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246話 卒業テスト・Bランク殺し3

用語説明w

大剣1991:ジェットの推進力、超震動の切れ味、パイルバンカー機構、ドラゴンキラーの特性を持つ大剣。杖、槍としての機能も持つ


護符:各種防御魔法を封印した霊札

回復薬:細胞に必要なエネルギーを与え、細胞を保護し代謝を活性化

カプセルワーム:ぷにぷにしたカプセル型で、傷を埋め止血と殺菌が出来る


データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。戦闘用端末である外部稼働ユニットのデータ2と並行稼働している

リィ:東洋型ドラゴンの式神。空中浮遊、霊体化、巻物の魔法を発動することが可能

竜牙兵:黒竜の牙に魔属性と竜の魔力を封入し、幽界から骸骨戦士を構成する爪と牙を武器とするアンデッド


Bランクを倒す

単純に、()()()()()()()


この能力を倒す方法があるのだろうか?


「ラーズ、相手を倒すためにするべきことは何かね?」


「倒すために…、強力な攻撃を当てることです」


「そうだ。そして、もう一つは?」


「…相手の弱体化、ですか?」


デモトス先生が頷く

「具体的には、危険を意識させることだ」



闘氣(オーラ)、そして強化紋章による身体の強化

これらに共通することは、エネルギーを体に纏って防御力を上げていることだ

理論上、このエネルギーが尽きない限りバリアと同じような働きをし続ける


そして、俺達一般兵にはこのバリアを突き破る火力が無いのだ


「ラーズ。バリアを使ったとして、前から強力な攻撃が来るとしたらどうするかね?」


「それは…、やっぱり前を防御します」


「そうだ。闘氣(オーラ)や魔力のバリアは均一の厚さではない。意識によって、攻撃されている方向を厚くすることができるのだ」



た、確かにそうだ…!


ボリュガ・バウド騎士学園時代、俺は闘氣(オーラ)を使っていた

攻撃を受けると思ったら、当然そこに意識を集中して闘氣(オーラ)の防御力を高めていた


これは、ほぼ反射的に行われる

殴られるときに手で顔をかばうのと同じだ


デモトス先生の言っている意味が分かる

攻撃方向の防御を厚くする、つまり他の場所の防御が薄くなるということだ!


な、何で闘氣(オーラ)を使っていた俺が、こんなことに気が付かなかったんだ!?



「ラーズ、君の勇者の一撃に全てを託す。今までの訓練と実戦、血反吐を吐きながらトライアンドエラーを積み重ねてきた、自分の努力に自信を持ちたまえ」


「…は、はい!」


デモトス先生は、全員に作戦を伝えに行った

俺は精神を集中する



卒業テスト、…Bランク殺し

作戦はこうだ


サイモン分隊長とロゼッタの正面からの攻撃

ロゼッタはトランスを解禁して全力攻撃を行う


1991小隊の最強火力をぶつけるため、変異体の意識は全面の防御に向かうだろう

強化紋章によつ魔力の防御力は全面が厚くなり、代わりに背面の防御が下がるはずだ


作戦の開始と同時に、シオンが金属製の板を複数展開

俺の姿を隠す役割と、変異体の行動制限を行う


後は俺の仕事だ

変異体に意識されずに背面に回り込み、硬化魔法の護符を1991に使用

フル機構の突きにサイキックの衝撃を乗せて、変異体の防御の下がった背中をぶち抜く!



「ご主人! まもなく軟化の魔法弾の効果が出るよ!」

データ2が拘束の効果を維持しながら軟化の魔法弾も撃ってくれていた


「了解、データ2の軟化の効果が出た瞬間に作戦開始でどうでしょう!?」


デモトス先生、サイモン分隊長、ロゼッタ、シオン、ジードが同時に了解した

竜牙兵、リィは適宜フォローに入るように指示した


ジードが、補助魔法を全員にかけ直す

全員で準備を進めていく




……







「軟化の効果を確認!」

データが報告


「…作戦開始だ。シオン、始めてくれ」

デモトス先生が作戦開始を指示した



「はい!」

シオンは、杖に溜めていた魔力を開放



ドガァッ ドガァッ ドガァッ ドガァッ !!


「グゴッ!?」



金属性範囲魔法で、金属製の板を変異体の周囲に四枚展開した


続けて、金属性投射魔法で金属の槍を発射する



ガギィッ!



変異体が金属の槍を弾くと同時に、サイモン分隊長が大盾で間合いを詰める



ゴガァッ!



金属の板で囲まれた範囲から変異体を出さない

そして、ロゼッタが飛び込む


ロゼッタは、すでにトランスを発動

黄色い光を全身から発している


いつもよりも輝きが強い!

氣力を回復するアクセサリーを併用して、全力攻撃の持続時間を上げているようだ



ズガガガッガガガッガガガガガガガッガガガガッ!



凄まじい連続攻撃を変異体の正面に叩き込む

こんな()()()()、見たことねぇ!



俺は、小型杖で力学属性引き寄せの魔法弾を撃ち出す

変異体の近くに着弾、金属の板で姿を隠しながらホバーブーツと併用して曲線で一気に背面に接近する



ボッ… ビョォォォォォン!



背後に回り込み接近完了だ


俺は護符を使い、1991に硬化魔法をかけ刃体を硬化

準備完了、ロゼッタの攻撃が終わった直後にフル機構突きをぶち込むだけだ


…不安材料はサイキックの衝撃だ

だが、さっきのロゼッタのアドバイス


斬り始めるときに、刃のどこが当たるぅ?


これで理解ができた

俺は刃体が当たるときに、その刃体に沿って衝撃を起こそうとしていた

だが実際に物を斬るとき、最初に刃体に当たる場所はどこだろうか?


そう、最初に当たるのは刃体の一点だ

刃体全体で斬り始めるわけではなく、()()()()()()()()()()()()()()()どんどん斬れていく

つまり、その接触する最初に一点に衝撃を集中するべきなのではないだろうか?


今までは線での衝撃を作っていたが、斬る対象に衝撃が伝わるのは最初に接触した一点だけだったように思う

その接触点以外の衝撃は、分散して空気を揺らすことに使われてしまっていたのだ


突きの場合は、更に一点集中のイメージしやすい

刃体の穂先の先端、()()()()()テレキネシスの力を凝縮、接触と同時に衝撃を作るのだ


俺は落ち着きながら、時間をかけてテレキネシスの衝撃を1991の先端に凝縮する



「グギョオォォォォッ!」


ズゴゴゴゴゴゴッ!!



ロゼッタの猛攻を受けていた変異体が、突然特技(スキル)を発動



「ぐわっ!」 「きゃっ…!」 「うあっ!?」


土の棘が()()()()突き出て全員を襲う!



おそらく変異体の切り札、広範囲の全体攻撃だ

完全に意表を突かれた、俺も喰らうことを覚悟する…!



ゴオォォォォォッ!


ズガッ……!



俺が被弾を覚悟した時、何かが俺の前に割り込んだ

同時に竜巻が起こる


長く白い体の龍、リィだった

俺を庇うように前に出たリィは風属性竜巻魔法(小)を発動

しかし、土の棘の勢いが止まらずにリィを貫いた



「リィッ!!」


「…ヒャンッ!」



だが、リィは俺を見ずに変異体を見て吠えた


冷静に考えれば分かる、今しかない

そして、それにリィが気付かせた


「…っ!!」


俺はエアジェットで棘を飛び越え、変異体の背中に突っ込む


その勢いのまま、変異体の直前で着地

身体強化魔法とナノマシンシステム2.0で強化された下半身の力でブレーキをかけ、その勢いを1991に伝える


同時にテレキネシスのエネルギーを()()()()()()()刃体の先端に凝縮


現在、変異体には、軟化と拘束の魔法効果が発現している

そしてロゼッタの連続攻撃で、防御力が前面に()()()()()()()


完璧な状況だ、これで決める!



ジェットをオン!



ゴォッ…!



ロケットブースターのジェットが、飛空石加工の魔玉にインストールされた空間魔法で石突に直結、突きの推進力となる


硬化魔法のかかった刃体、そして霊的構造、先端の超振動機構を、変異体の背中に凄まじい貫通力を持って突き刺す!


刺さる瞬間、パイルバンカー機構をオン!

強化薬莢が点火!



背中に接触した瞬間にテレキネシスの一点突破の衝撃が解放、そして突き方向に射出された刃体が変異体の背中を突く!




ズッガァァァァァァァァンッ!!!




変異体の背中側から1991が貫通し、腹側から刃体が飛び出した!



「グゴッ……!?」



口から大量の血液を吐き出しながら、変異体は何が起こったのか理解ができずに惚けた


「ラーズ、大剣を抜け!」


デモトス先生が、ナイフを持って変異体に接近した



ズシャッ…



俺は腕力とサードハンドで1991を引き抜く

するとデモトス先生が間髪入れずに変異体の腹に空いた穴にナイフを差し込んだ



「グゴッ…!」


グチャッグチャッ……!



そして、そのナイフで腹の中をかき回す



「グゴオォォッ!」


ガシッ、グチャッ…!



「デモトス先生!!」


変異体は、デモトス先生の腕を掴んで握りつぶした

しかし、デモトス先生は顔色一つ変えない



ドンッ!



そして、変異体の腹の中から爆発音が聞こえた



「ゴフッ…」


変異体の口から、また大量の血が噴き出る



…そして、ついに変異体は膝をつき、ゆっくりと倒れた




・・・・・・




変異体はピクリとも動かない


俺達が、ついにBランクを倒したんだ…




デモトス先生の右手が、肘から先が握りつぶされて切断されている


「で、デモトスさん大丈夫なのか?」

サイモン分隊長が焦って言う


「痛みはあるが問題は無いよ」


表情も変えずに、止血してカプセルワームを貼り付けて回復薬のアンプルを腕に刺すデモトス先生



デモトス先生のナイフの柄には爆薬がセットしてあったらしく、変異体の体内で金属片を巻き散らしたらしい


「更に、刃には貴重なヨルムンガルドの毒をたっぷり塗っておいた。皆で作り出したチャンスを逃せないと思って少し無理をしてしまったよ」

デモトス先生が微笑んだ


確実なとどめ、それがデモトス先生の役目だったのだ



「リィは大丈夫だったのぉ?」


ロゼッタが地面に倒れたまま言った

全力トランスの反動のガス欠だ


「一応、すぐに勾玉に戻したので大丈夫だと思うんですけど、戻ったらすぐに神社にもっていきますよ」


リィは、俺を庇った時に土の棘で腹を刺されていた

変異体を倒してからすぐに封印に戻したのだが、正直心配だ…



だが、このパーティのおかげでなんとかBランクを倒すことができた


俺達は疲労と安堵感で、公安が乗り込んでくるまで一歩も動けなかった…



次話で七章終了となります

読んで頂きありがとうございます


誤字報告、いつもありがとうございます!


あ、あとちょっとで五十万pv…!

もし、面白い、続き読みたい、応援してやっか、…なんて思って頂けましたら、ブクマ、評価、感想をいただけるととても嬉しいです♪

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[一言] Bランクの倒し方…デモトス先生に教わったんか…
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