキ屋の番組をやっていて行きたいとのこと
フィーナは夜勤明けで昼前に帰ってくるらしい
店集合でと待ち合わせとなった
…が、並んでやがる
テレビ効果か、チェーン店なんだけどな
フィーナにメッセージを送ったら「並んどいて」だって
なんか負けた気がするな
しょうがないから並ぶけど
そもそも、社会人なのに休みの度に妹と遊ぶってのが何かに負けている気がしないでもない
気にしたら負けだ
並んで待っている間にPITでネット検索をし続ける
探すのは軍事用の鎧の出品状況だ
条件として、外骨格型、接骨機能、対衝撃、対刃物、対銃弾、対魔法を探している
要は、それなりに打たれ強く、外骨格型で筋肉や関節を保護して肉離れや捻挫を防止、接骨機能で骨折に対応って感じだ
俺のナノマシンと相性もいいと思うんだ
外付けモーターや人工筋肉も考えたが、体がでかくなるし筋力勝負よりも瞬間火力で勝負した方がいいかなと思っている
ただ、これだけオプションを付けると150万ゴルドを超えてくる
高いんだよな…
貯金は70万ゴルドまで貯まった
もうちょいのような、まだまだのような
AIも欲しい
モ魔を使うとPITが遅くなるし、地図やナビを同時使用するとメモリ管理がきつい
メモリ管理を怠ってフリーズし、大失敗したのは苦い思い出だ
最近は、偵察用ドローンを使っているが、AIがあれば画像認識で対象の動きがあれば知らせてもらえる
撃ち合いの中で、ドローンカメラの映像をチェックするのってキツイんだよな…
あと、近接武器も気になってる
前回の作戦で、老兵ジャンのロケットハンマーの威力を目の当たりにしたからだ
戦車やMEB、大きめのモンスター相手だと弱点を正確に狙えなければ陸戦銃の効果が低い
しかも、魔法や銃弾は懐の方が躱しやすかったり、近接戦闘でカウンターを狙ったりできて被弾を減らせたりもする
陸戦銃→ホバーブーツで移動→近接火力
こんな戦い方が理想な気がするんだよな
ハンマー系は切れ味が関係なくただ叩きつければ使えるし、ホバーブーツと相性もいいと思う
全部欲しいし揃える予定だが、最優先は鎧だよなぁ
…なんて考えながら、各サイトで値段比較をしまくっていると、
「おーい、ただいま!」
フィーナが帰って来て合流する
「お帰り。店に入るいいタイミングじゃん」
「へっへっへ、日頃の行いだよね」
「前回、アパートぶっ壊そうとしてたのはいい行いなのか?」
「あれはラーズが悪いだけであって、私は悪くないし」
「更に人のせい!? いい行いってなんなの!?」
無駄話をしながら無事に店内に入る
ケーキにアイス、何にするかな
「アイスとケーキってセットだよね?」
フィーナが真剣に言ってくる
「どっちかでよくないか?」
「絶対ダメ」
「じゃ、最初から聞くな!」
その時、俺のPITにメッセージが届いた
ジャンからだ
『隊に顔を出したら非番になったんだな。体調は大丈夫か。よかったら今から会えないか?』
なんだろう
わざわざお礼に来てくれたのかな?
「フィーナ、一緒に戦った人が会いたいっていってるんだけど、ちょっと行ってきていい?」
「戦った人って、防衛軍の人?」
「そうだね。前回、一緒に作戦行動をしたんだ」
「もちろん、いいんだけどさ…」
「何かある?」
「私、一回でいいから防衛軍の人の会ってみたかったんだけど…、ダメかな?」
「な、何で?」
「いや、干渉するつもりはないんだよ! けど、やっぱり気になるし心配だし、ね? ラーズがいつもどんななのか聞きたいなーって…」
まあ、心配させてるのは分かる
だが、本気で危険な状況も多い防衛軍の内容を知られたら…、本気で辞めさせられる気がする
だが、ジャンなら前回初めて合っただけだ
ボロは出ないし、助けてくれたとか言ってくれればいい感じになる気がする
よし、これでいこう
「じゃ、会ってみる? ただ、何回もはさすがにやめてくれよ」
「うん、ごめんね? セフィ姉も気にしてたし、一回でも会えれば私も安心できると思うんだよね」
「お前は俺の保護者なのか?」
ジャンの承諾を得て、フィーナを連れて会いに行くことになった