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228話 平和の大切さ

用語説明w

フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹、龍神皇国のBランク騎士として就職している。ラーズと付き合うことに

ヒコザエモン:泉竜神社の宮司で霊能力者。眼鏡をかけたエルフ


同じ防衛軍の隊員に襲われて急遽帰れなくなったため、今日は代休をもらった

フィーナと遊びに行けるぜ


最近、フィーナと話したくてしょうがない

遊びに行きたくてしょうがない


今まで一緒に住んでいたってのに、付き合った途端に何かが変わった


フィーナに触りたい、抱きしめたい…、そんな欲求が強くて困る

俺は思春期のガキなのか? 十代に戻っちまったのか?


だが思い返してみると、あの頃って誰を好きになったことはなかった気がする

どちらかというと、かっこよく見られたい、凄いって言われたいとかだ

名誉欲というのか、特に異性から認められたいという気持ちが強かった気がする


だから、誰を好きとかはなかった

そして、好きとか関係なく性欲には振り回された

ああいう、男の悩みってのは女に話してもドン引きされるだけなんだろうな…


ちなみに、セフィ姉だけは別格だ

あの人の場合は、好きというより憧れだったけど…




「セフィ姉が驚いてたよ。変異体の覚醒って、凄い希少だから」


フィーナが帰って来てた

近くのファミレスでご飯を食べている


「そうみたいだな。抑制剤を飲まないと、変な変異を起こすことがあるって言われたよ」


「ちゃんと飲みなよ? もう倒れないでね」


「…分かってるって」


変異体因子が暴走し起こり、いきなり吐血して倒れた

あれは焦ったな…


「ね、今日休みでしょ? 退院祝いに飲んじゃおうよ」

フィーナが、メニューのお酒欄を表示させた


「ああ、飲んじゃうか…」



カツシの町の戦地では、今も戦いが繰り広げられている

それなのに、カツシの町以外では普通の生活が保たれている


不思議な感じがする

だが、この生活は何人もの隊員たちの死によって成り立っているのだ



俺は退院から間がないこともありビールを一杯だけにしておいたが、フィーナは結構飲んでいた

店を出ると、フィーナが上機嫌で俺と腕を組んでくる


…ああ、何なんだこの感情は

性欲とは違う気がする、だが我慢ができない


フィーナを抱きしめたい、かわいくてしょうがない!


恋愛って危険だよな

恋愛というスイッチが入った瞬間に価値観が書き換えられてしまうんだから


歴代の偉人達がハニートラップに引っかかる気持ちが分かるな



二人で泉竜神社に来た

リィの餌札が少なくなったから買いに来たんだ


「ヒコザエモンさん、こんにちは」


「あ、ラーズさんとフィーナさん、こんにちは」


フィーナは、挨拶をするために組んでいた手を離した

ヒコザエモンさんは、俺達の関係って知ってたんだっけ?

まぁ、別にいいか


「何か、戦争の影響って出てますか?」


「ええ、霊札の仕入れ価格が上がって来ていますよ。戦地での需要があるからでしょうね」


「そうですか…」


戦闘用のアイテムは、やはり戦地での消費が激しい

戦争が長引けば更に影響が大きくなる可能性もある


「ラーズさんは戦争には行かれたんですか?」


「はい、一度ですが戦地に派遣されました。シグノイアもハカルもかなりの死傷者が出ていますし、ひどいものでしたね…」


「そうですか…。戦地は、戦争が終わってからもアンデッドが跋扈したりしてすぐに復興しませんからね。早く終わって欲しいですね」


「本当ですね」


「ああ、すみません。国のために命を懸けて戦っていただいているラーズさんに、早く終われだなんて…」


「いえ、私も戦争が早く終わればいいと思っています。戦地以外にも被害が出る可能性はゼロじゃありませんし」



後ろでは、リィが遊びに来ていた子供たちと追いかけっこをしている

リィは式神だけあって、神社の浄化された空間が好きみたいだ


「ヒャン、ヒャーン!」


俺達は、その平和な光景をみて笑いあう


戦地を経験して思う


平和な社会、使い古された言葉かもしれない

でも、それは命を懸けてでも実現する価値があるものだ




・・・・・・




泉竜神社を出て買い物をしていると、もう夕方だ


「テレキネシスで衝撃を作るねー…」

フィーナが言う


「うん。1991だけだと威力が足りなくてさ、何とか威力を追加したいんだよ」


「なんか、ボリュガ・バウド騎士学園時代の重属剣に本当に似てきたね。あの時も、威力を上げるために霊力を重ねて、魔法を重ねて…、とか言ってたもんね」


「あー、そういえばそうだったかもな。だけど、あの時よりも威力を上げる難易度は上がってるからな」


当時は、闘氣(オーラ)特技(スキル)、魔法、霊力、氣力を全部使えた

だから重ねる練習だけをすれば、重属剣の威力を上げることができた


だが、今は1991の機構頼みしか無い

しかし、当時なかった精力(じんりょく)というサイキック能力が使えるようになっている


「イメージが決まれば、後は練習あるのみなんだけどね。イメージは人それぞれだからなぁ…」

フィーナが言う


「ま、ゆっくりやるよ。今は、精力(じんりょく)の風船を1991に纏わせるようなイメージでやってるんだ。これができたら、その風船を破裂させるようにやってみようと思って」


「うん、いいんじゃない? なんか、本当に重属剣を思い出すよ。ラーズがセフィ姉に挑んだ時あったけど、新しい何かを重属剣に重ねるって言って、フォウルのサンダーブレスを重ねることを思い付いたよね」


「また、そういう黒歴史を…」



学園の最終学年、個人総合闘武大会を優勝してから、俺は少しだけ天狗になった

それをセフィ姉に指摘され、模擬戦をすることになったのだ


ルールは()()()()()

だから、俺はフォウルを連れて挑むことになった


普通にやっても勝てないことは明らかだった

だから、俺の重属剣にフォウルのサンダーブレスを重ねて、威力を底上げしたのだ


ちなみに、結果は二十秒でKO負けだった

開幕でいきなり重属剣を繰り出すも、セフィ姉の使役対象である生きた重力属性のアイテム、ヴィマナの超重力で叩き落されて、フォウル共々地面に叩き伏せられた



「セフィ姉に怒られて、あんなにへこんでたラーズは見たことなかったもんね。学園の九年間で一番へこんでたんじゃない?」

フィーナが笑いながら言う


「へこんだのは間違いないけどな。あれは、天狗になっていた俺が悪かったよ。…そうか、フォウルがいたな」


「え?」

フィーナがきょとんとする


「ああ、仕事の話だよ。今、範囲攻撃が欲しいなって思ってるんだけど、フォウルがいれば一回だけとはいえ高威力のサンダーブレスが使えるなって思ったんだ」


ハカル兵の光刃のリサ、捨て犬のアレクセイとライカ

強敵と戦う時は、近距離、遠距離、範囲攻撃をバランスよく揃えておく必要を痛感した

モ魔では発動まで時間がかかり、当てられる気がしない


フォウルがいれば、一発だけとはいえ広範囲、高威力のサンダーブレスを使えるようになる


「ふーん…、フォウルを連れてくるの?」


「ああ、フィーナが今度実家に帰った時に連れてきてくれない? そこまでは急がないから」


「うん、分かった。ただ、実家に帰るのは少し先になるよ」



今日は、ご飯を食べて買い物をした

おしゃべりをして、一緒に歩いただけだ


ふわっとして、ちょっとドキドキする、それが心地いい

打算もない、理屈もない、ただ一緒にいたいからいる、その幸せ


平和な社会だからこそ成り立つ、何物にも代えがたい大切な時間だ



この道をまっすぐ歩いて行くと、俺達のアパート、メゾンサクラが見えてくる


アパートの人達には、俺達の関係は兄妹のままとなっている

説明がめんどくさいからだが、堂々と手を組んで歩けないというデメリットを生じてしまった



「そろそろ着いちゃうね」


フィーナが、俺の腕から手を離した



辺りは薄暗くなり、周囲に人はいない




「…フィーナ」



「…え?」




俺はフィーナに向き合う


そして、じっと目を見る



「…っ!?」



フィーナの、少しだけ驚いた顔


俺は、片手でフィーナの肩に手を添える



フィーナに特に抵抗はない




…いける




俺は、焦らないように意識をして…


ゆっくりと顔をフィーナに近づける




「…」


フィーナが目を閉じた




よし、この大イベントは俺から行けた


この勝負、俺の勝ちだ…!





ピーピーピーーーーーーー!





「…っ!?」

「えっ!?」


俺とフィーナは、はっと顔を見合わせる



「…ご主人、緊急呼び出しだよ! Bランクモンスターが出現だって!」


無情なアラームに無情なデータの報告だった


いけると思ったのに…!



ブクマ、評価、誤字報告、本当にありがとうございます

おかげさまで、ジャンル別月間三位に入れました!


月間って凄いことだと思うんです

日間は運が良ければ入れることもありますが、月間は継続して支援を頂かないと入れませんから…

モチベが止まらないw


pv百万目指して、もっと人が増えてほしいです

面白い、続きが読みたい、応援してもいいかーと思っていただけましたら、ぜひブクマと評価のご支援よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
カーッ!空気が読めんわねデータさんよぉ!
[良い点] すごく楽しましてもらってます! [気になる点] 質問なんですけど、変異体と仙人って同時になれるんですか?両方の獲得条件が違うみたいだからあるのかなって気になりました。 そしてもし出来たとし…
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