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263話 防衛軍の膿

用語説明w

オズマ:警察庁公安部特捜第四課の捜査官。ゼヌ小隊長と密約を交わし、1991小隊と「バックアップ組織」の情報を共有している

サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)

リロ:MEBパイロットの魚人隊員。十歳程度の容姿をしている。卓越したMEB操縦技能を持つ(固有特性)

カヤノ:MEB随伴分隊の女性隊員。思念誘導弾を使い、飛行ユニットによる空中戦が得意なサイキッカー(固有特性)


オズマが隊舎に来た

なんか久しぶりだな


「すまない、手伝ってほしいんだ」

オズマが缶コーヒーを飲みながら言う


「今日は何をするんですか?」


隊舎一階の自動販売機とベンチ

ここでオズマと情報交換をすることが増えた気がする


「お前たち防衛軍の膿を絞り出すんだ」

オズマが、自動販売機で缶コーヒーを買ってくれた


「頂きます。防衛軍の膿ですか?」



今日、公安が防衛軍の隊員達を逮捕する


・サイバーポイズンのエイネルをそそのかした中隊本部の隊員

・ムヒカ審議官暗殺事件に防衛軍の隊員を利用した中隊本部の幹部

・リナリーが話している、ハカルの攻撃と特定した経緯、それに関わった隊員


具体的にはこんなところだ



「人が足りないし、軍人に暴れられると危険だ。防衛軍の隊員を拘束するためには防衛軍の隊員の力がほしい」


「…分かりました」


「素直じゃないか。こういう裏仕事は嫌だったんじゃないのか?」

オズマがニヤッと笑う


「これは裏仕事じゃなく、正当な任務ですよ。…私に防衛軍の隊員を殺させたんです、とことんやりますよ」


俺は今まで何度か隊員の殉職を見て来た

だが、自分で防衛軍の隊員(仲間)を殺すことになるとは思わなかった


ムヒカ審議官暗殺事件の関連者は絶対に捕まえてもらいたい



「…ああ、頼りにしてるぜ」


オズマと俺は、コーヒーを飲み終って隊舎に入った




・・・・・・




今回は、特に戦闘の予定はない


俺達1991小隊を管轄する中隊本部の隣のエリアの中隊本部に行き、オズマと共にムヒカ審議官暗殺事件に関わった隊員を逮捕する

暴れた時のために俺達は同行するのだ


「こいつ、前に同じ小隊だったやつだぞ…」

サイモン分隊長が、オズマが逮捕する隊員の名前を見て言う


「どんなやつなんですか?」



中隊本部員、デンゼル

サイモン分隊長が1991小隊に来る前の小隊で一緒だった隊員らしい



「俺はやり方が合わなかったな。実際、1991小隊に異動してからの方が、俺の実績は圧倒的に上がったしよ」


サイモン分隊長は昔、伸び悩んでいたらしい

周りがサイモン分隊長のタフさについていけず、任務の失敗を繰り返した


その後、ゼヌ小隊長の誘いによって1991小隊に異動して()()()()()されたことにより、Cランクにまで上り詰め、蒼きティターンという通り名まで得るに至ったのだ


だが、サイモン分隊長の知り合いだろうが関係ない

俺に防衛軍の隊員(仲間)を殺させた

そして、防衛軍の隊員(仲間)を使ってムヒカ審議官を暗殺しようとした


関係者は全員確保する

絶対に許さねぇ



「…気持ちは分かるが、逮捕は公安の仕事だ。情報も引き出さなきゃいけないんだし手を出すなよ?」

サイモン分隊長が俺の表情を見て言った


「はい、分かっています…」

俺は深呼吸して中隊本部へ車を飛ばした




中隊本部には、先発隊のカヤノとリロがいた


「てめぇっ! 特評価小隊だからって舐めてるんじゃねえぞ! 周りが強いだけだろうが!」


なんか、怒鳴り声が聞こえる


「…特評価は関係ないわ。公安があなたを逮捕するって言っている、ただそれだけよ」


「そうだよ! 理由は自分の胸に聞いてみればいいじゃん!」


カヤノとリロの声もする

周囲には公安の警察官と、防衛軍の隊員でごった返していた



「てめえら、公安に仲間を売るのか!? 警察の手先に…」


騒ぐ隊員を一睨みして、俺達はカヤノとリロの所に行く


「何の騒ぎだ? カヤノ、リロ」

サイモン分隊長が声をかける


「あ、サイモン分隊長! こいつらが、全然公安の逮捕に応じないんだよ!」

リロが目の前の男を指す


「な、仲間を売りやがって…、お前ら一体何様だ…!」

相変わらず怒鳴り散らして公安の逮捕に応じない隊員


サイモン分隊長はため息をついて、一歩その男に近づく



ドゴォッ!


「ぐべっ…!」



男の隊員の顔にサイモン分隊長のでっかくて固い拳がめり込む


手、出しちゃった!

俺に手を出すなって言ってたのに!?


サイモン分隊長が、男を引きずり起こす



「ひっ…」


ドガァッ!



そして、もう一度男が吹き飛んだ


周囲の喧騒が、一瞬で静かになった



「…防衛軍の隊員(仲間)だと?」

サイモン分隊長が静かに、だが怒りを込めて言う


「俺の部下に防衛軍の隊員(仲間)を殺させた奴がこの中にいる」

サイモン分隊長が周囲を睨みつける


「何も知らない防衛軍の隊員(仲間)に、ムヒカ審議官の暗殺を実行させた野郎がいるんだぞ!?」



殺気を込めたかのような空気


周囲を貫く鋭い怒気



もう一度、サイモン分隊長が周囲を見回す


「…俺の部下は、たった二人で暗殺計画を阻止しなければならなかった。部隊相手だ、下手すれば死んでいた!」

サイモン分隊長が続ける


「得た物はムヒカ審議官の命。…そして防衛軍の隊員(仲間)殺しの汚名だぞ!?」



「……………」


口を開くものは誰もいない



防衛軍の隊員(仲間)の中に潜む膿を絞り出す。公安の捜査に協力して身の潔白を証明しろ。…全員だ! 反論がある野郎は前に出ろっっっ!!」


サイモン分隊長の大声が、中隊本部にいる隊員全体を突き抜ける

口を開くものはいない




…その後、隊員全員が公安の捜査に協力した

先ほど騒いでいた男は暗殺事件に関与の可能性があるらしく、なんとか逮捕を回避しようと扇動していたようだ



「よぉ、サイモン!」


「…デンゼル」


サイモン分隊長の知り合いの隊員がやって来た


「お前の啖呵、凄かったな。しびれたぜ」


「お前も逮捕されるんだろ?」


「ああ、そうみたいだな。だが、俺は本当に身に覚えがない。全部話して関与が無いことを証明してくるだけさ」

デンゼルが笑った


「…サイモン、お前変わったな。伊達に特評価を取ったブルー小隊の分隊長じゃないってことだな」


「いろいろあったのさ。リサイクル小隊からブルー小隊に呼び名が変わるまでにはよ…」



1991小隊は、リサイクル小隊と呼ばれていた

使えない隊員を集めて、Cランクに育て上げるというゼヌ小隊長の手腕を表した通称だ


だが、特評価を取ってからは、戦闘員全員が青い要素を持つ凄腕であることからブルー小隊などと呼ばれているらしい



「…そいつが、一人部隊の小僧か?」

デンゼルが俺を見た


「一人部隊ってなんだ?」


「使役対象を複数使って、一人で一部隊を壊滅させたってやつじゃないのか? 噂になってるぜ」

デンゼルが言う


一人部隊って…

変なあだ名を広めないで欲しい


「こいつは一人じゃない。俺の部下で1991小隊(うち)の仲間だ。一人でなんか戦わせるつもりはない」


「…お前、本当に変わったな」


そう言って、デンゼルは公安の捜査員に呼ばれて手錠をかけられていた




・・・・・・




小隊長室


オズマが来ている


「ありがとうございました。おかげで、各拠点から合計で五十人ほどの隊員を拘束しました」

オズマがリストを見ながら言う


「良かったわ。まず、防衛軍内をクリアにしないと、戦争を止めるなんてことは不可能ですからね」

ゼヌ小隊長が微笑む


「今回の隊員達の特定は、デモトスさん、ジード、そしてサイバーポイズンのエイネルの功績が大きいですね。防衛軍内の情報をよく集めてくれました」


「…防衛軍は、仲間の裏切りには厳しいのよ。絶対に逃げ得を許す気はないわ」


「任せて下さい。全部しゃべらせますよ」

オズマがやる気を見せる



「後は、明日がどうなるかね…」

ゼヌ小隊長が天井を見つめる


「何かあるんですか?」


「ほら、ハカルに秘密裏にコンタクトを取っていたでしょ? その連絡が来たのよ」


「あ!? では、ハカル側との密会が?」

オズマが目を見開いた


「そうなのよ。明日、私とラーズ、そしてフィーナさんを護衛にして、ハカルのBランク、白き盾のルークに会いに行ってくるわ」



シグノイアとハカルの密会

表には出せ合いが、これはシグノイアとハカルの歴史に残る一歩となる可能性がある


上手く着地が出来れば停戦に前進

しかし、失敗して踏み外せば全面戦争に進む可能性があるのだ



参照項目

サイモン分隊長の伸び悩み

82話 飲み会 三軒目

サイモン分隊長の通り名

45話 報復



誤字報告、感想、ブクマ、評価、ありがとうございます!

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