表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/396

21話 殺し合い

用語説明w

シグノイア:惑星ウルにある国

ハカル:シグノイアの北に位置する同国と戦争中の国


MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシンを運用・活用して回復力が向上。ラーズの固有特性となった

ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ

モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる

偵察用ドローン:カメラ付きドローンで、任意の場所にとまらせて偵察カメラとして使い、PITで映像を受信する

俺は、前回の出撃で初めて人を殺した

ナノマシン群が暴走した強化人間だった


だが、あまり良心の呵責はなかった

自我もなく、モンスターに近かったからだろうな



本日も防衛作戦に従事している

今回の敵は、MEB1体と人間1名だ

シグノイアと戦争中である、ハカルの斥候らしい


MEBの利点は、器用さと汎用性

未知のフィールドで戦う時は、戦車やヘリより出来ることが多い

逆に戦車やヘリが得意な運用では、MEBを使うメリットはない


少数部隊でMEB運用での侵入、調査かモンスターの繁殖か…

いずれにせよ国内で好き勝手されるわけにはいかない


すでにMEBを土魔法の土壁で挟み、コクピットに徹甲弾を打ち込んでいる

戦車より装甲が薄い分、パイロットは仕留められているだろう


だが人間を1名を逃してしまい、俺が単独で追った

ホバーブーツを使う俺は、機動力がロゼッタについで高いからだ

ちなみにロゼッタは非番だ


現在は、俺が追い付き林の中で一対一の膠着状態だ

応援が来るまで足止めしないとな


岩や木が多い山の中腹が現在のフィールドだ

俺は、陸戦銃を構えながら敵の位置を探る


恐らくあの岩の後ろにいるのだろう

小型偵察用ドローンを一機、樹上に止めているので見逃しはない



タタン、タタタン


敵が数発撃ってきた

武器はアサルトライフルだろう


弾幕を張らないことから、弾数は少なそうだな


俺も数発撃ち返す


さて、どうするかな…

無理に攻撃しないで仲間の到着を待てば、上手くいけば生け捕りも可能かもしれない



何っ!?


一瞬だけ周囲が円の形に発光…



ズガガッ…バリバリパリパリ…!


「ぐあぁぁぁっ!」



痛みで、口から悲鳴が漏れる

光った瞬間に円の外に飛びたが、左の足首が巻き込まれた!


魔法の発動範囲が広かった

雷属性範囲魔法(中)か…?


アサルトライフルを使ってきてたから気付かなかったが、相手は魔法使いか!?

魔法をわざと使わず、魔法使いってことを隠してやがった



攻撃魔法は、二種類

投射型と範囲型

応用で放射型とか連射型もあるが、基本はこの二つ


投射型がその名の通り、術者から発射される魔法エネルギーだ

弾速は銃弾より遅く、射手の矢よりも飛距離が出ない

だが、同時に複数打てたりする利点もある


グレネード級を十発同時発射とかどうしようもないよね

まあ、よっぽど高レベルの魔法使いじゃないと無理だろうけど


もう一つが範囲型

発動の中心点を指定して発動する

俺のモ魔は、中心点を自分から5~10メートルくらいに設定でき、中心点から半径1メートルくらいの範囲魔法(小)を発動できる


だが、範囲魔法(中)になると、中心点を置ける範囲が広い

二、三十メートルはある

つまり、障害物を越えて中心点を置けるようになる


こっちの銃弾は障害物で止められ、向こうの魔法は障害物を無視して発動する

理不尽だが、現実だ


こっちの居場所を特定されたらやられる



俺はすぐ隣の木立の裏に飛び込み、回復薬をブーツの中に流し込む

後は、足を意識してナノマシンの回復作用で治す


最近、患部を意識すると、その部分を優先的にナノマシンが治してくれることが分かったんだ


向こうから数発撃ち込まれるが、撃ち返さない

俺の位置を探る牽制の射撃だ

位置がばれれば、範囲魔法(中)で一発狙いだろう


俺は、落ち着いて左足のホバーブーツを確認する

表面の絶縁コーティングがこげていたが起動はする

電子部品は無事だ


よし、運はある

後は場所を特定される前にやるしかない

散弾を装填し、倉デバイスからハンドグレネードを出して準備をする



行くか…!

俺は、ハンドグレネードを放り投げる

上手く魔法使いがいる岩の横に転がった



ドガーン!



爆発と共に飛び出す

魔法使いが隠れている岩を中心に、向かって右回りで移動


更に、ハンドグレネードを今度は岩の右側に投げる

ドローンのカメラで、魔法使いの位置を確認



ドガーーン!



爆発と共に、岩に接近する

ドローンのカメラで、魔法使いが岩影から出て来るのが見えた


よし、勝負だ!


俺は、魔法使いが動いた左方向に飛び出す

魔法使いの姿を確認、距離は5メートルほど


アサルトライフルを連射



ダダダダッ…


ボッシュ、ボッシュ、ボッシュ



防御魔法をかけていたらしく、数発の弾が止められる

だが所詮数発だ



ビシュッ ビシュッ



今度は体に二発ほど命中



タタタタタタン



魔法使いが打ち返してくる


俺は木立に隠れて、散弾を打ち返す



バシッ


「がぁっ!」



魔法使いがはじかれるように倒れる


すぐに、ホバーブーツを噴射して一気に距離を詰める

そばに落ちているアサルトライフルを遠くに蹴り飛ばす


魔法使いは意識があるようで、こっちを睨んでいた

右肩から胸にかけて血が滲んできている


「動けば撃つ」

俺は銃を向けながら警告する



しかし、魔法使いは、俺を睨みながら何かを呟いている

「・・あき・・さ・・」



「何を言っている?」


魔法使いは、左手を俺に向ける


そうか、これは呪文だ

攻撃魔法を唱えているんだ


杖を持ってない分、発動も遅く威力も下がる

が、紛れもない戦う意思だ




「…」


タンッ…



それが分かった瞬間、俺は無言で引き金を引いた




・・・・・・



「ラーズよくやったな」

ジードが声をかけてきた


「ジードに言われた偵察ドローンよかったですよ。目がもう一個有るみたいで、おかげで勝てました」


「機動力もあるし、お前は情報班が向いているかもしれないな」


「いや、ラーズは随伴分隊がいい。敵の足止めや攻撃補助と動けるからな」

とサイモン分隊長が口を挟んでくる


「いやいや、私はMEB乗り希望ですって」

そう言って二人を残し、俺はその場を離れる




強かった

初めて殺し合いをした

…殺し合いをして、相手を殺した


今回は本当の意味で、自我を持った人間を殺した

でも、思ったほど何も感じなかった


自分を殺しにくる相手と戦ったからなのか?


そんな自分に恐怖を感じた



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ