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236話 保護

用語説明w

バックアップ組織:各地のテロ組織に、資金、技術、人材を提供し、その活動をバックアップする謎の組織

環境破壊:バックアップ組織の母体と思われる組織。(フレイム)とミズキの二企業が関わっている


魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる


デモトス先生:ゼヌ小隊長が紹介した元暗殺者で、ラーズの戦闘術の指導者。哲学と兵法を好む

ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長

ジード:情報担当の魔族の男性隊員、補助魔法が得意

オズマ:警察庁公安部特捜第四課の捜査官。ゼヌ小隊長と密約を交わし、1991小隊と「バックアップ組織」の情報を共有している


1991小隊の隊舎へ、突然オズマが相談にやって来た


「サイラ副隊長の周辺捜査をしたところ、複数の官僚・議員が上がって来たんですが…」

オズマが悔しそうに言う


「…ぜ、全員が事故に遭ったって言うの!?」

ゼヌ小隊長が驚く



官僚三人、議員一人について、サイラ副隊長との関与が浮上

そして、交通事故が二人、食中毒が一人、テロリストが襲いかかって一人が死亡した


「テロリストに関しては、バックアップ組織と思われる者の言葉で感化された大学生です。いわゆる鉄砲玉で、情報は何も持っていませんでした」


「…自分で考えることをやめ、正しさを与えてもらう。麻薬にも負けない気持ち良さなのだろう」

デモトス先生はため息をついた


関与者が死んでいく…、()()()()()()わけだ


「ですがもう一人、官僚の関与が浮上しているんです。しかも、唯一生きています!」

オズマがモニターに資料を表示する



生きているサイラ副隊長との関与者


防衛軍総司令本部、総務部会計予算課リナリー課長

魚人の女性課長だ


これは、サイラ副隊長とのプライベート回線でのやり取りから浮上した

消された他の官僚達と違って直接の金のやり取りが無く、その他の接触状況が無いため浮上が遅れたのだ


「リナリー課長が浮上したことは、俺と上司しか知りません。公安の上層部への報告は明日まで延ばします、今日中に生きて確保を頼みたいんです」

オズマが頭を下げる


関係者の周辺を捜査はできても、本人の確保ができないと記憶は調べられない

特にバックアップ組織が何を狙っているのか、サイラ副隊長が何を企んでいたのかを聞き出せないと、全てが後手に回ってしまう


「行ってくるよ、ゼヌ」


「ええ、お願いします。デモトス先生」

デモトス先生とゼヌ小隊長が、頷き合う


「さ、ラーズ。行こう」


「え!? は、はい!」


俺もかよ!?


俺達は、リナリー課長の家に向かった

急遽の特殊任務だ




・・・・・・




リナリーのマンション

やはり、防衛軍総司令本部の課長だけあっていいマンションだ


「その紙は何ですか?」


「うん、説得用だ。これで応じなければ()()()()()()()()



デモトス先生が持っている紙


一枚目

『絶対にしゃべるな、盗聴されている。頷くか首を振るかで返事をしろ。理解したら頷け』


二枚目

『サイラ副隊長の件で来た。官僚と議員が四人死んだのは知っているな?』


三枚目

『暗殺を防ぐためにお前を保護する。我々も危険な橋だ、拒否するなら見捨てて立ち去る』


四枚目

『保護に応じるなら、お前の家族も助ける。交渉はこの一回のみだ。条件は指示に従うこと、返事は?』



…たった四枚の紙で説得するつもりなの!?





「リナリーの部屋は四階だ。ホバーブーツは使わずに上がって来なさい」


デモトス先生はそう言うと、影を纏って壁を上がっていった



…どうしろって言うんだ!?


だが、ホバーブーツだと確かに音がする

そうか、あれがあったな


俺は携帯用小型杖に力学属性引き寄せの魔石を装填する

左の前腕に小型杖を一本取り付け、右手にもう一本を持つ

それぞれに引き寄せの魔石を三つずつ装填している



まず左手の小型杖を振る

引き寄せの魔法弾が三階のテラスに着弾




ビョオォォォォォン!




体が空中に引き寄せられる

引き寄せの効果が切れる前に右手の小型杖を振り、再度引き寄せの魔法弾を撃つ




ビョオォォォォォン!




次は五階のテラスに着弾し、引き寄せ

その途中で、今度は八階のテラスに引き寄せの魔法弾を撃つ



…うん、完全にスパイダーな男だな

運動エネルギーを与える力学属性引き寄せの魔石、こういう使い方もできるんだ



俺が七階のテラスの降り立つと、デモトス先生がすでに部屋に侵入していた


デモトス先生が一枚目の紙とナイフを見せる


「ひっ…!!」


目を見開いて、恐怖に震える魚人の女性

あれがリナリー課長だろう


美しい赤毛の可愛らしい女性だ



デモトス先生が、ナイフをリナリー課長に向け首を傾げる


返事は? …の意味だろう


「…!!」

リナリー課長が何度も頷く


伝わったらしい



デモトス先生が二枚目の紙を見せる


「…っ!!」

リナリー課長が、またコクコクと頷く



サイラ副隊長と関わっていた官僚や議員が事故に遭ったことは把握済みか



デモトス先生が、三枚目の紙を見せる


「…っ!?」

リナリー課長の体が固まる


デモトス先生が、防衛軍のエンブレムをリナリー課長に見せた



「………」

リナリー課長が何かを考えている



デモトス先生が最後、四枚目の紙を見せる


「…っ!!」


リナリーが、すがるような目でデモトス先生を見る

そして、何度も激しく頷いた



デモトス先生が、リナリー課長の耳に何かを呟く

リナリー課長が頷いて準備を始めた



デモトス先生はソファーに何かをセットする

どうやら大きな風船のようで、どんどん膨らんで人間くらいの大きさになった


その風船に、横にあった毛布をかけて隠す

一見、人が毛布をかけて寝ているように見える



少しすると、リナリーが最低限の荷物を持って来た

デモトス先生が俺に目で指示を出す


うん、よく分からんが、連れて降りろってことだよね?

間違ってないよね?


俺はリナリー課長を連れてテラスに出る

そして、人差し指を口の前に立てた


絶対叫ぶなよ? …って意味だ



俺はリナリー課長を抱き抱え、テラスの淵に立つ

そして、身を重力に任せて倒す



「ーーーーーーーーっ!!」


口を抑えて叫ぶのを堪えるリナリー課長



空中で小型杖を振り、引き寄せの魔法弾で落下スピードを殺す



ストッ…


優しく着地し、そのまま路地に身を隠す



しばらく待つと、デモトス先生が現れた


「…行こう」


俺達は、無言でリナリー課長のマンションから離れる…




ドッガァァァァァァァン!


「えっ…!?」




後方から爆発音

振り替えると、リナリー課長の部屋から火と煙が立ち上がっていた


「…爆弾を仕掛けてきたんですか?」


「ああ、さっきの風船だよ。爆弾つきのデコイだ」



爆弾つきデコイ


風船のデコイに爆弾を取り付けたもの

風船を撃つと爆発するように設定できる

使わない時はデコイの空気を抜けば持ち運びに便利



「な、何でそんなものを…、って、爆発したってことは!?」


「ああ、リナリー課長を消しに来たお客さんだろうね。さっきの風船を攻撃したようだ、思ったより動きが早かった」

デモトス先生がリナリー課長を見る


「………っ!!」

リナリー課長は、青い顔でガタガタと震えていた




・・・・・・




隊舎に戻ると、小隊長室にゼヌ小隊長とジード、オズマが待っていた


「…ようこそ、リナリー課長。1991小隊の小隊長のゼヌです。条件を守って頂く限り、あなたを保護しますわ」


ゼヌ小隊長が、リナリー課長ににこやかに手を差し出す


「た、助けてくれて…、ありがとう。条件って何?」

リナリー課長がおずおずと握手をする


「もちろん情報提供ですわ。サイラ小隊長のこと、環境破壊のこと、バックアップ組織のこと。ゴデイバ、ブロッサムのこと。全部話して頂きます」

ゼヌ小隊長が言う


「…嫌だと言ったら?」


「現在、あなたのご両親をうちの隊員が保護に行ってますが、打ち切って戻らせます。あなたは通常通り公安で保護してもらいますわ」


「…」

リナリー課長がゼヌ小隊長を睨む



サイラ副隊長の件で捜査線上に上がった四人の官僚・議員は全員が死んだ

公安の捜査線上に浮かんだからだ


…つまり、公安の中にバックアップ組織の「目と耳」があるということだろう


そして、リナリー課長を公安に保護させると言うことは…



「リナリー課長、私はあなたを保護しました。しかし、今回の戦争やバックアップ組織とあなたが関係しているのであれば、私はあなたを絶対に許しません」

ゼヌ小隊長が毅然と言い放つ


「…っ!」


「もし、あなたが情報を渡さなかったり、嘘を言ったとなれば、直ちに保護を解除して公安に身柄を渡します」


「…わ、私の情報が無かったら……」


リナリー課長が言いかけるが、ゼヌ小隊長が阻止する


「ここまで来れば、あなたの情報は絶対に必要では無くなっています。うちの小隊の公安の協力者は優秀です。代わりの情報はいくらでも手に入るでしょう」


「………」

「………」


ゼヌ小隊長とリナリー課長が睨み合う


だが、すぐにリナリー課長はがっくりと首を折った


「…しゃべるわ。だから、家族だけは助けて」


「ええ、約束します。龍神皇国へ亡命してもらう手筈を整えていますわ」

ゼヌ小隊長が微笑んだ




ブクマ、評価、ありがとうございます!

モチベを頂いております、おかげさまで連続投稿w

七章最後までこのペースで行けるか…?


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