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214話 開戦後の日常

用語説明w

シグノイア:惑星ウルにある国

ハカル:シグノイアの北に位置する同国と戦争中の国


ナノマシン集積統合システム2.1:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。身体能力の強化、左腕の銃化も可能となった

サードハンド:手を離した武器を、一つだけ落とさずに自分の体の側に保持するテレキネシス。大型武器の補助動力としても使用


シリントゥ整備長:整備班の整備長。ドワーフのおっさん

サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)


俺は中庭に出て1991を振る

もう日課となってきた


1991の習熟に加え、サードハンドの訓練にもなる

一石二鳥だ


俺は1991の柄を持って、大剣としての素振りを行う

同時に、振り終わった1991の先端をサードハンドで持ち上げる練習


その後、1991の柄から中ほどの芯材を持って突き、払い、石突きの打撃


槍から剣に、剣から槍に


刃体での突き、斬り、石突での打ち


上段からの斬り、足への払い、突き、袈裟斬りへ



連続した動作の練習を行っていく

大きなモンスター相手なら、一番強力な攻撃をどうやって当てるかを考えればいい

だが、人間相手では、大振りを繰り返したって当たるわけがない


だからこそ、セフィ姉のくれたヒント、槍としての使い方を練習しているのだ


1991は、デモトス先生の卒業テストの要だ

俺の最高火力でもあり、1991は破壊目面積に長ける

同じく最高火力のイズミFによる疑似アダマンタイト芯徹甲弾は距離に秀でるが破壊面積が劣る


Bランクを相手にするには、1991の火力が必要になって来るだろう

練習が必要だ




そして、次はナノマシンシステム2.1の練習だ

俺は中庭の端にある簡易射撃場に向かった


「ラーズ、ナノマシンシステムの射撃の練習か?」


ちょうど、シリントゥ整備長がMEBハンガーから出て来た


「はい。そろそろ本格的に実戦で使ってみようと思っているんですよ」


「まだ実戦で使ってなかったのかよ? もう普通に撃ててたじゃねぇか」


「いや、最初の暴発がトラウマになっていて…。いざという時にしか使っていないんですよ」


ナノマシンシステム2.1の練習を始めた初日

いきなり暴発して、破片で自分の眼球が破裂するという大事故が起こってしまった


あれを戦場でやったらとんでもないことになる

だから、なかなか実戦で使う勇気が出ないのだ


一応、グラスリザードの駆除の際には問題なく使えたんだけどな


「だが、実戦で使わないと技能として向上していかないだろう? 変則的な銃で、撃ち方だって特殊なんだからよ」


「そうなんですよね…。シリントゥ整備長、ちょっと射撃を見てもらってもいいですか? 大丈夫だったら、実戦投入へ背中を押してください」


「おお、見せてみろ」


俺は、簡易射撃場にシリントゥ整備長が作ってくれた鉄板の穴に左腕を入れる

この鉄板は、暴発した俺のナノマシンシステム2.1のために防護版として作ってくれたのだ


この防護版の後ろにいれば、万が一暴発してもけがはしないはずだ


「撃ちます!」



俺は、左腕の前腕内で銃の機構を組み立てる

骨に沿わしていた銃身とチャンバー、撃針を組み立てて、肘の下に弾倉を差し込んだ

銃弾がチャンバーに装填される


そして、弾丸の発射だ

手首の上から拳の上に突き出でている銃身

そこから、弾丸が連続で発射される



ドガガガガッ!



「おぉっ! 完全にアサルトライフルじゃないか!」

シリントゥ整備長が驚いてくれた


地味に反復練習を続けたおかげで、課題だった銃の構成速度と連射速度が向上してきた

期末テストでイメージ力が()()()()向上させられたということも大きい


「どうですか?」


「特にジャムったりもないんだろ? 問題ないじゃないか」


「あ、ジャムりに関してはですね…」


ジャムるとは、弾詰まりのことだ

次弾の装填ができなかったり、空薬莢が詰まったりが原因となる


だが、これは俺のナノマシンシステム2.1にとっては特に問題にならない

普通の銃ならば、リロードや詰まりを取り除いたりが必要となる


だが、ナノマシンシステム2.1は()()()()()()

弾詰まりを、左腕のナノマシン群が勝手に取り除いて次が撃てる状態にできるのだ


「ほぅ、なら問題ないじゃないか。わしが保証する、思いっきり実戦で使って来いよ」


「…ありがとうございます!」


シリントゥ整備長が、太鼓判を押してくれた

嬉しい…


正直、そろそろ実戦で使えるんじゃないかとは思っていた

だが、あの事故のトラウマで踏ん切りがつかなかったんだ

シリントゥ整備長のおかげで、次から使う自信がついた


しかし、だからといって陸戦銃がお役御免となるわけではない

陸戦銃は、アサルトライフルと同時にグレネードか散弾を撃てるという利点がある

しばらくは、ナノマシンシステム2.1と同時に使っていこう




・・・・・・




サイモン分隊長に飲みに誘われた


「Cランクの祝いだ。まぁ、飲めよ」


「ありがとうございます!」


サイモン分隊長と乾杯する

ここは居酒屋「四季」だ



グビグビ…

「ついにラーズもCランクか、たいしたもんだな」


ゴクゴク…

「サイモン分隊長や隊の皆さんのおかげですよ。自分自身では、そんなに強くなったって気はしないんですけどね…」


ゴクッ…、プハァッ

「見習いの時は、お前毎回ケガしてたもんなぁ」


ゴクゴクッ

「おばちゃん、中ジョッキ二つお願いします! そうですよね。鎧買うまでは毎回医療カプセルに入っていた気がしますよ」


「実力もつき、彼女もできて順風満帆だな」


「…いや、そうかもしれませんけど、戦争始まっちゃったじゃないですか」


「…そうだなぁ。まだ、生活に影響がないからいいけどな」


開戦後も、居酒屋はやっているし経済は回っている

今のところ、カツシの町だけが封鎖されたという状況だ


「カツシの町の戦闘ってどうなんですかね? やっぱり、ひどい戦場なんでしょうか」


俺は、防衛作戦としての戦場には出ている

しかし、国と国、人と人が行う戦争の現場である戦場には出ていない


「おう、おばちゃん、ありがとう。…かなりひどいらしいな。カツシの町の近くの医療施設を防衛軍で借り上げて、負傷兵の専用病院にしたらしいんだが、すでに病床が一杯らしい。あの周辺の医療機関に関しては一般人が受診できなくなったらしいぜ」


ゴクッ…

「そうですか…。嫌ですね、戦場に出るの。防衛軍だからわがまま言えませんけど」


モンスターの駆除は国民のためと理解できる

だが、戦争に関してはあまり納得がいっていない


ングング…

「ま、カツシの町をハカルに占領されるわけにはいかない。それを防ぐのも俺たちの仕事だからな。気をつけろよ、カツシの町は本当の戦争だ。つまり兵器を使えるってことだ。魔法兵器やミサイル、召喚や迫撃砲…、今まで相手にしてきた自立型のドローンや小型戦車とは火力が違うからな」


ゴクゴク…

「怖いですね。私、軍隊とまともに戦った経験ないんですよ…」


今まで戦ってきたのは、ほとんどがモンスターだ

後は、ハカルのオートマトン部隊や小型戦車、魔導サイボーグやハカルの斥候などか?

つまり、軍隊との戦闘経験がほとんどない


未知とはリスクだ

戦場に出るときは気を付けなければいけない


グビグビー…

「だが、全域の戦闘じゃなくてよかったよな。カツシの町限定の戦争って合意したことで、空爆とかのリスクも無くなったし」


第二次シグノイア・ハカル戦争は、カツシの町の領有権を争う戦争であると目的を明確にしている

これにより、一般国民の犠牲を出さないために、戦場の範囲をカツシの町とその周辺百キロ四方と決められたのだ


実質的には、カツシの町を占領して、相手の戦力を駆逐することができれば勝利宣言を行うことになるだろう

戦場が限定されたことにより空爆などの無差別攻撃を抑止し、テロやゲリラ戦が一般市民を巻き込む可能性を減らせることとなった


だが、被害が及ばないといっても、負ければ敗戦国として不利な停戦条件を飲むことになる、だからお互いに負けられない戦争なのは間違いない


グィー…、プハッ

「なんかCランクになったっていうのに…、戦争かぁ…」


「そういや、お前はまだ卒業テストが残ってるんだって? おばちゃん、ジョッキ二つ!」


「あっ、注文すみません。そうなんですよ、サイモン分隊長の卒業テストってどんな内容だったんですか?」


「俺もカヤノもリロも卒業テストなんかなかったぞ? 三つもテストがあるのはラーズだけだな」


「え!? それって、おかしくないですか」


「期待されてるってことじゃないか? 俺は二つで十分だったけどな。おばちゃんありがとう」


サイモン分隊長は、おばちゃんからジョッキを受け取ると、またビールを喉に流し込んだ


この人、ペースが全然変わらないな!


ゴクゴク…

「いや、私ももう十分ですよ…」


グビグビ…

「そうだ、カヤノに聞いとけって言われたことがあるんだった」


「え、何ですか?」


「…もう、卒業したのか?」


「卒業って何をですか? デモトス先生の訓練ならまだって…」


急に何の話?


グビグビ…

「童貞に決まってるだろ」


ゴフォッ!

「ふぁあっ!?」


「ふぁってなんだよ? …まだみたいだな。俺の勝ちだ」

サイモン分隊長がニヤリと笑った


「ま、ま、まだですけど…! 何ですか勝ちって」


「カヤノと飲みを一回分賭けてたんだ。ラーズの貞操についてな」


…このおっさんとカヤノ(おばさん)は、何でいつも人の恋愛をおもちゃにしてくるんだ!

二人で飲みに行くならお前らも付き合えばいいじゃねぇか!!


…と、心で叫んでやった


戦争に出るまでは、この日常を楽しみたいもんだ




ブクマ、評価、ありがとうございます!

励みになっております


読んで頂き感謝です

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