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205話 魔属性環境の単独調査

用語説明w

絆の腕輪:対象の一部を封印することでテレパス機能を作れるアクセサリー。リィと竜牙兵との思念通話が可能


魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる

霊札:霊力を込めた徐霊用の札


データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。戦闘用端末である外部稼働ユニットのデータ2と並行稼働している

リィ:東洋型ドラゴンの式神。空中浮遊、霊体化、巻物の魔法を発動することが可能


前回は完全に失態だった

イジュンに逃げられてしまった


ガーゴイルの登場、そしてイジュン自身の戦闘力は予想外だった

弾丸を止める防御力に怪力、あの紋章はいったい何だったんだ?



小隊長室に呼ばれると、役所の職員キプロさんが来ていた


「…と、いうわけなんです。明らかにおかしいので調査をお願いしたくて」


キプロさんの話によると、立ち入り制限地区から下って来るモンスターが、最近になって明らかに増えているとのことだ


「前に、キプロさんの要請で森に入った時に、動物や小型モンスターの通った痕跡をかなり発見しました。魔属性環境になった森から逃げて来ていると思っていたんですが…」


魔属性環境になった森は生物にとって適した環境ではない

そこに住むモンスターや動物が下りてくるのは自然なことだ


「ただ、最近になって数が増えるというのは心配ね。魔属性環境になったのはちょっと前だし、今になってということは、()()()()があるはずよ?」

ゼヌ小隊長が言う


…確かに


結局、キプロさんにクエストを出してもらい、調査任務ということで俺が一人で向かうことになった

最近、一人で任される仕事が多くなってきた気がする

俺も認められ始めたということかな?


「キプロさん、ちゃんと調べてきますので安心してくださいね」


「忙しいのにすみません。よろしくお願いします」




・・・・・・




魔属性環境になった森は、地下に強大な魔晶石が埋まっている

この魔晶石の魔力が魔属性に片寄ったことで、森全体が魔属性環境となってしまったのだ

この魔晶石は防衛軍で調査を行っているはずだ


周囲に浄化草が増え始め、魔属性環境の入り口についた


「あれ?」


俺の視線の先には観測拠点がある


ここで魔属性環境を観測し、環境の増減やエリア内に強力な力が働いていないかを観測している

黒竜はいなくなったが、現在も魔属性環境の監視と魔晶石調査の拠点として使われていると思っていた


だが、観測拠点は廃墟のようになっている

おそらく、モンスターやアンデッドに荒らされたのだろう


魔晶石の調査が終わって観測拠点を放棄したのか?

そういえば、魔晶石の調査っていつ終わったんだ?

聞いてなかったな



俺は勾玉からリィを呼び出す


「ヒャンッ!」


リィがくねくねと飛び回る

リィは黒竜のことが好きだったから、この魔属性環境の森のこともよく覚えているようだ


今回は調査だから戦闘は極力避ける

だが、魔属性環境だけあってアンデッドが多い

機動力勝負で離脱を繰り返すことになるので、すぐに収納できるリィしか使わない


「危なかったら上空に逃げろよ?」

俺は火属性範囲魔法(小)の巻物をリィにいくつか持たせる


アンデッドは火葬に弱いからな


「ヒャンッ!」

リィは、緊張感無く揺れながら答える


ちゃんと索敵もしろよな?


後は、逃げるために力学属性引き寄せの魔石を携帯用小型杖に装填して、ひたすら逃げる準備だ




魔属性環境の中は前とあまり変わっていなかった

アンデッドになりかけている霊体、浮遊霊がいたるところにいる


小動物のアンデッドが歩き、そのアンデッドを別のアンデッドが捕食していた

アンデッド同士でも食物連鎖ってあるのか?


そういえば、最初にこの森に来た時に襲われたフランケンシュタイン

あれは他のアンデッドを喰って取り込んだモンスターだった

…あれは強かったな



だが、あの時よりも俺だって強くなっている

一つは、この魔属性の属性装備ヴァヴェルだ


ここに来るまでに何度もアンデッドとすれ違っているのに、一度もアンデッドに襲われていない

その理由が、魔属性装備の認識阻害効果だ

これは生物が死から目を逸らすという本能を利用した効果で、見えているのに認識率が下がる


だが、アンデッドには死から目を逸らすことが無いためこの阻害効果が働かない

代わりに魔属性を感じ取ることで、生物だと認識されないという効果が働いているようなのだ


生物からもアンデッドからも認識されにくいなんて凄い便利だ

おかげで、ここまでサクサク進めたぜ



ザァザァザァ… ザァザァザァ…



小川の音が聞こえてきた

この川沿いを少し歩けば黒竜の入口だ



…だが、何か見えるな


「…データ、あれは?」



黒竜の洞窟の入口付近に、何かが三体立っている



「ご主人! 三体ともフランケンシュタインだよ!」


「やっぱりそうだよな…」



継ぎ接ぎだらけの体、左右非対称で腕の数もバラバラ

あれは、喰ったアンデッドの体をランダムに取り込んでいる特徴だ


「で、あっちのは?」


その奥には、石像がいくつかある

そして、洞窟からはオートマトンが出入りしている


「ゴーレムとガーゴイルだよ!」


…あのガーゴイルは、バックアップ組織の内通者イジュンが操っていたものと似ている



「あの数のゴーレムやアンデッドがあると、人形使いやネクロマンサーがいる可能性があるよ!」


「…もしかして、逃げたイジュンもここにいたりして?」




ゾクリ…



その時突然、背筋に冷たいものが走った


これは、俺の第七感だ

俺の精力(じんりょく)で感じた脅威



ボゥッ!



ホバーブーツのエアジェットで跳ぶ

同時に絆の腕輪でリィに離脱を指示する



ゴォォッ…!


「くうぅっ!」



跳んだ瞬間、黒い波動が俺のいた範囲に展開した

少し波動を受けちまったが、このまま逃げる!



「データ! 敵の姿は捉えたか!?」


「ご主人! リッチだよ! 森の上からの攻撃!」



リッチだと!?

上位のアンデッドで俺の手には余る、このまま逃走だ



「ご主人、今回の調査資料は小隊に送信済みだよ! リッチは追ってきてないけど、三体の霊体に追跡されているよ!」


「分かった!」



…なんだ、さっきの黒い波動か!?


さっきから体に違和感がある

だが体は動く、逃走が最優先だ


「追手はレイスだよ!」


データに後方の警戒を頼み、俺は前方に集中する

データのアバターの映像をチラ見すると、霊視映像に三つの霊体が映っている



レイス


ゴーストの魔属性濃度が増し、高位の存在になったもの

魔法を使う強敵だ



俺は、対霊体用に霊札を取り出しておく



ドンッ! バァン! ゴォォッ!


「うわっ! くっ! な、何だこいつら!?」



まるで、足止めをするかのように広範囲に魔法を放つ

俺自身を狙われないので逆に避け難い!


そして、その魔法の炸裂音によって周囲のアンデッドが集まってくる!

まさか、これも狙いか!?



熊のゾンビ


「うわっ!?」



ゴブリンのゾンビ


「っらぁ!」



骨になった大蛇


「っしょぉ!」



次から次へと来るアンデッドを飛び越え、躱す

木々をぬってホバーブーツで飛ばす

だが、上空を直線距離で飛んでくるレイスの方が早い!


くそっ! 森は障害物が多すぎる!



仕方ない…!


「リィ、迎え撃つぞ!」

絆の腕輪でリィに指示


俺は木の幹を蹴って反転

枝に跳びあがり、迫っていたレイスに突っ込む



「…っ!!」


不意を突かれたレイスが驚くが、もう遅い

正面から霊札を叩きつける



ボシューーーッ!


レイスは白い煙になって消滅した



よし、レイスは霊体だけあって霊札一枚で倒せる

あとはどうやって近づくかだ



「…っ!?」


霊体の気配を精力(じんりょく)で感じ取り振り向くと、レイスが木の幹をすり抜けて来た

木の幹で姿を隠してやがったか!



「オォォオオォオォオォォ…!」


レイスが口を開けて呪言を吐き出す



しまった、今度は俺が隙を付かれた

だが、この距離なら…!



俺は霊札をレイスに突き出す


ボシューーーッ!



レイスが白い煙になった()()()()

だが、目の前が真っ暗だ…!


なんだ、どうなった!?

それだけじゃない、音も聞こえない、他の感覚も無い!



レイスの呪言か?

だが、ダメージは感じられない


それなのに、なんで真っ暗に…



………ッ



…………ンッ



遠くから何かを感じる

音? いや、違う…



……ァンッ



…ヒャンッ



これはリィの声?

違う、声じゃない



ヒャンッ!



リィの意図が伝わってくる


「う・ご・け・!」


そう言っている


動け?


そうか、これは絆の腕輪だ

絆の腕輪を介してリィの思考が届いているんだ



…ピー! ピー! ピー!



遠くでアラームが鳴っている

…やっと、感覚が戻ってくる



「うおぁっ!?」



目の前に骸骨が立っており、こん棒のようなものを振り上げている

俺はこん棒を避け、ナノマシンシステム2.0のパワーで頭骨をぶん殴る


周囲にアンデッドが集まって来ていた


「ご主人! 意識が戻ったんだね!?」

データが安心した声を出した


やっぱり、俺は感覚を失っていたのか!


「どのくらい止まっていた!?」


「約三十秒だよ!」


三十秒!? あぶねぇ! 三回は殺されてもおかしくないぞ

さっきのアラームは、ヴァヴェルの脳みそガード機能のアラームか!



上空ではリィが最後のレイスを喰いちぎっていた


「ご主人! さっきのリッチの黒い波動は魔力耐性を下げる魔属性魔法だよ! だからレイスの呪言の影響が強く出たんだ、気を付けて!」


戦闘と並行してデータが情報を集めてくれるのは本当にありがたい



だが、魔力耐性を下げるだと!

そんなもん、精神属性は一発で行動不能、属性攻撃魔法なら即死ってことか!?

効果がえぐすぎるだろ!


リィが思念を送ってくれたおかげで状態異常からの復帰が早まった

絆の腕輪のは思念を直接送るから、対精神属性効果にもなるんだな



周囲はかなりの数のアンデッドに囲まれている

この輪を突破しないと…


リィッ!


俺がリィに思念を送ると、上空からリィが下りてきてくれた

頼むぞ!


俺は小型杖を()()()()()()()振る

狙い通り、引き寄せの魔法弾がリィに当たった



ビョオォォォォン!



リィが空中で踏ん張ることで、俺の体が空中に引き寄せる力が働く


よし、狙い通りだ

そのまま木を飛び越え大ジャンプし、俺はなんとか魔属性環境の森からの脱出を成功させたのだった



ブクマ150!

人が増えてくれて嬉しい…

ブクマ、評価ありがとうございます


本年は本当にありがとうございました

モチベを頂きまして、年が明けたらもう一話投稿させて頂きます

読んでいただけたら嬉しいです


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