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242話 嵐の前の静けさ

用語説明w

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる


サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)

リロ:MEBパイロットの魚人隊員。十歳程度の容姿をしている。卓越したMEB操縦技能を持つ(固有特性)

カヤノ:MEB随伴分隊の女性隊員。思念誘導弾を使い、飛行ユニットによる空中戦が得意なサイキッカー(固有特性)


久々にサイモン分隊長とクエストに来ている


海の町の魔導プラント制圧作戦

これが始まる前に、準備と通常業務を各自が行っている


俺達はプロだ

俺達の本来の仕事は、国民に被害をもたらすモンスター退治だ

裏仕事や特殊任務、ハカルとの戦争があるからといって、これが疎かになってはならない



「おっ、いたぞ。あれじゃねぇか?」


サイモン分隊長が示す方向に、液体みたいなものがうごめいていた

コポコポと泡が噴き出ていて、うにょうにょと動いている


「七匹…ですかね?」


今回のモンスターは、通称泡スライムという

コポコポと泡を吹き出しながら作物を食べ荒らすスライムで、うっすらと緑色をしている

だが、残念ながら毒は持っていない



「さっさと終わらせて帰ろうぜ」

サイモン分隊長が言う


「はい」


俺は魔石装填型携帯用小型杖を取り出し、水属性酸の魔石を装填する

小型杖を振って、酸の魔法弾を撃ち出す



ジュアァァァァッ!


「うわっ!」



泡スライムに当たった酸の魔法弾が泡スライムの体の水分を強酸に変え、体内の組成を変化させる

泡スライムが苦しんでいるように? 悶えて粘液となり活動を止めた


「なんか、苦しめているようで良心に来ますね…」


「殺すことには変わらないんだからさっさとやれって」


俺は、今度は水属性塩基の魔法弾を撃ち出す



ジュアァァァァッ!


「…」



同じように、悶えるようにうごめいた後、泡スライムは粘液となって活動を止める

若干、塩基の方が早く死んだように見えた


「塩基の方が効くってことは、泡スライムは若干酸性の粘液なんですかね?」



水属性の酸と塩基


液体の水のpHを一時的に酸性、又はアルカリ性にもっていく魔法

魔素で作られた水素イオンや水酸化物イオンが、一時的に近くの物質と結合、皮膚や金属の場合は焼けただれたり解けたといったような反応を起こす

但し、魔素で作られた反応であるため、魔法が切れればpHは元に戻る

しかし、魔素によって一度反応してしまった部分は当然もとには戻らない


人体に撃たれた場合、皮膚の上の水分や汗に反応するが、もともとの水分量が少ないためそこまでの威力にはならない

しかし、水属性魔法によって水を用意した場合、強酸、強塩基の液体で水魔法が発動して威力が上がる


基本的には液体の水にのみ作用し、その他の液体には作用しない魔法効果である



「サイモン分隊長、最後の一匹を残しておいてください」


「何かやるのか?」


俺は最後の一匹に、魔属性即死の魔法弾を撃ってみる



ジュアァァァァッ!


死に方、全部同じじゃねーか!



泡スライムも生物だ

魔属性によって生命力を下げられればやはり生命活動は停止する

悶えた後、泡スライムは粘液となって溶けだした



うむ、あまり使ったことが無い魔石を使えてよかった

いろいろ試してみないと、いざという時に使えないからな


俺達は依頼元の農家に討伐報告をする


「え、作ってくれたのか。悪いなおばあちゃん」


おばちゃんがおにぎりをたくさん作ってくれていた

お茶も入れてくれて、縁側でのんびりとおにぎりをいただく


「おいしい…」


「この秋に取れたお米だからねー」


仕事終わりの飯はうまい!


「私、やっぱりこういうクエストがいいですね」


「ああ、住人のためって感じがしていいよな」


二人でたらふくおにぎりを食べ、お茶をいただく

おいしかった


「ああ…、早く戦争が終わって、バックアップ組織壊滅して特殊任務から解放されないですかね。あの殺伐とした仕事はもうやりたくないですよ」


「そうだなぁ。だが、平和な社会にもリロみたいな犠牲者がいるんだ、お前の特殊任務だって無駄ではないはずだぞ?」


「え!? リロですか?」

俺はサイモン分隊長を見る


「何だ、知らなかったのか? リロみたいな子供が、理由もなく防衛軍に就職しているわけないだろ」


「た、確かに! いや、違和感は感じていたんですが…」


リロは十歳くらいの女の子に見える

普通に考えて、防衛軍として働ける年齢じゃない


「…本当は、本人から聞くのがいいとは思うだがな。だが、これからも戦場に一緒に出るんだ、知っておいた方がいいだろうな」

そう言って、サイモン分隊長は話し始めた


「リロの実年齢は間もなく三十歳、普通なら第二成人式の年齢だ」


「え!?」


り、リロが年上!? 三十歳だと!?

どう見ても十歳くらいにしか見えないだろ!?


「リロは大人になれないように体をいじられている。強制的に性成熟できない体で生まれたクローンなんだ」


「…っ!?」



成熟とは、要は子孫を作る準備が体にできました

子孫を作れるまで成長できましたということだ


では、この子孫を作る機能が元から無い状態で生まれたらどうなるだろうか?

いつまでたっても性的に成熟せず、子供の純真な心を持つ

体も子供のままであり、一部の嗜好家からは理想の体となる



「そして、リロは正確には男でも女でもないんだ。子宮も精巣も体に持たない、物理的に成熟しない体で生まれたからだ」


「…」


「一応、()()()()が付いていないから女として振舞っているだけだ。リロを産ませたロリコン野郎は、嗜好品として、使い捨ての道具のようにリロの体をいじりやがった。これを聞いたときは、捧刑(ほうけい)があってよかったと心から思ったぜ」


「そ、そうだったんですか…」


「…どこかしら、この社会にとって害となる野郎はいる。そいつらに、自分でやったことを体験させてやるってのは大事なことなんだろうな」


「ええ、裏仕事とか特殊任務は嫌いですけど、そういう話を聞いたらちょっとやる気が出ますね」


「だけどよ、お前の特殊任務は保証がないから失敗した場合が危ないよな」


「…」


「だってよ、やってることはただの強盗や殺人の凶悪犯だからな。失敗したらお前だけ逮捕されて、下手すりゃ死刑ってレベルだろ?」


「…やっぱり、法に則ってやるべきですね」




・・・・・・・




クエストから戻ってくると、他の隊員達も隊舎に戻って来ていた

全員がそわそわしている


間違いなく、海の町の魔導プラント襲撃作戦の影響だろう

Bランクを量産する工場を潰す


いったいどんな作戦になるんだ…!



「カヤノ、時間ありませんか? サイキックの訓練に付き合ってもらいたいんですけど」


サイキックには、テレキネシスとテレパスがある

1991小隊のサイキッカーは四人いて、カヤノと俺がテレキネシスタイプ、リロとエマがテレパスタイプだ

テレキネシスは、同じタイプのカヤノに見てもらいたい


「ええ、いいわよ。やりましょうか」


「ありがとうございます」

カヤノが快諾してくれて、二人で中庭に向かう


「ラーズ。そういえば、今日中隊本部に行ってきたんだけど、ヘザーに会ったわよ?」


「ヘザーですか。カヤノはヘザーと知り合いだったんですか?」


アイアンヴァルキリーのヘザー、凄腕のサイボーグ兵士だ

ヘザーとは合コンして以来会えていない


「ええ、同期なのよ。前回合コンしたでしょ? その時にヘザーが連れてきてた子が、ラーズのことちょっと良かったって言ってたらしいわよ」

カヤノがいたずらっぽく笑う


「え…、そんなこと一言も言われませんでしたよ?」


な、なんで付き合ってから…

そんな話ならもっと早く言ってくれよ!


「それは、私からヘザーに言っておいたもの。ラーズは彼女ができるから声をかけるなって」


「えっ!?」


俺は、たった今気が付く

それが、どれだけ危険な状況会にあったのかを


ヘザーとカヤノが同期だった、そしてカヤノからヘザーにストップの連絡をしていた

それにもかかわらず、俺が声をかけていたら…

もし、合コンで俺が変なことをしていたら?


…あ、あぶねぇ! 全部カヤノに筒抜けだったってことだ!

よ、よかった…、品行方正に振舞って本当に良かった…

やはり、人間は裏切りをしてはダメだ

真実の愛を見つけなくてはダメなんだ…!



結局、この日もテレキネシスで作る衝撃はあまりうまく行かなかった

動揺のせいではないはずだ…



ヘザーとの合コン 191話 合コン 参照



誤字報告いつもありがとうございます!

明日は閑話と次の話を二回投稿します

未明と夕方くらいの予定です


ペース落とさないように投稿します!

面白い、続き読みたい、応援してやるかと思って頂けましたら、ブクマ、評価のご支援をぜひよろしくお願いします!

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